2019/06/22 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 教会」にルドミラさんが現れました。
ルドミラ > しんと静まり返った真夜中の教会で、立ち話をする人影がある。
ひとりは年かさの尼僧。もうひとりは、礼拝用ベールで白い顔の半ばを
覆った、黒づくめの女。
夜も更けて、祭壇に供えられた無数のキャンドルのあかりが
ふたりの影を長く床へ伸ばし、ちらちらと揺らめかせていた。

「……では、今回の目録をお納めください。
主神ヤルダバオートの栄光がとこしえにありますよう」

落ち着いたアルトの声と、丁重な物腰。
封印済みの封書を手渡すと、尼僧はそれをおしいただくように受け取り。

『寛大なご寄進いたみいります、ヤーロヴァ女男爵。
神もさぞお喜びでありましょう』

と、鷹揚な挨拶を返す。
姿だけは敬虔な信者そのものの女は、
ベール越しの目元を和ませ、

「まあ、そんな。元々神より頂いたものをお返しているだけのことですもの。
……それと。目録外の品については、裏口に停めた馬車の中に。
後ほどご検分下さいませね」

後半は声を落として囁いた。
馬車内に控えているのは、男女6名ほど。
娼館で散々性戯を仕込まれた彼ら彼女らもまた、
教会への「寄進物」であった。

ルドミラ > 修道院の見習いといった風情に身なりを整えた彼らは、
今夜から目の前の尼僧を含む聖職者たちの慰みものになる。
彼女の「上司」にあたる司祭も同様。
ノーシス主教人脈に相応の影響力を有していながら、
神聖都市の地下売春組織のひとつを取り仕切るような、
堕落しきった教会だからこそ。
貴族としての体裁を整えるための定期的な寄進先として、
目をつけたのだった。

聖性がひとかけらも残っていない教会は実に居心地が良い。
高い丸天井に描き込まれた宗教画も、
贅を尽くした祭壇も、水盤も、象眼細工の床面装飾も何もかもが空虚で、
まるで豪華ながらんどうだった。

さて、寄進の後には祭壇へ祈りを捧げる──ふりをする──のが女の習慣。
それを知る尼僧が挨拶をしてその場を去ると、
おもむろに祈祷台の前へ向かう女の足音ときぬ擦れの音が、やけに大きく響いた。
膝まづいて肘を載せ、ベールに覆われたこうべを垂れて瞑目し。
傍目には非の打ち所のない祈りの姿勢をとる──。

ルドミラ > 空疎な教会での空疎な祈りを終えて立ち去る時。
さきほど尼僧が消えていった扉の向こうから、早くも「寄進物」の細い嬌声が聞こえたような気がした──。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 教会」からルドミラさんが去りました。