2021/08/19 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にシシィさんが現れました。
■シシィ > 「────また少し、雰囲気が違いますね」
穏やかな声音が夜の静寂を揺らす。
夜風に癖のある銀の髪を揺らし、歩を進める。
点された燭台の明かりが闇を退け、光で満たすも、やはり夜の闇は色濃く忍ぶ。
昼間訪れた聖堂を再び。
一度土地を離れたらしばらくは訪れることもないだろうから、と。
訪れる人はあまりいない。今も主だった人影は己くらいだ。
それでも来訪を拒むこともなく、聖堂は今宵、今もまた門戸を開いてくれている。
「眠る前の祈りを、と」
柔らかな声音で独り言。
それほど声量のない独り言でも結構響くほどに天井は高く。
それを支えるアーチを描く石の柱が、この建造物の年月を物語る。
■シシィ > 昼とは違う、灯りと夜の闇の陰影が切り取るコントラストは、最初に見た雰囲気とはまた変わるものだ。
それほど信仰心篤いわけではない、のは、己の職分を知れば誰もが納得するところだろう。
この都市には、彼らが必要とする香料や、蜜、そういったものを届けに来たに過ぎない。
代わりにこの都市で手に入れるのは新たな経典や、祭具、それから土地の特産をいくつかを、復路ではさばくことになるのだ。
そのためにしばらくの逗留は必要で、己が宿として求めた場所から、この小さな聖堂は近かった。
巡礼者を多くかかえるためだろう、宿には困らないが、さすがに派手な娯楽めいた店は少ない。
────少なすぎるのは、この都市の抱える闇が関係しているのかもしれないが。
そこについて踏み込むべきか、踏み込まざるべきか、は、悩ましい。商機を得られるなら別だが、そうでないなら───己の身にも危険が降りかかる事柄ではある。
────聖なる場所に似つかわしくないことばかりを考える己に少しあきれるよう、笑みに苦いものを交えながら、昼間と同じように聖堂の中をゆるゆると歩く。
燭台の明かりに、ともとしてついてくる己の影が長く伸びるのは、昼間とは少し違う光景で、それもまた、楽しみながら──
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にイーヴィアさんが現れました。
■イーヴィア > (本来なら、其処に居合わせる事は無かった
この土地にだって、所用が無ければ訪れる事も無かっただろう
王都からの一直線の行路は、流石に用件を終えて直ぐの帰路には難しい
夜中行軍をするのは流石に無謀であり、結局、余り長居はしたくないこの場に
少なくとも今夜は留まる必要が出来て仕舞った訳だが。
――予定していた宿に、嫌な気配を感じて、抜け出して来たのだ。
結局この時間まで、荷物を抱えて練り歩く羽目となる
最終的に辿り着いた聖堂の中、少々草臥れた表情をしながら
ゆっくりと歩みを進めれば。 ――其の内に、向かいから鉢合わせるだろう
偶然にも偶然、こんなところで出会うとも思わぬ、見知った顔に。)
「―――――――………お…、……おぉ?」
■シシィ > 「────………」
壁伝いに、特に目的もない。訪れた以上は祈りをささげてから、宿への帰路へと就くつもりではあるが。
ゆったりとした装束の裾が、髪が、夜風に揺れて、静かな衣擦れの音を立て。
ほかに来訪者がいない以上、少し気を抜いていた部分はあったのかもしれない。思索と、散策、それを同時に楽しむように歩を進めていたために。
向かいからやってくる陰に気づくのは少し遅れたのだろう。夜ということもあり、燭台の明かりが届く位置にいたってようやく、おや、と表情を変えた。
「どなたかと思ったら───……、奇遇ですね?」
思いもかけぬ、というのはこちらにとっても同じこと。
意外そうな表情とともに再会の言葉を手向ける。お元気でしたか、とも添えて、穏やかな笑みを口元に称え。
■イーヴィア > 「今は、こんな処で商売かい?」
(相手の生業は知って居る。
だから、此処に居る事自体に不思議は無いのだが
それでもやはり、随分と辺鄙な所で出会った物だとも思う。
ひらり、片掌を掲げて見せつつ、相手の方へ歩みを向け。)
「全くだ、偶然も偶然。 俺は、余り此処に来ないからな。」
(この都市に。 こう言った聖堂に。
下手な場所よりは平穏だろう、と言う推測が在って足を延ばした訳だが
実際、少なくとも傍目には、他に人の気配も無く。
一度周囲に目を配り、そして、改めて目の前の女に視線を向ければ
ふ、と口元に弧を描いた。)
「まぁ、何にしても…相変わらずそうで何よりだ。」
■シシィ > 「ええ、土地を巡るのが仕事ですし、しばらくはここに滞在しております」
そうやって旅をし、商いをするのが生業の己であれば、そう、戦場ただなかの前線など以外であれば割合どこでも訪れるものだが、相手はそうではない。
店と居を構え、そこを拠点としているタイプの仕事だ。だから珍しいのも当然で、彼の言葉には素直に頷くことになるだろう。
「ええ、少々意外で、驚きました。イーヴィア様も何か商用で?」
相槌と、それから、浮かんだ疑問を言葉に変える。
夜に祈りに訪れるものも奇矯だ、おそらくは、土地についたのが遅い時間だったか、あるいは宿を求めてのことか。
どちらにせよ、何か目的があるのだろうと推論交じりの言葉を向けた。
周囲を確認するような視線が廻り、それから知己であるからか自然とほころんだ口元と、言葉にもう一度頷いた。
「以前作っていただいた鞄も愛用しておりますよ。今は───なんとなく夜の散策に訪れている、といったところですが」
相手から視線を転じ、燭台に点った灯りがある種幻想的な雰囲気を醸し出す祭壇へと向けて。
■イーヴィア > (暫くは、との言葉に、そうか、と頷く。
相手の商売を分かって居るからこそ、納得も推察も早い
己もまた、ある種商売人であるからこそ、と言うのも有るだろう
背に背負った鞄を、ぽんぽんと掌で叩いて見せる
少なくとも、中に何か詰まって居るのは見て取れるだろう
然程大きな鞄では無いが、其れが此処に来た理由、である事は間違いなく。)
「鍛冶仕事で、ちょいと必要になっちまった物がな。
色々あって、王都での流通が滞っちまってんだ。まぁ、一時的だとは思うが…。」
(要因はいくつかあるが、物流に影響が出たのだ、とは伝えよう。
それで、自分で態々こんな所まで足を延ばす羽目になったのだ、と
告げて、視線を相手の向けた先に、合わせる。
照らされる祭壇の光景、この地特有の宗教的荘厳さを持つその景色
無論――この場に携わる、余り宜しくない話を知らぬ訳では無い
本来の神聖さ、清廉さが、けれど、其の儘信用出来るとは限らず。)
「――――……散歩か。 まぁ、俺も似た様な物か…。
朝までどう過ごすか、まだ何も考えて無くてな。
結局ふらふらと、此処まで来ちまった。」
(すん、と微かに鼻を鳴らす。 先刻から漂う香りは、此処独特の物だろうか。
何かしら、御香でも焚かれて居るのだろうかと)。
■シシィ > 相手が鞄を背負い、ここに訪れている理由を聞き及べば、少し驚きの意を告げた。
「道でも崩れましたか?」
あるいは山賊か、どちらにせよ、商人が荷を運べない事態は己にも響きそうだ。往路と復路、同じ道を、同じ方法を選ぶかどうかも思案どころではあったが、己にも関わりそうな話であれば自然話題に釣り込まれる形で、言葉を重ねることになる。
「宿はまだですか?巡礼客の宿はまだいくばくか空いてるとは思いますが───あまり遅くなると選べなくなりませんか…?」
───都市の黒い噂を、知ってか知らずか。あるいは、まあ、それに関与しているのかもしれないが、女はそれについて口にすることはない。ただ、祈りの場としてここに訪れている以上、そろそろ祈りと、燭台のろうそくに、己も礼拝がわりに火を点そう、と歩を寄せた。
礼拝の仕草として、少し芝居がかった仕草で火をともし、ささげたなら、ひざまずいて祈りの仕草。
それほど時間がかからないのは、神に祈り、願うことがそれほどないのが本音のところ。
「───私はこれで。すみません、もう少しお話に付き合えたらとは思いましたが、少しだけ眠いみたいで」
知己との会話に少しだけ時間を過ごしてしまった、と眉尻を下げる。
彼の事情凡てをうかがい知ることはできないが、宿が見つかること、目的のものが見つかるといいですね、と柔らかく告げると頭を下げ、立ち去る言葉を重ねた。
「おやすみなさいませ、よい夜をお過ごしください」
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からシシィさんが去りました。
■イーヴィア > 「地揺れらしい、道中も影響を受けてるらしくてな。」
(山中で岩が落ちてるとか、そう言う話もちらほらと聞いた
敢えてその道は避けたが、実際、馬車などの大規模な行路は難しいのだろう。)
「あー、まぁ、予定が狂っちまって、其の辺りはな。
ま、最悪諦めて考えるさ。 選んでもられないしな。」
(相手が祭壇に近づいて行くなら、己は其れを見守るのみ
信心は無い、神に祈る事もしない。 ただ、祈る事を否定もしない。
そうして、再び立ち上がった相手の姿を見下ろしてから
僅かに肩を竦めれば。)
「嗚呼、気を付けな。 商売に差し障っちゃいけねぇし、ゆっくり寝てくれよ。」
(此方の事は気にするな、と、笑ってから。
また、縁が在れば、ゆっくり話そう、と。
そうして相手が立ち去った後、己もまた、いい加減夜を明かす場所を求めて、聖堂から遠ざかる
少々気を這って夜を過ごす事になりそうであった――)
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からイーヴィアさんが去りました。