2016/10/25 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にアルバトロスさんが現れました。
■アルバトロス > ハテグの主戦場。
今も小規模の戦闘が続く戦場の何処か。
ぽつんと一つあった、腰掛けるのに丁度良い大きさの岩に腰掛ける男の姿があった。
「………。」
右手には剣を握り締め、やや前かがみになるような体勢でじっとしていた。
その男の周りには兵士の死体が幾つも転がっている。
単純な話だった。
己の首を狙う者を迎え撃つ。たったそれだけ、これ以上無いくらいに明快な話。
周りに転がる死体は、ある意味での男からの主張でもあった。
死ぬ覚悟のある者だけかかってこい、と。
■アルバトロス > そのまま、何時まで男はその場に居座り続けたのかは定かではない。
しかし、その場に男の死体は転がっていなかったというのが、その後の兵士の報告だった。
ご案内:「ハテグの主戦場」からアルバトロスさんが去りました。
ご案内:「ハテグの主戦場」にフォークさんが現れました。
■フォーク > 隘路を通るように進言した。
意図を理解してくれたか指揮官は納得したように頷き、臨時雇いの副官フォーク・ルースの指示に従ってくれた。
「あとは、お任せを」
撤退する本隊の土煙を仰ぎながら、フォークは呟く。
僅か百名の部隊で、指揮官率いる本隊が逃げ切るまでの間、敵の追撃を食い止める。
失敗すれば全滅。しかし成功をすれば一番の手柄となる。傭兵にとって負け戦ほど手柄を稼げる舞台もないのだ。
フォークは部隊を二手に分け、隘路を挟む左右の崖の上に布陣させた。
敵の旗が見えた。三百ほどの騎馬隊だ。先行部隊だろう。
先行部隊の意図は読める。騎馬隊の機動力で撤退中の本隊に食らいつき、敵本隊が到着するまでの時間稼ぎをするつもりだ。
ということは、急いでいるので食糧など物資の補充が整っていないということになる。
だから、隘路の中心にありったけの食糧と軍馬の飼料をぶちまけておいた。
「頼むぜ、こっちはもう食い物は何もないんだからな……」
策は成った。敵は一旦侵攻を止めて物資を拾い集めている。
フォークは左手を挙げた。部下たちが切り倒した材木や石を隘路に落としていく。
木石は先行部隊の前後を挟むように落とされて、進行も撤退も防ぐ壁となった。
右往左往する先行部隊。狭い隘路に逃げ道はない。騎馬隊は崖も登れないのだ。
フォークは敵の慌てぶりを、冷酷な眼差しで見下ろしていた。
今度は右手を掲げる。
それを合図に部下全員が先行部隊に向って油壺を投げ落とす。壺は割れて油をぶちまけた。
「火だ」
フォークの右手に松明が握られた。
その松明が、隘路に落ちた。
地獄絵図の始まりだった。
■フォーク > 阿鼻叫喚の声が崖下から響いてくる。生きたまま焼き殺されるのは、さぞ辛いのだろう。
『副隊長!』
部下の一人が指さす。
さすがは火事場の馬鹿力だ。火中の先行部隊が、本隊に戻ろうと木石の壁を破壊したのである。
火の罠から抜け出た騎馬隊は、およそ二百といった所だった。
火攻めで斃せたのは百ばかりだった。少し読みと外れたがまあ良い、とフォークは頷く。
「いくぜ、皆の衆!」
愛馬ビッグマネー号に跨り、崖から隘路に飛び降りた。部下たちも騎乗しフォークの後を着いてくる。
本隊に戻ろうとする先行部隊の姿が見えた。
フォークは一斉に声を挙げるよう部下に命じ、自らも怒号を張り上げた。
「燃やすぞ、燃やすぞ!」
つい先ほどまで火計に合った先行部隊は狂ったように一直線に逃げていく。あの方向に敵本隊があるのは間違いない。
すでに戦意を失った先行部隊に混ざるように、フォークは部隊を指揮した。
「いいか、敵の旗を目立たせろ。敵本隊が見えさせたら思い切りこいつらに悲鳴を上げさせるんだ」
敵の本隊が見えた。部下に指示して先行部隊の兵たちに、悲壮な悲鳴を上げさせる。
そして、フォーク隊百名と敵先行部隊二百名の混合軍が、敵本隊と激突した。
敵本隊の指揮が大きく乱れた。無理もない、敵味方不明の軍が急にぶつかってきたのだ。
迎え入れてよいのやら、戦ってよいのやらほんの数瞬、敵の指揮官が迷ったのだ。
その迷いを見逃すほど、フォーク・ルースは間抜けではないのである。
「殺せ殺せ。生きて戻れば一番手柄だぞ!」
敵味方が入り乱れる中、フォーク・ルースは鬼のような笑顔で駆ける。
「俺と一騎打ちをする者はおらんか!」
捕虜を手に入れることができれば、さらに手柄となるのだ。
■フォーク > 結論でいえば、フォーク・ルースの部隊は敵本隊を追い払った。
「今日も生き延びた……か」
這々の体で逃げていく敵軍の土煙を見上げながら、小さく呟いた。
「さあ、勝利だ!」
返り血に塗れた拳を突き上げた。部下たちの勝ち鬨の声が響く。
撤退戦の殿において、全滅するのは三流、追撃を食い止めるのは二流。
そして追撃部隊を追撃せしめるのが一流なのだ。
ご案内:「ハテグの主戦場」からフォークさんが去りました。