2017/07/18 のログ
ハン > 扉が霊を昇天させている間に、道士は戦場を歩き回る。手には竹の水筒が握られていた。
そして伏している死体の顔を一体ずつ覗き込んだ。

「よし……これもよしじゃ」

大体は一瞥で終わるのだが、三十体に一度程度、道士は足を止める。

「凶相じゃ」

凶相と呼ばれた死体には、水筒の中身を一滴ふりかける。
すると死体の口から黒い煙があがる。

「これでよし」

生者に善悪があるように死体にも善悪がある。
悪の死体は恨みを自ら吸収し、ゾンビや吸血鬼となって蘇るのだ。
そういった死体は火葬してしまうのが良いのだが、大戦場ともなると悪の死体が多すぎてとても手が回らない。
なので聖水で浄化をするのだが、材料が心もとなくなっていた。
その材料とは変声期前の少年か、女性の尿である。
出されたばかりの尿を集めて錬成すれば、悪い死体の復活を防ぐ妙薬へと変わるのだ。

「が、儂は嵐の夜に声を枯らしてしまったのでのう」

独り言を呟きながら、道士は戦場を歩く。

ハン > 「なんとか持ったわい」

竹筒を振った道士は満足げに頷いた。
これで死者が暴れだすことはあるまい。

一文の得にもならないが、徳を積むことはできる。
徳を積むことで道士はより強い力と長い寿命を得ることができるのだ。
全てを終えた道士は、戦場を後にした。

ご案内:「ハテグの主戦場」からハンさんが去りました。