2022/05/10 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/大教会・懺悔室」にバティスタさんが現れました。
バティスタ >  
「──えぇ、神は全てをお許しになります。
 貴方にこの『神の塩粒』を与えましょう──悔い改め、神への祈りを絶やさぬよう…」

神聖都市に座する大教会
神への告解を行う場所、小さな箱のような懺悔室から大柄な男が虚ろな表情で現れ、そのまま教会を後にする

「──…ふぅ」

「つまらないことを悔いる人間もまだまだこの国にはいるものね…」

互いの顔の見えぬ空間
懺悔室の薄い布の向こうからは他人の罪の告白になど一切の興味がない、といった風の少女の声

「こんなことで敬虔な信徒が増えるとはとても思えないのだけど」

格下の司祭にでもやらせておけば良い、と思いつつも
是非聖女様にと聖堂騎士団の高位騎士数人からせがまれ、時折こうして民の告解を受ける立場に甘んじていた

バティスタ >  
薄布の向こうで聖痕を宿した少女は気だるげに机に頬杖をついていた

この役目の何が面倒だ、といって
とにかく退屈なことだろう
告解を望む信徒が来なければ退屈
そして他人の罪の告白もまた退屈
どのみち退屈でしかないのである

「これなら貧民街に食料を分け与えて群がる物乞いでも眺めていたほうが幾らか有意義だわ…」

個室ということもあり、およそ聖女の口から出てはいけないような言葉が次々に出てくるのであった

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/大教会・懺悔室」にビデラさんが現れました。
ビデラ > そのまま、愚痴を零す聖女の元に何人かの信徒、あるいは信徒候補が訪れ、去った後になるか
こつこつ、と懺悔室の…聖女が居る側の扉を軽く叩き…声をかける男が一人

「我らが聖女。このような些事に貴女の時間を割いていただき感涙の思いです
……ああ…その、聖堂を閉じる時間ですのでお声掛けを…」

声を出したのは、やさし気な風貌の…しかし、麻薬である塩粒が配られていても何一つ気に掛けることのない男
その体は、聖女に声をかける喜びと畏敬で震えている
何も知らない余人から見れば、ただ単に仕事の終えた者を呼びに来ただけなのだが

彼からしてみれば、それこそ神に恐れ多くも話しかけているに等しい
他の上級と呼ばれる司祭や騎士が夜の巡回に出払ったため、この役目を受けられたのは至上の幸福であったが

…万が一、このような些事を願ったことで聖女の御心に曇りが生まれていればどう償えばいいか、そもそも償えるはずもないのでは…

そんな震える思いのまま、反応を待つ

バティスタ >  
退屈、退屈、退屈───
詰まらない時間が過ぎ去ってゆく
告解される罪といえば、余りにも些末なものばかり

無論、稀代の大悪党などが罪を告白しに来たりする筈もないので当然なのだが

退屈凌ぎに教本の粗捜しをしていると部屋の外から声がかかる
告解に来た者ではない、聞き慣れた男の声

「──嗚呼、騎士ビデラ。そうですか、お務めの時間を過ぎたようですね」

聞こえないよう小さな咳払いをして、いかにも聖女といった様相の落ち着いた、清らかな声色を整えて返答を返す

「今日も数多くの迷える子羊が告解に訪れました。
 宜しければ貴方も何か告白なさいますか。騎士ビデラよ」

くすりと小さな笑い声が続く
聖女といえど子供の、軽い冗談ともとれる言葉──

ビデラ > 聖女に告げられたのはどれもこれも小さな悪事であったり、そこから生まれる悩み程度
ただ、告解を行った者からすれば…涼やかな声に優しく受け入れられた後に塩粒を服用し
それこそ天にも昇る心地だっただろうが

「―――――――…はい…。我らが聖女に告解が叶った者たちは皆、幸せに震えておりました…」

うらやましい、と正直に思う
上級、あるいは下級の司祭への告解でさえ僅かにその思いが浮かぶというのに
聖女に直接罪を告白できるなど、彼からしてみると…本来なら地に伏して感涙しながら行われるべき行為である

そんな思いを抱えながら膝をついて聖女がその箱から出てくるのを待っていたが…
笑い声を伴った言葉に一瞬で涙が溢れた

「お、お戯れを…!私などの告解に聖女である貴女の思考を割くなど…!」

一瞬間を置き…涙声を何とか吞み込み、膝をついた姿勢を維持する
それはもちろん、告解というなら彼にも存在する
例えば以前に一度誘われた出来事が忘れられない事であるとか、自身の力不足で信徒の増加が緩やかなことなど

ただ、既に幾匹もの羊を導いた後の聖女にあっさり頷くことなどできず
喜びと躊躇いを混ぜ合わせた震える声で返すことしかできない

バティスタ >  
告解を行った者は皆幸せに震えていた
その言葉が耳に届くと、聖女は唇をいびつに歪ませる
"神の塩粒"と彼らが呼ぶものは聖堂騎士団が主にその流通を掌握している高精製の麻薬である
ほんの少量でも強烈な多幸感を与える代物で依存性も強く、狂信と呼べる程の信徒を生み出している手品の種だった

「──そうなのですね。彼らが再び道に迷わぬことを我らで神に願いましょう」

込み上げる笑いを堪え、少女は落ち着き払った様子で言葉を返す
そして───

「良いのですよ。騎士であろうと信徒であろうと、人は人…。
 神名の下に傅き告白すべき罪など、大小誰もが背負い生きるものです」

「…フフ、貴方は私にとても強い畏敬を抱いてくれているのですね。騎士ビデラ」

無理強いはしませんよ。と扉の向こうで身支度を整える
あからさまに戸惑いの混ざる声色に小さく笑い、少女は言葉を続ける

「──では、ついでというわけでもありませんが、宿舎までの護衛を頼めますか?
 …此処のところ、地下街で行方不明者が増えるなど、聖都も安全とは言えませんから…」

ビデラ > 勿論、ビデラもまた告解の後に何を渡しているかなどは知っている
罪を告白した後の安心感からそれを服用してしまえば…どうなるかもわかっている
ただ、それは彼にとっては聖なる行いである
禊を経ずとも…聖女の慈愛の一端に触れることができるのだから

「…っ……、なんという慈悲…。……、はい。私は…聖女バティスタと聖堂騎士団が居なければ路上の塵と消える定めでした。
…強く、お慕い申し上げています。…必ずや護衛の任、完璧にやり遂げましょう」

愛情とは違うものの、強い感情を抱きながら…聖女が身支度を整える気配を感じる
少しすれば、機を見計らって扉を開こう
ただ、良いと言われれば…護衛の前に…心情のまま、言葉があふれ出る

「…私の告解など浅ましいものです。以前、分不相応にお声をかけていただいた日の事が忘れられないのが1つ
…そして…もう1つは、私の力不足…未だ、聖女の威光を広く知らしめられないことです」

わざわざ懺悔室を使っていただくまでもないと
告解がないと嘘をつくわけにもいかず、告白する
言葉を発しながらも…身と心を引き締めながら聖女を迎えわずかに遅れて歩き始めようか

バティスタ >  
「騎士ビデラ」

「それは私が許したこと。故に汝に罪なし───気に病む必要はありませんよ」

小さくとも、扉の向こうからはっきりと聞こえる声でそう言葉が返ってくる
告解と呼ぶにはあまりにも密やかな、まるで思春期の乙女のような告白
そこに愛情の色がなくとも、行き過ぎた信仰と敬愛はそれにも勝る聖女への敬愛と執着をかの騎士に生んでいるといえた

やがて扉が開けられれば、聖女然とした穏やかな笑みを讃えた少女が姿を見せる
普段となんら変わらぬ姿も、青年にとってすれば神々しく映るのだろうか

「それに私の威光などに拘る必要もありません。
 我々はただただ、ノーシスの教えを救いを求める人々に説けば良い…それだけです。
 無論、信徒からの寄付は我々聖堂騎士団の運営に大きく関わってくるものはありますが…」

「だとしても力不足は貴方だけの罪とは言えないでしょう?」

それでは参りましょうか、と
柔らかく、敬虔なる聖堂騎士へと微笑み、少女は歩きはじめる

あーあ、聖堂騎士団の騎士が全員こんなヤツばっかなら楽なのにね
───そんなことを思いながら

ビデラ > ああ、あの者たちはこんな思いを抱えてそれぞれの巣へ帰っていったのか
それはなんて幸せなことなのだろう

「………はい…はい…………!」

場合によっては、適当に返事をしているともとられそうな返答
けれど、その声は大の大人ともいえる青年から漏れたにしてはあまりに震え、今にも大きく噎び泣きそうな声だ
自分の悩みを聖女は瞬間的に溶かした。
もう、悩むことなどないと思えるほどに

「はい。このビデラ…微力ながらお供します」

参りましょうという声に付き添い
斜め後ろからゆっくりと鎧を軽く鳴らして聖都の夜へと消えていって
自分など、聖女にとっては居ても居なくとも同じであろうが
それでも、一枚の盾程度にはなれるように


……麻薬に侵される聖都の夜は静かに深まっていく―

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/大教会・懺悔室」からバティスタさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/大教会・懺悔室」からビデラさんが去りました。