2020/04/05 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 地下道」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > 地上で僧侶や修道女が慎ましやかに暮らす都市の、その地下。
何の用途かそこには幾筋もの地下道が張り巡らされていて、それぞれ地下都市に続いていたり、或いは協会の秘密の部屋へとつながっている、らしい。
(――――とは、訊いていたけれども…)
そのひとつ、丁度上水道に沿う様に造られた地下道に今、カンテラを手に進む姿がひとつ。
大人二人が並ぶのがやっとのその場所で、ふと立ち止まるとカンテラを持ち上げて後ろを、次に前を―――行く先を照らす。
灰色のフードを目深に被った奥から、赤銅色の肌と翠の瞳が覗く。
「景色に変わりがないと、時間が解らなくなっていけないな……」
またカンテラを足元へと降ろしながら熟れた唇から呟く言葉が、岩で囲まれた路に響く。
近くを流れるらしい、上水道からの微かなごうごうと響く音が、呟きを遠くへ至る前にかき消してしまうだろう。
知り合いに頼まれた物見遊山ついでの届け物。
都市に入るときには堂々と正面から入ったのだが、何の意図か理由か届けた相手に地下道へと送り出されてしまった。
(一方通行だから、迷うことは無いと言っていたが)
壁に灯りも無い、すこしかび臭いような延々と続く(ように感じる)石畳の通路を歩いていくのは、あまり楽しいものとは言えない。
「………」
溜息ひとつ。少し速くなった歩調の靴音を響かせながら、また先へと進み始める。