2018/04/16 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にヴェルムさんが現れました。
ヴェルム > 長きに渡る小競り合いの続く戦場。
そこの最前線に第十三師団の駐屯地があった。
いつ砲撃どころか弓矢が飛んで来てもおかしくない位置、使い潰し部隊に相応しい配置であるが、そんな上の思惑は外れ、とっくに最前線はシェンヤン側に移動していた。

「ええと、次は…あっちで!」

師団長のヴェルムが望遠鏡を覗いて部下達に指示を出していく。
駐屯地のやや後方にある砲撃部隊に、攻撃位置をとてもざっくばらんに指示しているが、どうにもうまく連携が取れているらしく、彼の狙い通りの位置に砲撃が着弾しているようだ。
元々十三師団に砲台などなかったが、敵や味方が放置したものを回収・修理し、技師たちが手を加えることで戦力を整えていた。

「お~、逃げてる逃げてる」

望遠鏡を覗くヴェルムは、シェンヤン帝国の部隊が砲撃に慄き、必死に後退している様子が見て取れている。
だが十三師団が放つ砲撃はあまり敵に命中していないどころか、敵部隊にあえて逃げ道を与えているかのような場所に着弾していた。
そしてそれを眺めるヴェルムも満足そうに笑っている。

ヴェルム > ヴェルムがあえて敵に逃げ道を作る戦法は、常日頃行っている。
できるだけ戦死者を少なく…などという偽善ではない、十三師団が無駄に戦果を上げて目立たないようにするためのもの。
敵にすれば舐められていると思われてもおかしくないやり方であるが、それならそれでまた挑んでくればいいということである。

「…いつまで続けるのかな」

敵部隊が砲撃の射程外へ出たのを確認すれば、砲撃を中断させる。
戦場が暫しの静寂に包まれると、なんとなく呟いた一言。
帝国の動きはどうにも時間稼ぎのようにも思えてくる、まるで何か探しものをしていて、それが確認できるまでは動くことができない…。
あるいはこの戦いこそ本来の目的を隠すための陽動…。
思惑が無ければこんな無益な戦いを続けるわけがない。

「少し突っ込みが必要かな、あるいは揺さぶり?
そうすりゃまたアレが出てきてくれるかな」

そう、こちらにも目的がある。
もう一度あの存在を確かめなければならない。
皇帝もアレの影響を受けているのであれば願ってもいないチャンス。
だが空振りに終わるかもしれない、帝国からはどうにもティルヒアのような狂った感じがしない。
遥か彼方にうっすらと見える帝国領を眺めながら思案する。
師団は十分な力を付けた、これからは少し自由に動いてみることにしようか。

ヴェルム > 「よし…後退だ、拠点に戻る」

踵を返すと部下達に新たな指示を出す。
戦場からの後退、それは上からの命令と異なる指示。
まだ戦場にいなければならないはず、部下たちにもさすがに動揺が走りすぐに動ける者はいない。

「どうせ上はこちらの動きなど一々気にしちゃいない」

確かに騎士団は十三師団に命令を与えてくるだけで、その過程や結果に一度でも興味を示した試しが無い。
敵部隊は後退させた、これ以上戦場でできることはないし、進軍はもっと好戦的な部隊に任せていればいい。
部下達は間を空けて撤収作業に取り掛かり始め、テントを片付け砲台は分解して荷馬車に放り込む。
撤収作業がてきぱきしているのも戦場で長生きするためのコツでもある。
最後に殿が松明の全てを消しての完全撤退。
この闇夜においてその素早さは敵はおろか味方すら気づきもしなかっただろう。
翌日の戦闘において最前線が王国側に傾くことになったのは言うまでもなかったが。

ご案内:「ハテグの主戦場」からヴェルムさんが去りました。