2020/11/10 のログ
ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「…何だか良く分からんが、まあ貴様が喜んでいるのならそれで構わぬ。本当は、何を言えば人が喜ぶのか、という事くらいはきちんと理解しておきたいのだがな。
どうにも、そういうのは分からぬ。金や宝石で喜ばれる方が、余程分かりやすいのだが」

感嘆の声と吐息に応えるのは、少しだけ困った様な笑み。
どうすれば人が喜ぶのか、という事に疎い己はその莫大な財貨しか対価とするものが無い故に。
そんな笑みも、得意げな少女の表情を見遣れば、直ぐに穏やかな笑みへと切り替わるのだが。

「柔よく剛を制す、か。成程……武術の心得は無いが、言わんとする事は理解出来る。
しかし、ヨミ。そうやって気恥ずかし過ぎるのは何というか…今更過ぎるぞ」

と、気まずそうに赤面する少女の姿に思わずツッコミめいた言葉を投げかけながら、コロコロと可笑しそうに笑みを鳴らすのだろう。



「何故も何も。こう言っては何だが、私はそれなりに経験があるからな。此の国でそれなりに権勢を誇る王族であれば、当然だろう。
…寧ろ、そうやって年上ぶる貴様が、年下の私に言い様に弄ばれる可能性の方が高い様に見える…がね?」

なんて、己より身長も高く、己よりも年上…に見える少女に、クスリと笑ってみせる。
何だかんだ抱き着いた儘でいる辺り、実は本当に子供っぽいんじゃないか、とか。実はも何も良く考えたら結構子供っぽいよな、とか。そんな失礼な感想を抱きつつ。



「…そうだな。それはきっと面白い事だろう。
何より、そんな頭が愉快な提案をしてくる者は早々居ない。
大体が、私の名を恐れ、家の名を畏れ、平伏する者ばかりだ。
貴様くらいだぞ。此の私に立場も弁えず友達になろう、等と言うのは。頭の中にサーカス団でも生えているのか?」

辛辣極まりない言葉は、少女の事を少なからず友人として認めた証。涼やかな声色で、揶揄う様な罵詈雑言。
それが許される事が、己にとっては中々に得難いものであったから。
きっと少女に向ける表情は、楽しそうに笑っているのだろう。
だから、差し出された手も拒まない。
日光を拒絶したかの様な真っ白な掌で、少女と握手を交わすのだろう。

「ああ、構わない。これから私と"お前"は友達だ。
善い友人関係を築いていける事を、切に願おう。
………ほう?別に、お前がどんな劣情を抱こうと一向に構わないが。
神の座する此の場所で劣情を囁くとは…中々に罪深い行為だとは思わないか?」

貴様、から、お前、へと。
さりげなく変わった呼び名。些細ではあるが、それは己が少女への視方と立場を変えた事を、伝えられるだろうか。
しかし、片手を蠢かせて何だか胡乱な事を言い始めた少女を、ぱちくりと見つめた後。
ゆるり、と唇を歪めて。そっと片手を少女の頬に伸ばして。
そんな少女の胸のざわめきを、煽るかの様に薄く嗤った。

ヨミ > 「……あはははっ!なにそれ。ギュンターくん、なんだかお金持ちみたいな事言ってるね?
 って言うか、そういう事も気にしたりするんだね。お姉さん、ちょっぴり意外かも。
 ……あっ!じゃあじゃあ、逆転の発想でさ。清貧な生活を心がけてみたらどう?
 そうしたら、もしかしたらわかるかもしれないよ。笑顔の価値っ」

少年の困った様な笑顔に対し、少女は両の人差し指を頬へと当ててニーっと笑顔を浮かべて見せる。
その笑顔も矢張り"嬉しそう”で、思えば、少年と言葉を交わしてからというもの
この束の間の時間、少女はずっと"嬉しそう”な様子でいる。ずっと、だ。

「ぅ……私ね、だいたい、いっつも、殆ど"今更”なんだぁ……
 なんて言うのかなぁ、頭より先に身体が動いちゃってね?
 後々気付いたら、失敗したり成功したり、誇らしかったり恥ずかしかったり……って、え゛ッ!?」

少年のツッコミめいた言葉に肩を落としたが、"それなりに経験が”と聴けば
三度目となる濁った声を上げながら瞼を見開き、少年の全身をぐるぐると見回した後咳払い。
抱きついていた身体を一度離して、訝しげな目で再度じっと少年を見つめた後、威勢よく胸を張ったと思えば――

「……宜しい! わかったよギュンターくん。お姉さんわかった。
 これは、アレだね? お姉さん喧嘩を売られてるね? 挑発? 挑戦? 宣戦布告?
 良いでしょう! わかった! わかったよ! その喧嘩お姉さん言い値で買っちゃうから!
 この後ギュンターくんのお屋敷に行ったら、早速勝負しよう!
 私がギュンターくんを夢中にさせられたら私の勝ち。出来なければキミの勝ち。
 勝った人は負けた方に何でも一つお願いを聴いて貰えるってことで、どう!!」

ビシっと。王族の少年へ向けて人差し指を突きつける不敬な貧民の姿がそこに在った。その表情は――勿論本気だ。



「……ねぇ。頭が愉快って、それ、褒めてる? 大丈夫だよね? 褒めてるよね?

 ふふんっ。私くらい記憶力が悪くなると、さっき名乗って貰った家名だって
 既に忘れてる位だよ? その辺のフツーな人達とお姉さんを一緒にしない方が良い……っ。
 あと、サーカス団は生えるものじゃなく映えるものですっ!」

罵詈雑言の半分を褒め言葉と勘違いしそうになりながら、
涼やかな声色、けれども朗らかな笑顔を浮かべる彼を、頬を膨らませた少女が見つめている。
暫くむっと見つめれば、すぐにふにゃりと緩んだ笑みへと変わって――友愛の握手を、暖かく少年と交わすだろう。



「――うんっ! ……あれ? ……あれっ。うん?
 今、"お前”って言った? それってさ、ギュンターくんの中では
 "貴様"とどっちが上のやつ? どっち? 返答によってはお姉さん笑顔だけど怒っちゃうゾ」

――少女は所謂脳筋で、禄に頭が回らない。
けれどもその分"心"には人一倍敏感で、深く、鮮明に識る事が出来る。
故に少女は気付く。少年の些細は変化、言葉の色が変わった事に。
少し茶化す様な言葉で返しながらも、少女の声色は暖かい。

「……れ、れれ劣情っていうのはちょっと語弊があるかもしれないなぁっ!?
 それに……私無神論者だから……っ。居ないモノ相手に罪は働けま、せ……、……っっ! ……っッ」

少年の返答に視線を泳がせた後、建物内に響かぬ様その耳元に唇を寄せて反論する、最中――
ゆるりと歪む唇。頬に触れる白枝のような手指。瞳と瞳が交わると、少女は言葉を続ける事が出来なかった。

少年は、美しかった。それは既に、男だとか、女だとか、そんな事は関係なく。
容貌も、言葉も、そして、意思もだ。少女にとって目前の少年は眩しい程に美しかった。
その心に歪んだものが見えなければ、きっと心酔してしまっていたかもしれないという程に。

「…………ギュンターくん、やっぱりちょっと、女の子っぽい所あるよね……」

言葉に詰まっていた唇は、一度の深呼吸のあとでそんな言葉を少年へと漏らした。
その笑顔が霞んでしまうかもしれない。そう思いながらも、今を誤魔化す手段が欲しかったのだ――

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「……いや、まあ、うん。その、お金持ち、ではあるんだが…。自分で言うのも、ちょっと憚られるが…。
清貧……清貧…?それは具体的にどれくらいの生活費を考慮するものだろうか。1か月10万ゴルドくらいまでなら、我慢出来るけど」

自分と話していて、此処迄喜色を露わにするというか、嬉しそうに話す者も中々いないなぁ、なんて思いながらも、少女に返す此方の表情も穏やかな笑みの儘でいることには――自分自身、気付いていなかったり。
因みに、平民が一日暮らす為に必要なのが200ゴルド。
その500倍くらいが、己にとっての清貧のライン。
足りるかな、みたいな顔をしていたりするのだが。

「まあ、動かぬよりは動いた方が良い事もある。
やらぬ後悔よりやる後悔、という言葉もあるでな。否定はせぬよ。
……って、何だ。急に変な声だして…?」

と、突然妙な声を上げた少女を怪訝そうな瞳で見つめる。
その瞳の色は、立ち上がって己の周囲をぐるぐると回る少女の行動に深まるばかり。
何やってるんだ、と言わんばかりの視線を向け続けた後――

「………何を言い出すかと思えば。
別に構わぬよ。私は勝負事は好きな性質でな。
喜んで受けて立つ…が。…その勝負の内容は、どうするつもりなのかな?」

指を突きつけ、真剣な表情で此方に勝負だと告げる少女。
挑発的な笑みでその勝負の申し出を受けつつ――どんな内容だ、と告げるその声色は、妙に甘ったるいものだったのだろうか。



「あー、褒めてる褒めてる。凄い褒めてるぞ。
…いや、別に覚えなくても良いのだが。良いのだが…もう少し努力するべきではないだろうか…?私以外の王族が、どう思うか分からぬ故な。
それと、やっぱりお前の頭には生えてる。絶対生えてる」

此方も、段々言葉遣いも崩れて来た。
頬を膨らませたり、ふにゃりと笑ったり。
そんな少女を、飽きがこないなと思いながら眺めつつ。
交わした握手の先。少女の掌の感触に、ちょっとだけ擽ったそうな表情を浮かべていたり。


「……さあ、どうだろうな?その辺りの認識は、お、ま、え、に任せようと思う所ではある。
一々私が説明するのも、面白くはあるまい?」

此方の真意が、少女に伝わった事を何となく察する。
そう、少女と違って、此方はあくまで""なんとなく"だ。
敵意や悪意には敏感であっても、他者からの好意的な感情には未だ疎い。
それでも、そんな疎い己でも、少女の声色が暖かなものであることは、きちんと理解する事が出来た。

「おや、奇遇だな。私も無神論者だ。御揃いだな。
では、幾ら不浄な行いであっても。不埒な感情であっても。
此の場で曝け出しても構わぬという事だ。
なにせ、咎める神を、お前は信じていないのだろう?」

そう。結局己は歪んでしまっている。
魑魅魍魎蠢く宮中で長く過ごした己は、そうあれかしと歪んでしまった。
決して、純粋無垢な少年ではいられない。いられなかった。
だから"友達"である少女にも――つい、手折ってしまおうかと、手を伸ばすのだ。

「……良く言われるよ。そういう顔立ちであるから、腹立たしいが致し方ない。
それに、そんな事を言うのなら。お前は私に、世の男共の様に劣情を抱いてしまったとでも言うのかな?
私は、お前より細く、お前より小さく、お前よりも華奢だ。
そんな私を、お前は――ヨミは、どうしてしまいたいんだ?」

甘く、甘く、囁く。
触れた頬をそっと撫でた儘、その首筋を擽る様に指先は滑り落ちて。
誤魔化す間など与えないと言わんばかりに、浮かべる笑みに妖艶の色を深めて、そっと少女に身を寄せていく。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からヨミさんが去りました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > ――後日継続にて――
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。