2019/03/07 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場 帝国軍陣営」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > 暗い雲から静かに雨が落とされる。
風も吹かないその日は気温もやや高めで、草木に取っては春の訪れを感じられるであろう、午後。
鬨の声で満ち満ちている戦場ではその草木は踏みにじられ、跳ね上げ、また泥や血で汚して―――最早蠢いているのはヒトなのか荒れ狂う大地の一部なのか解らないほど。
雨は彼らを清める程強くはなく、ただしとしとと降り注ぐ。
両軍とも朝からやり合って、ぬかるみに足を取られる兵士たちの動きは鈍くなってきている。どちらも撤退を望む声が囁かれ、最早その刻のタイミングを推し量っているような状態。
帝国軍の陣地では、それに纏わる伝令が各部隊長の間を行ったり来たり、また交代の兵が更に行き交って押し殺したような喧噪が広がる――そんな中、陣営の端、森に近いところで、少し天を仰ぐようにして動かない灰色のマント姿がひとつ。
■ジナイア > フードの奥で翠の双眸が細められ、熟れた唇から密かな吐息が漏れた。
(……掛けたんだけどな…)
期限までに、雨が降ったら、決行。そうでなければ、手は出さない。
もしや、今に雨が上がるかもしれない、とも考えながら、ほぼ中央に設えてある自分のテントからここまで来たが――雨は強くなるでもなく、弱くなるでもなく降り続いて、只ひたすらにすべてを等しく湿らせていく。
「……仕方ない」
どちらであれば良し、という訳でもない――自分にとっては。
もうひとつ吐息を吐くと、女は視線を足元、濡れそぼっている草地へと落とした。
■ジナイア > アーモンド形の眼の、瞼をゆっくりと落とす。心中で足元を濡らす水と――それが地中へと通じているのを感じ取れるまで、ゆっくりと呼吸をする。
――――行ってこい
『脈』を見付けると、命令を下す。指にはめた指輪のひとつから一瞬の熱と、次いでひやりとした、空っぽの金属の感触。
地脈を探って、土の魔神に行かせても良かったのかもしれないが…
―――探せ
水の魔神が、地中の『水脈』を辿り、人の集まる場所――今まさに、戦闘中の兵士たち――の間を抜けていく。
―――それが解る。
■ジナイア > 「………見つけた…」
しばらくして、女が瞼を上げる。爪先に視線の方向は落としたまま――それでもに何か別のものを覗き込むように、その翠色瞳の奥に一瞬、強い光が宿る。
■ジナイア > ―――ーその『先』では、男がひとり――利き腕に違和感を感じだだろう。腕の根元、肩口に。
そうして――武器を取り落すはずだ。
―――今日一日くらいは、持つかもしれないな………
視線は上げられず、心中でそう、零して。
■ジナイア > 異変に気付いて、早く医者に診せれば間に合うはずだ。放って置けば、腐り落ちる――――どちらにしろ、この戦場から『彼』は取り除かれる………
――やがて、周囲の喧噪の温度が変わる。
撤退、の言葉があちらこちらから聞こえるようになって―――翠の眼で見つめていた女の『世界』と喧噪に満ちた世界が重なる。
「……さて」
兵士が行き交う陣営内を、ゆっくりと視線を巡らせると、少し、目を細めて…止む気配のない雨の中、戦線の方へと歩みを進めていく――――
ご案内:「ハテグの主戦場 帝国軍陣営」からジナイアさんが去りました。