2019/03/17 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にレオーネさんが現れました。
レオーネ >  
豪雨直後のハテグの主戦場───
かつての騒乱、ティルヒアの残党軍らしきものが確認されたことで王国軍第一師団が駆り出されることとなった

第一師団はその圧倒的な物量によって戦場を蹂躙する
魔物や魔族といったものの騒動には一切動かず、対国家、対人間にのみその重い腰をあげる組織である

『霧が出ています、こちらから打って出ますか?』

「………」

眉を潜め、寡黙に戦場を眺めるのは第一師団の師団長であるレオーネヴァルト
病死した前師団長の後を継ぎ、破竹の勢いで数多の戦場を勝利に導いた名将である───
……と、思われている

「(豪雨の後で霧が濃い…敵が出てくるなら、この機に乗じるはず…ましてや残党軍、その数も多くはない…はず)」

正面から打ち合えばまず向こうに勝ちの目はない
それでも尚逃げを打たない、ということは…玉砕覚悟、追い詰められた鼠のようなものだろう
一矢報いて、散り際を飾ろうというのだろう
そういった者達は、死を恐れないものは、強い

「全軍、動くな。きしゅ」
『敵影確認、およそ数十!!』

その斧槍を振りかざし「動くな。奇襲に気をつけろ」と言おうとした瞬間
霧の向こうから怒号と共に敵の影が現れる
多くても100に満たない…30くらいといった数だ
一点突破するためだろう、密集した陣形をとっている。やはり…玉砕覚悟らしい
それより完全にセリフが被さってしまって、ただ無意味に斧槍を振り翳しただけになってしまってバツが悪い

ずっと掲げているのも辛いので、すっと斧槍を下ろす
傍から見れば、こちらの軍への合図にも見えるものの、「動くな」という号令だけが伝わっている

刹那、突然の稲光と共に雷光が走り、剣や槍を掲げこちらへ迫っていた残党軍へと直撃した
爆撃のような音と共に散り散りに吹き飛ばされた残党軍は…悲しいかな、みな息をしていないようだった

レオーネ >  
『な、なんという一撃…これが軍神の力』
『突撃していれば我々も巻き込まれていたところであった』

「………」

完全に偶然なのだが、どうやら振り下ろしたタイミングとかそういった問題で、そういう技に見えたらしい
でもこのまま展開しているとまた雷が落ちるかもしれない、できれば早くこの場から離れたいところだった

「…全軍、王都へ帰還する」

何か色々格好良いことを言いたかったが特に浮かばなかったので簡潔に号令を出す
緊張とプレッシャーから目つきも悪くなっていたため、伝令兵はこけつまろびつ、走り去っていった

『やはり将軍は恐ろしいお方だ…』
『残党どもとはいえ、一網打尽に討ち取ったというのに、何の感情すらも見せられない』
『虫けらを潰した程度にしか感じておられないのだろう』

ひそひそと誤解を招いた会話が聞こえてくる

「(違うんだけどなー……)」

違うと言っても何が?とか言われるとそれはそれで困るので、何も言わずに踵を返し本陣へと引き返す
…その様子がまた冷徹なように見えているとは知らず

ご案内:「ハテグの主戦場」にディンさんが現れました。
レオーネ >  
『しかし残党程度にこれだけの兵力を動かすとは、流石ですな』
『獅子は兎を狩るのにも全力を、ということであろう』

引き続き周囲から聞こえてくる言葉
違う、違う、そうじゃない
今度こそ自分の力で功績をあげたかった

こうやってもう何度戦場で偶然の勝利を得てきたことか
第一師団に入団してからというもの、鍛錬と勉強に明け暮れた
誰にも負けないように、軍師としても一流になれるように
けれど、その努力の結果は一度も発揮されることなく、勝利してしまう
師団長になってからもそれは同じ、栄光ある第一師団の長なのだ
余計に訓練や、座学に力を入れた
今度こそ絶対に、自らの力と知恵で勝利を掴んでみせると息巻いて…

斬り合えば相手の剣がなぜか折れ、足を挫き、突然の腹痛に襲われ、心臓麻痺を起こして死ぬ
指揮をすれば間違えて伝わり、それがなぜかぴたりとハマり、不戦のままに相手陣営が壊滅する
海戦に赴けば大嵐が吹き荒れ敵軍は木っ端微塵に消し飛んでいった

気がつけば軍神呼ばわりである

「(おかしい…どうしてこうなった……)」

そうして眉間に皺を寄せて悩む表情がまた、誤解を招く

ディン > そんな雨上がりの戦場から、遠く離れた枯れ木の群れで、一部始終を見ていた白の影がひとつ。

「ふゥん……おもしろい…」

雨よけのフードと、戦場を見聞する拠点にしていた簡易的なテントを払って、白いマントを翻して人物は戦闘を終えた一団を追って、その場を後にする。



王国軍第一師団が王都へ帰還する道の途中途中には、
兵站や武装を整えたり、小休止に利用する駐屯地が点在している。
今日もまた、凄惨な戦場を潜り抜けてきたとは思えぬ、
堂々たる帰還を果たした美しき軍神の一団を労って、
駐屯地の兵や、兵站を整える行商らがあれこれと声を掛ける。

己の才と、努力と、現実の結果に、凡人とは離れた意味で眉を寄せる師団の長に、
ひとつ、耳慣れる声が入り込んできた

「やあやあ、栄えある第一師団の皆様。
私、このたび幸運にも野営の先で皆様のご活躍を拝見し、
描き納めることがかないまして!
何卒記念に、受け取ってもらいませんかなー?」

まるで道化のような立ち振舞と掛け声で、
細やかな筆致と色使いの、戦場絵を営業する、旅の絵描きと思われる白い服の者。

ひらり、と手にする絵が軍神の目にちらちら映る。

そこには数枚…戦の顛末を描いた風刺画が描かれていて、
先のレオーネが繰り広げた、号令から全軍静止、そこに偶然の雷、敵の全滅…という様子が、面白おかしく1枚毎に戯画化されていた。

師団の何人かは、その絵が何を意味するのかは全く分っておらず
「そなた、我らの戦を莫迦にしておるのか!」
と、追い払おうとする騎馬兵に追い回されながら、
絵師の絵の中で、味方の戦勝の中、歯を食いしばるような女神の横顔の絵が、レオーネの視界にはちらちらと映り込む。

レオーネ >  
「……?」

行商に声をかけられること自体は珍しくはない
貴族出の騎士の身の落としどころとしても第一師団は有名である
少しでも貴族とのパイプが欲しい商人などはこぞって声をかけてくる

しかし今日のそれは一味違っていて…

「…画商…?ううん、絵描き…?
 すごいな、まだ先の戦闘からそう時間が経っているわけでもないのに。
 こんなに沢山の光景を絵に収めることができるなんて……」

何より、自分の悔しかった感情すらも、しっかりとそこには収められていた
戯画といった描き方に憤る者もいたが、師団長が興味を示すと驚いたようにそれを止める

「絵画も君の腕も立派なものだけど、余り戦場近くにはこないほうがいい。
 罠も…沢山仕掛けられているし、流れ弾だって飛んでくるかもしれない。戦場の拡大だって、起こり得るからね」

淡々とした口調で、諭すようにそう言葉を続けて

「…おいくらかな、私が買おう」

ディン > 絵描きに対して師団長の意識がそちらに向き、声をかければ、
流石に追い回す団員も手足を止めるしかなく…

すらすらと騎兵隊の合間をぬうように軽やかな足取りで歩み寄り、
にこりと、これまた芝居がかった愛想笑いを浮かべて、周囲の兵にへらへらと笑いながら如才なく挨拶して

「いや、ご心配いただき恐縮… ですがまぁ狩人が獲物のために危険な狩りに出るように、
描きたいもののためならば危険な場に描きに出てしまう性分でして…
それに、破竹の勢いの第一師団のご活躍ならば、そうそうこれ以上の戦火の拡大も、ありますまーい?」

と、周囲でいぶかしがる兵士へのとどめのように、士気高揚とさせるゴマすりの一言。

…しかし、諭すような口調の師団長に、興味を引いてもらった絵を渡す際に、その表情も声色も、しっとりと突然落ち着いて。

「…お代は結構。
ただ、師団長様のお姿を、もう何点か描きたくてですね。
特に、なんというか、こう…もう少し自然体の。」

と、一枚は絵画めいた、軍神たる勇ましさに満ち満ちたレオーネの肖像。
もう一枚は、「どうしてこうなった」とばかりに腕を組み、眉を寄せるレオーネと、背後で息巻く師団を面白おかしく風刺した味わい深い一枚で、
先のおべっかがなければ、側近の兵に袋叩きにあってるかもしれない一枚。

「その勇ましさに、チラと見えるお顔に、興味がありまして…
途中までご同行しても?」

と、意味深な発言。

レオーネ >  
「お金がいらない…?…変わった絵描きさんね」

危険を顧みない…というのは自分の仕事にプライドを持っている証拠だ
そこまで打ち込み、自分自身の力で結果を出す…羨ましくさえも思えた

同行の許可を求められれば、少々困ったような表情を浮かべる
それに、自然体とはどういうことだろう
絵に描かれたように自身の表情から、何かを感じ取っていたのかもしれない
結果だけを見て、誰も気づかない自分の葛藤…‥

「…私は構わないけど……」

周りの人間は当然、怪しい者として反対する構えだった

「何か怪しいことをしたら、君自身に危険が及ぶかもしれない、それでも構わないというなら」

ディン > 「ふふ、もちろん依頼があればお代はいただきますけど、
今回のコレは…むしろ私の業、なので。」

と、師団長本人に許可を得たこちに対して、
宮廷仕込みの、片足を下げ、片足を胸元に添える大げさな礼で応える。

「申し遅れました、私、画家のディン・エンフィールドと申します。
このたびは、戦場画家・風刺画家・記録係としての、
帰路までのご同行…ということで、いかがでしょうか?」

名乗りを上げた画家の名を知るものが、もし師団の中に居れば、
多少は怪しさも解けるのだろうか。

知る人ぞ知る…よりは一歩二歩先んじた画名に、さしたる期待もせず。

「ハイ、そこは自己責任…としつつ、
ワタシなんぞが原因で貴女の顔を曇らせぬよう、努力しますよー私。」

シャカシャカとスケッチブックに筆を走らせながらそう告げて。
そこには、これからどんな表情をするか未だわからない、レオーネの肖像。

レオーネ >  
「ディン…エンフィールド…?
 君は…あのディン・エンフィールド、なの?」

レオーネも大きな貴族の出
15の歳を迎えるまでは富裕層の区域にある屋敷で不自由のない暮らしをしていた
まだ少女だった当時、父親の口からその名を関する美術品の話を聞いたことがあった

騎士となり、第一師団へと入団したあたりから、不思議とまったくその名を聞くことがなかったが…
ちょうど多感な時期の記憶、その名は覚えていた

「名乗り返すまでもないかもしれないけど…王国軍第一師団長のレオーネヴァルトよ。
 ……絵描きって、みんな君みたいに無鉄砲なのかしら」

危険を顧みず同行を快諾する様子に、物珍しげな視線を向けていた

ディン > 「はぁい、恐らくはその、ディン・エンフィールドかと。
…かの、レオーネヴァルト様に覚えていただいてて、大変光栄です。」

と、恐らくは宮廷画家としての頃の名に見せた反応に対し、
これまで道化めいていた絵描きのへらへらした表情に、
笑顔のままほんの僅かにだけ複雑な色が見える。

騎兵の師団に早歩きで同行しながら、
これまでまくしたてていた、絵描きの言葉が、
数秒でも途切れたのはこれがはじめてだった。

次に口を開いたときは、道化めいた言葉よりは、
少し、照れくさそうな色を声に乗せて

「絵描きが皆が皆、無鉄砲なわけじゃないでしょうけど…
なんというかまぁ、やんごとなき宮廷や富裕層だけで絵を描いてると、
名前だけが独り歩きしちゃいましてね。

どんなに精魂込めようが、ただのラクガキだろうが、
まぁ持て囃したり、批評したり、高値で売り買いされるようになっちゃいまして…

これでいいのかと、少し無鉄砲な道を選んでみた、というわけです。」

物珍しげな相手の方を向き直って、
先だってより敬語も僅かに砕けている辺り、
まさに、今の自分にはそこそこ満足していると示すよう。

レオーネ >  
「やっぱりか、すごいな…それこそ少年の時分だろうに」

その時点でもう生活には困らない手を持っていた…と考えると感嘆してしまう
しかし、その絵描きの語る言葉はどこか強い共感をレオーネへと与えてゆく

「わかるよ。与えられる側が見るのは結果だけ…
 君は結果よりも自分自身の歩み方に価値を見出したのね」

評価など気にせずに、自由に筆を走らせること
やはりというかなんというか、余計にその生が疎ましく感じてしまう

「そのまま続けていたら余計なシガラミに捕らわれていたかもしれない、英断だよ」

ディン > 「あはは…でも、人の運や金の運、時の運あっての当時だったと思ってます。
…ワタシ自身が本当に頑張って掴めたモノなんて、どれほどあったことやら。」

ぽりぽりと気恥ずかしそうに頬を掻きながら、言葉を続けて。

「ただまぁ、シガラミのない自由ってやつもなかなか広大すぎて、
途方に暮れる厄介さがありましてー……。
このところ何を描こうか悩んでばかりの日々だったところ…

…こう、なんといいますか、
今はチョット大変ながんばり屋さんが、
それでも自分の歩みを信じぬいて努力して、努力して
最後には自分の手で、見合ったものを得る。

―――そんなモチーフを、探していたところなのですよ。」

レオーネ >  
「ううん、頑張ったからこそ運気が向いてくるんだ。
 それは君が自らの手で掴んだものに違いないよ」

そう言葉を向けるレオーネの顔はどこか寂しげ
普通の人はそうなのだ、薄々気づいている、自分は普通ではないのだと

「…なかなかに大変そうなモチーフだね。
 今のこの王国にそんな人間がどれほどいるかな…」

言いながら、少し遠くを眺める

「しかしそれならば戦場というのも理解できるね。
 平民から頑張って王国軍に入り、勲功を挙げようという若者は大勢いるから」

ディン > 「ありがとうございます…そう言ってもらえると、
あの頃にやってきたこともムダじゃなかったと思えます」

と、目を伏せつつも細めて笑う。
同時に、その視線はどこか寂しげな師団長の表情に写って…

何を見抜いたわけでも、察したわけでもない画家が、
何故居合わせた戦場でこの師団の絵を描いたのか…
その中で、神々しく獲物を振るう勇姿より、憂いを感じる貌に目が行くのか…

その正体に行き着く術は無いけれど。

「ええ…だからきっと、今日見かけたこの師団のみなさんと……
アナタに、興味がわいたんでしょうね、私。」


と、遠くを眺める様子のレオーネに、
貴女もその対象だ、と告げて。

レオーネ >  
「…第一師団はともかく、私に?」

人に興味を向けられることは珍しくない
常勝不敗の将軍
一度その斧槍を振るえば霹靂の如く
ついた二つ名が、蒼雷の軍神

全ては偶然の積み重ね
それを嘘にしないよう、偶然で終わらせないように
その名に見合う力と知恵をつけようと日々を過ごして…
今日もまた、その成果を出す前にすべてが終わってしまったが

「…師団には向上心のある若い騎士も多いけれど…私、というのは…モチーフにはならない気もする」

ディン > 絵描きは、師団長の傍らで歩きながら先程差し上げた絵や、
新たに歩きながら描き上げていたスケッチを見せながら、

時折、その絵と現物の師団長を見比べるようにして

「―――ええ、レオーネさま。
だって貴女にだって、向上心があるでしょう?
…もし満足しちゃっていたり、絶望しきっちゃっていたら、
このようなお顔には、なかなか。」

と、別段おだてるような調子や鼓舞する声色でもなく…
ただ、見て感じた事として、口にする。

「絵描きの経験上ですが…

このお顔は試練を受け続けて、悩んで、苦しんで…
いつか、望む場所や望むものへ、届こうとするヒトのそれです。」

周囲の兵達の、ちんぷんかんぷんな様子を尻目に、
にっと笑って。

「まぁ…安直に「いつか必ず、最後にはそこに届く者の顔ですー」
とも、言えませんけどっ。

…ただ、そう願ってはいますよ、レオーネ様。」

と、ここまで一度も、「蒼雷の軍神」の雷鳴を呼ばなかった画家。

レオーネ >  
「……そうか。その言葉は…うん、励みになるね…」

表情一つから色々な言葉を紡ぐ絵描き
その言葉には触れるものがあったのだろう、小さな笑みを口元へと浮かべてそう返していた

普段よりも口数の多い師団長と、めったに見せないその笑みに周囲が驚きを見せる中、足は進んでゆく

「神は乗り越えられない試練を人に与えはしない、というけれど、
 世の中にはその試練が逃げていってしまう人間だっているかもしれない。
 最後の結果は、その人間がどう生きたか…で決まるといいな」

自分に言い聞かせたのか、それとも絵かきに向けた言葉だったのか
蒼い眼差しはほんの少しだけ、緊張から解かれたような優しい光を讃えていた

ディン > 周囲のざわめきも意に介さず、
僅かな笑みと、微かに肩の強張りの抜けた女性に向けて、
絵描きはコクリと深く頷く


「ええ、試練から逃げられていくような生き方は……
きっと、一筋縄ではいかないでしょうけど、
見方を変えれば、歯応えのある生き方かもしれませんよ。」
と、言葉を添えながら、師団長の今の笑みを写し取ろうと、鉛筆を手にした…
と思いきや、スケッチの紙が切れていることに気づく。

「え…えぇ? ちょっと、嘘でしょう?」

再び、道化めいた姿を晒しつつ、画家は頭を掻きながら王都までの道をともにする。

これはただの偶然か…或いは何か、超常的な運の類いか。

いまはまだ彼女にその笑みの絵を捧げてしまうべきではないということか、

或いは、絵描きの小さな満足を犠牲に捧げられた、
戦のあとの一笑そのものが、乙女への天からの贈り物か。

ご案内:「ハテグの主戦場」からレオーネさんが去りました。
ご案内:「ハテグの主戦場」からディンさんが去りました。