2021/08/30 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にシェティさんが現れました。
■シェティ > 「―――……そう、ですか……。いえ、どうも有難う御座いました……。」
そう言って、深く頭を下げて見せてから、去って行く法衣を纏った後ろ姿を見送るのは。
何処か喪服を思わせる黒いドレスとヴェールをその身に纏った女が独り。
やがて去って行った後ろ姿が見えなくなった頃、ふぅ―――と人知れず小さな溜息を零してから、伏した視線を自身の手許へと落とす。
白く伸びた十本の指先――その左手薬指に浮かび上がる、茨の指輪を嵌めたかの様な黒い痣。
その痣と共に刻まれた呪いを解く術を求めて、立ち並ぶ教会や寺院の聖職者を何人か訪ねているのだけれども。
「矢張り……余り芳しくはありませんね………。」
心当たりが無いと首を横に振る者。
似た様な呪いは知っているが、解呪の手段までは知らないと告げる者。
痣の紋様を見るや否や、忌々しいとばかりに門前払いを受けた寺院も在った。
勿論、女とてそう容易く解決の糸口を掴めるなどとは楽観していなかったものの。
伏せられたヴェールの下の表情には少しばかり疲労の色を浮かべながら、ふらりとまた別の教会を探して歩き始めようか。
■シェティ > それから暫く街並みを歩き回った頃。
これまで訪ねて来た教会や寺院よりも、一回り以上は大きな神殿の入口前で足を止める。
宗教施設で在ると同時に、まるでそれ自体が巨大な彫刻のひとつで在るかの様に、
所々に精巧な装飾の施された荘厳な佇まいに見惚れる事暫し。
そうしている間にも、絶える事無く聖職者や巡礼者と見られる人々が出入りしている様が見えて。
「――…此処でしたらば……もしかしたら………。」
これ程までに多くの人々が出入りする大きな神殿ならば或いは、手掛かりのひとつくらいは見付けられるかも知れない―――
そう、思う心中とは正反対に。
その荘厳な佇まいに気圧されてしまった所為か、
若しくは自身でも気付かぬ内に心か、身体の何処か奥底ではその場所に足を踏み入れる事を拒否してしまっているのか。
女の足が神殿の入口へと向かう様子は無く、唯その場に立ち尽くしながら、時折躊躇うかの様にその場で足踏みを繰り返すばかりで。
■シェティ > 結局。その様子を見かねて声を掛けた修道女に案内されるまでの間、女はその場で二の足を踏み続けているのだった―――
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からシェティさんが去りました。