2021/06/01 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 宿」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 神聖都市の夜は早い。
日が暮れて街灯が灯るようになれば、路を行くのは急ぎ足の旅人ばかり。
この都市で最も多い、神職に連なるひとびとは街灯が灯る前早々にすっかり姿を消して、月が天に映えるころにはしんとした夜が横たわる。

「――――不思議な街…」

しんと静まり返った路を、宿の2階から見下ろす人影がひとつ。
神聖都市といえど街中なのだから、居酒屋から千鳥足で帰るひとくらいは見えてもよかろうに。

(静かなのは嫌いじゃないけど……)

銅色の肌のエルフは、出窓の淵に腰掛けて、ガラス窓に寄り掛かるようにして辺りを見る。
野良犬野良猫の一匹も見当たらない、宗教都市特有の装飾の多い街並みの外は、まるで静止画のようだ。
森育ちとはいえ、木々のざわめきや音曲に囲まれて育った身には何だか不気味な様にも思えて、抱えていた弓の弦を竪琴よろしく弾く。

武骨なビィィン…という音。

本来は複数人用だという広い部屋によく響き、余韻は静けさを際立たせることとなってエルフは少し顔を顰める。

ジギィ > じんじんと響いていた音から静寂が耳に痛くなってくる。
今宵宿にいる家人も客も早々に就寝してしまったのか、廊下から音が聞こえてくることもない。

ビィン…

またひとつ、指で弦を弾いて視線を窓の外から室内へ移すと、そっと溜息。

「……ねよ…」

窓際から降りるとうーっと伸びをひとつ、身体にくれてやる。
くせ毛をわしわしと掻いてから弓を置き、服を乱暴に脱ぐとバックパックの上にまた乱暴に放り投げて

「…おやすみなさーい」

下着姿でベッドに沈む。
シーツからは日向の匂いがする。
程なくエルフは、寝返りをうつ間もなく、夢と幻に覚束ない世界へと心を手放して……

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 宿」からジギィさんが去りました。