2023/06/09 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にアデライードさんが現れました。
■アデライード > 顔面の蒼白具合、口許の引き攣り具合を見るまでもなく、娘は混乱し切っていた。
神聖都市の往来、商店などの建ち並ぶ界隈からは少し外れているからか、
人通りはさほどではないけれど、それでも、衆目が皆無というわけでもない。
堂々たる人攫いが横行するような場所ではない、はずの、そんな通りで、
本物であるかどうかは知らないが、僧衣姿の男に、いきなり羽交い絞めにされて、
わけのわからないことを囁かれ、怖い顔で睨まれながら、何処かへ引き込まれそうになっている。
何処へ連れて行く気かはわからないが、連れ込まれれば終わりだということだけは間違い無いから、
必死に身を捩り、男の腕の中から逃れ出ようとしているけれど、
ギラギラと双眸を光らせ、荒い息を吹きかけてくる男は、やけに力が強く、
小柄な娘一人の力では、とても逃げ出せそうになかった。
「ちょ、あの、本当に……どなたか、と、お間違えじゃ、ありませんか?
わたし、あ、アーシュラ、女子、修道院の……っ、
お、願い、ですから、いったん、離して、くださ……!」
いつの間に逃げ出した、だの、とっとと戻って稼げ、だの、
意味不明なことを繰り返す男の誤解を、なんとか解こうと試みながら、
周囲へ視線を巡らせてみるも―――――通り過ぎる人々は、一様に無関心を決め込んでおり。
娘が自力で事態を打開する以外、術は無いように思われた。
■アデライード > 「――――――~~~っっ、ごめんなさい、っ!!」
このままでは埒が明かない――――――。
ちょうど通りの向こうに現れた人物が、こちらを注視したタイミングで。
渾身の力でもって身を捩り、ヴェールが脱げ落ちるのも構わず、男を振り切って駆け出した。
後ろで男が怒鳴り散らしているのが聞こえたけれど、立ち止まろことはもちろん、
振り返って見ることだって出来るはずもない。
修道衣の裾を翻し、黒髪を風になびかせ、一目散にその場を離れることに――――――。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からアデライードさんが去りました。