2017/07/01 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場 会戦」にオーギュストさんが現れました。
■オーギュスト > 周辺諸国の一部が連合、王国へ向け進軍開始。
その報に王宮は凍りついた。
先頃帝国軍との戦いの為、大規模な部隊を派遣したばかり。
連合軍との戦いの指揮を執る将軍が居ない――
そこで、目をつけられたのがオーギュストだった。
彼の第七師団を増援として派遣し、なんとか主力が戻るまでの時間を稼ぐ。これが王宮の官僚たちが考え出したプランである。
問題は、人間相手の戦いにはオーギュストが乗り気でなく、出兵を拒否する可能性が高いという事だった。
だが、オーギュストは条件付きでその出兵を飲んだ。
条件は以下の通り
1、周辺に展開する王国軍2個師団と彼の子飼いの第七師団、併せて3個師団の指揮権を寄越す事
2、兵糧を充分に用意する事
3、戦場ではたとえ貴族・王族であろうと一切彼の指揮に対する抗命を認めない事。
官僚たちはこれをすぐさま了承。
宰相府からの印を捺した任官状と指揮杖をオーギュストに渡した。
■オーギュスト > ハデグに着任したオーギュストはすぐさま諸将を招集。
敵の到着直前というのに、軍議を開く。
「敵を分断し、各個撃破する」
そしてオーギュストは居並ぶ諸将の前で宣言する。
諸将は驚き顔を見合わせた。
そもそも、敵連合軍は約5個師団。こちらの二倍にも近い大軍。
オーギュストと第七師団は、時間稼ぎの為の増援ではなかったのか。
「どうやって……」
「敵は指揮系統が統一されていない連合、烏合の衆だ。
これを利用し、敵の連携を阻害し分断する」
オーギュストが地図を広げると、参謀たちがその上に駒を並べていく。
そこにはまるで見てきたかのように、敵軍の布陣が並べられた。
「竜騎兵どもに感謝しなくちゃぁな」
■オーギュスト > 現在、空を飛ぶ竜騎兵を落とす手段は少ない。
ましてや、単騎の斥候として使った場合、発見するのすら困難である。
「さて、今日の夕刻には敵はここ――ナール川のほとり、ラウデンの街へ入る。夜にはこの丘に陣取るつもりだ」
そして明日の朝にはハデグ、その後は王都まで進軍するつもりだろう。
「俺達は夕刻、敵がラウデンへ入ったと同時に攻撃を開始する。
この街はナールの支流二本が街の中を流れて、大軍の機動が阻害される。ここ以上の場所は無い」
オーギュストは作戦の骨子を説明する。
ラウデンの街へ入った時、敵の主力は3個師団。
残りの2個師団は別方面におり、連携の鈍い連合軍ゆえ、増援は翌日まで無いと見ていい。
主力3個師団をラウデンで包囲、殲滅し、王国侵攻の意図を挫く。
■オーギュスト > 「しかし、包囲すると言っても敵の動きは……」
「竜騎士が交代で敵主力の動きを報告してきてる。
俺達第七師団が街へ突っ込んだあと、お前達は川沿いに布陣して逃げてくる敵を虱潰しにしろ」
既にオーギュストは勝ったような物言いである。
作戦としてはシンプルであり、急造の編成軍でも遂行は可能だろう。
だが、3個師団でもなお敵はこちらの1.5倍であり、勝機は薄いように見える。
しかし、オーギュストは抗命を許さない。
その為に官僚どもから任命状を分捕ってきたのだ。
■オーギュスト > これらは全て、「あの世界」で手に入れた本の原則を元にした作戦だ。
目的の明確化、攻勢の主導権奪取、物量の一斉投入、戦力節約の達成、機動戦、指揮系統の統一、警戒厳重、奇襲、簡明な作戦。
それら九の原則が、このマグ・メールでも通用するか。
――決まっている。あの世界の軍事常識なら、千年遅れたこの世界でも通用する。
そして、自分がその体現者となる。
「出陣だ!」
■オーギュスト > 夕刻、オーギュストの軍はラウデンの街へと到着。
連合軍主力は街の左右に展開し、小高い丘を目指していた――
「――砲兵隊、準備はいいか!?」
オーギュストはその丘を先に占拠。
改良を重ねた野戦魔導砲をずらりと並べる。
なんでもあの世界では、こうして突撃前に大砲を並べ、そして「準備砲撃」なるものをするらしい。
たとえ命中しなくても、相手の布陣が乱れ士気が下がれば、突撃の成功率は格段に上がる。
「放てぇ!!!」
■オーギュスト > 砲撃と同時刻、指揮下に入った二個師団は街の対岸に展開、左右から街を挟撃する布陣を敷く。
そして、準備砲撃が終わった時。
丘の上で、オーギュストが咆哮した。
「かかれぇぇ!!!」
怒号と土煙。
夕日を背にした第七師団は、死神の群れとなって街の中へと突撃する。
先程の砲撃を逃れようと街中に散開していた連合軍主力は、再集結する暇もなく、その突撃を受け止める事になった。
■オーギュスト > 勝敗は明らかだった。
不意を疲れた連合軍主力は、態勢を立て直そうと必死に街の出口へと後退する。
しかし、対岸にはオーギュスト指揮下の2個師団。街の中には第七師団。
出口は自分達がやってきた、街の入り口の細い橋ひとつ。
そして――
「火だ、火だぁぁ!!」
連合軍の将の一人が、第七師団の追撃を振り切ろうと、街の入り口の橋へ火をかける。これが致命傷となった。
退路が火に包まれ、パニックになった連合軍兵士は逃げ惑い、次々と第七師団の兵に首を取られていく。
「捕虜はいらん、全て殺せ! 指揮官の首を忘れんなよ!」
最前線で大剣を振るいながらオーギュストが叱咤激励する。
第七師団は獣じみた咆哮をあげながら、手当たり次第に斬りまくり、殺しまくる。
■オーギュスト > 連合軍は惨敗を喫し撤退。
対する第七師団は歓呼をあげて勝利を喧伝する。
第七師団の死者、100足らず。
連合軍の死傷者、5000以上。
連合軍の残党2個師団は王国侵攻を諦め撤退。
オーギュストは指揮官の首を手土産に、王都へと凱旋の途につく。
(……やっぱり、そうか)
オーギュストは、自分の手にした力をかみ締めていた。
この、千年の間に積み重ねられた戦闘教義――『ドクトリン』。
これは、オーギュストの第七師団に、魔物狩りだけではない、対人間のあり方までも教えるものとなった。
■オーギュスト > オーギュストは自らの野心の可能性が、一歩、別の方向へと踏み出したのを感じていた。
魔物との戦いを続けるのはともかく、人族同士の争いにも関与できる力。
それを得た事で、彼はどう変わっていくのか。
その結末は、まだ誰も知らない。
ご案内:「ハテグの主戦場 会戦」からオーギュストさんが去りました。