2018/12/18 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > ――全く。

どうして出場の際にはケチが付く。
必要な時に必要と目される分を投入する。それは軍事であれ投資であれ変わるまい。
簡単な数字の計算もできないほど愚かなのか。それとも、負けたなら負けたでケチをつけて取り潰しでもしたいのか。

今回は隣国より攻めてくる敵勢の排除、または殲滅。いつものことだ。
即時動ける兵力を動かす。間違いではない。自分達はそのためにこそいる。
が、出撃ずる竜の数を減らして掛かれ、と。不可解を通り越して理解不能な注文に思わず使者を斬ろうとした。内心でそうしようとした。

「……ああ、もう。この戦場のどこかには居るんでしょ? お目付け役。
 ねぇ、誰か構わないから纏めて消し炭して頂戴な。私が責任取ってあげるから」

ここは月が照らす夜のハデクの丘。幾つか散見する丘陵地帯の一つに本陣を設け、そこから前線に進出しては陣頭指揮を執る。
出撃している竜騎士は二騎。己の竜は止むを得ず、騎乗せずに上空に飛ばして眼下の戦域の監視と偵察に当たらせる。
解放した通信魔法で幾つかの言葉が飛び交うのを意識下で認識する。
自分が不満たらたらの様子で零した言葉に、宥める言葉もあれば大笑いする姿が響くのもまた然り。

不幸中の幸いなのは、どうやら自分達が出場すると決めてかかったのか弓兵主体の編成が敵陣にあるということだ。
一見、これは不利であるかもしれない。しかし、空を飛ぶものが来ると分かっていれば予めそれに備えて準備するのまた、兵法であろう。

アマーリエ > 「地竜とその乗り手を二騎。そして補佐の歩兵、騎兵、術士団――どうにか、巡回のシフトが噛み合って良かったわ」

馬には乗らず、徒歩で遠く前方を見遣る。其処で二つの聞きなれた咆哮が響く。
知性あるものであれば、恐慌をもたらすであろう恐ろしくも頼もしいそれは深緑の鱗を纏った二体の竜が放つものである。
俗に地竜と呼ばれる類の竜のひとつだ。空を行くこともできるが、大地の精霊の力を強く帯びた個体だ。
肉体自体の頑健さもあるが、何よりも白眉と出来るのは土中を潜航して任意のところで急襲をかけることができる点である。

敵陣の一角が不意に生じる地割れや陥没に叫びをあげ、戸惑う。
土中から飛び出る竜が爪を振るい、牙で食い散らしながら乗り手と共に陣を食い破る。
急襲場所については魔法による通信を密にしながら、戦域の地図を元に割り振った座標の符牒で指示を送る。
事が済めば直ぐに地中に潜り、乗り手の呼吸が続く限りを刻限として次の襲撃箇所に移動する。
人間の心理として、何処かに強く注意を引かれれば其処に隙が生じる。その隙を、見逃さない。

「重騎兵隊――前に。私も続くわ。

 出場している竜騎士は次の急襲の後、そのまま地上での戦闘に入って戦線維持に加わりなさい。
 あ、それと重ねて言うけど。お目付け役が居たら巻き添えにして良いわよ。……居た奴が悪いのよ」

今回限りの足として準備した軍馬に跨り、指示を出す。
念押す用に出した指示は勿論冗談だが、本気でもある。この程度の言葉の遣り取りが出来る分はまだ、この戦域は自身らで制御が出来る。
盤面すべてを支配するような才気があるとは自惚れないが、想定外のものがないかぎりはどうにか出来よう。