2019/10/02 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にルドミラさんが現れました。
■ルドミラ > しんと静まり返った真夜中の教会で、立ち話をする人影がある。
ひとりは年かさの尼僧。もうひとりは、礼拝用ベールで顔の半ばを覆った、黒づくめの女。
夜も更けて、祭壇に供えられた無数のキャンドルのあかりがふたりの影を長く床へ伸ばし、ちらちらと揺らめかせていた。
「……では、今回の目録をお納めください。 主神ヤルダバオートの栄光がとこしえにありますよう」
落ち着いたアルトの声と、丁重な物腰。
蝋封の捺された 封書を手渡すと、尼僧はそれをおしいただくように受け取り。
『寛大なご寄進いたみいります。 神もさぞお喜びでありましょう』
と、鷹揚な挨拶を返す。 姿だけは敬虔な信者そのものの女は、 ベール越しの目元を和ませ、
「まあ、そんな。神より頂いたものをお返しているだけのことですもの。
……それと。目録外の品については、裏口に停めた馬車の中に。後ほどご検分下さいませね」
後半は声を落として囁いた。 馬車内に控えているのは、男女6名ほど。
娼館で散々性戯を仕込まれた彼ら彼女らもまた、教会への寄進物であった。
■ルドミラ > 修道院の見習いといった風情に身なりを整えた彼らは、 今夜から目の前の尼僧を含む聖職者たちの慰みものになる。
ノーシス主教人脈に相応の影響力を有していながら、 神聖都市の地下売春組織のひとつを取り仕切るような、 堕落しきった教会だからこそ。
貴族としての体裁を整えるための定期的な寄進先として、 目をつけたのだった。
聖性がひとかけらも残っていない教会は実に居心地が良い。
高い丸天井に描き込まれた宗教画も、贅を尽くした祭壇も、水盤も、
象眼細工の床面装飾も何もかもが空虚で、まるで豪華ながらんどうだった。
さて、寄進の後には祭壇へ祈りを捧げる──ふりをする──のが女の習慣。
それを知る尼僧が挨拶をしてその場を去ると、 おもむろに祈祷台の前へ向かう女の足音と衣擦れの音が、やけに大きく響いた。
膝まづいて肘を載せ、ベールに覆われたこうべを垂れて瞑目し。
傍目には非の打ち所のない祈りの姿勢をとる──。
■ルドミラ > 祈りを終えて立ち去る時。
さきほど尼僧が消えていった扉の向こうから、早くも「寄進物」の細い嬌声が聞こえたような気がした。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からルドミラさんが去りました。