2021/09/11 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にシシィさんが現れました。
シシィ > ───じじ、と蜜蝋にともした灯りが、かすかな空気の流れに揺れ、音を立てる。
手にした燭台の小さな灯りに対して、書庫は巨大だった。
手燭台ではどうしても灯りの届く範囲には限りがあり、一歩先は闇のなか、ということはないものの、やはり視界は聞きづらい。


先日から訪れている神殿の書庫。仕事は済んだが、今しばらく自由にしていい、とのことだったので、今回は個人的な興味で訪れている。

古い時代の建物をそのまま流用しているためか、表にある神殿のそれより様式が数代古い。レリーフなどは、年月により摩耗して、そこに積もった埃が層になってその形をうすら暈けたものへと変えてしまっている。

奉っていたものが、現在の主神かどうかも怪しいが、年月に埋もれたそれは、顧みられることも怪しい。事実神官たちは特に気にしていないようだった。

その中に林立する書架の間を、ゆるゆると歩く。
皮の背表紙に、かすれた文字が刻まれて、希少本ではなくとも、資料としては重要なのだろうことは想像できる。
とはいえ、ここは神殿だから、それにまつわるものが多いのは当然だろうが──それでもその中から、己の好奇心の傾向に合致しそうなものを見つけると2冊程度をわきに抱えて、読書席に向かうところ。
書庫というだけあって、地下のその場所は暗く、黴臭くはないが相応に埃臭い。換気は生きているようだが、小さくくしゃみを弾けさせつつ、歩を進めていった