2019/01/18 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にジェドさんが現れました。
ジェド > 成る程、そうでしたか……ですがヤルダバオート神は必ずや貴方の信仰の祈りに応え、救済してくださる事でしょう。私も微力ながら応援致しますよ。さあ、お帰りなさい。また困った時にはいらっしゃい。――次の者を呼びなさい。
(真昼の時刻。防音対策は完備された懺悔室へと招いた悩める子羊からの相談を受けるこの大教会の司祭たる恰幅の良い男は好々爺とした穏やかな笑顔と柔らかい声音で始めは真っ当に相談に受け答えしていたのだが、懺悔室に段々立ち込める無臭故に気取られ難い媚薬の香によって相談していた女性の体は熱く火照り、意識も朦朧としてくれば懺悔室の女性がいる側へと一旦外に出て回りこみ侵入。何故此方側に司祭がいるのか、などという当然の疑問を抱いてもそれに対する脅威や恐怖を感じる程の余裕も失せている女性へ相談の続きをしながらふっくらとした掌で服の上から弄び、次第にはだけさせていきながら服の下へ。行為はエスカレートしろくに抵抗もできないのを良いことに交尾に発展、無責任に種を注ぎ――意識が戻る前に服を正し、再び向こう側へと戻っては意識が少しずつ明瞭となった女性が体の不調に困惑するもそんなことは無かったかの如く何食わぬ分厚い面の皮で素知らぬふりをし相談を今の今まで続けていた体を装って。戸惑いながらも偽りの表の顔に対する信頼から疑うに疑えない女性がその身に種を宿したのも知らず出ていくのを見送り。一人では足りぬと側近の僧兵に次の相談者を呼ぶように命令して。)

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にシシィさんが現れました。
シシィ > 「神聖都市、ね……」
街道を超え、訪れたのは、神の名をいただく都市だ。それが真実か否かは、己にとってはあまり重要ではない。宗教都市だけあって、それぞれの神々をいただく神殿が多くあるということ。それにより、ほかの都市とは違う需要と供給が生まれているということを知ってさえいればいい。

所詮異邦人の己にとってはこの地方の神々の話は、どこか絵物語を眺めているようにも感じている。
それを表に出すような愚は侵さないが。

街に入り、訪れたのは神殿への礼拝。この街で大きく力を持つのは神殿だ、そこへの寄進をを兼ねての礼拝は、街に訪れるたびに行っていることではあった。
ノーシス教が主神と仰ぐ神の神殿への礼拝と喜捨を終えたところで少し時間がある。

穏やかそうな神官と言葉を交わしながら、街の近況を伺っていると懺悔室の利用を勧められた。
悩みがある、というわけではないため最初は断っていたのだが───熱心な勧めにもあって一度だけ、と順番の札を取る。

「悩み、か───」

困ったような嘯きは、己の歩いてきた道が決してきれいなものではないことを自覚しているが故の言葉だ。
誰に告げるつもりもないし、ひっそりと胸にしまっておく類のもの。それらに思いをはせて神と席に腰かけて順番を待っている。
穏やかそうな人たちの礼拝を眺め、壮麗な彫刻の一つ一つを眺めながら徒然に思いをはせて、けれど己の番号を読み上げる声に意識を戻すと立ち上がり、小さな懺悔室の扉をくぐる。

仕切られた壁の向こうにある人の気配を感じながら頭を下げて。

「失礼いたします──……あまり悩みらしい悩みはないのですが、それでもよろしいでしょうか?」

とりあえずはそんな差しさわりのない言葉を投げかけながら、小さな室内に物珍しそうに視線を投げかけて。

ジェド > 「――ようこそいらっしゃいました、悩める子羊よ。私はこの教会の司祭、ジェドと申します。どうぞ、ささやかな悩みでも構いません。神は隣人に慈悲の手を差し伸べよと教えを説いております。ならば、矮小な人間の身に過ぎぬからこそ、ほんの些細なものでもいい。悩みがあるなら聞き入れ、救えるならば救うべきだと考えております。悩みの大小は問題ではないのですよ?……さあ、どうぞ遠慮なく告白なさい。此処はその為の場所。明日へと歩む足に纏わりついた悩みという名の重石を少しでも軽くする事が目的なのですから。」

一見すれば誰も彼もが善良なる聖職者ばかりだ。信者もそうだが、皆信仰、宗教という絶対的な価値観があるからこそ日々の営みを送れると信じているかのように穏やかな者が大半である。
だが、この都市の裏の顔はそんな綺麗なものでは、清浄なものではない。過去にその悪事、欺瞞のヴェールに包まれた真実を暴こうとした者が何人もこの都市の闇に葬られてきた。
失踪者も少なくないが、そういう者は消えても誰も気に留めない身寄りがない者であったり旅人であったりが多い。

そして、この教会の司祭はその暗部に深く関わる最たる例の一人であった。

神官にも利益を分配され、お零れに預かる為に従う者が多く、見るからに異郷よりの来訪者。
旅人であり、あまりこの国では見かけないエキゾチックな美貌と魅力の持ち主の旅人であると確認すれば事前に司祭へと上玉が来たと報告。

呼び出す前に、一人前の懺悔に訪れ凌辱された信者との性行為の痕跡を神官に清掃させてから香を焚き直し、それから彼女が呼び出される。

顔の見えない仕切りの向こう――とはいえ、此方からは問題なく見える特殊な細工をしており、これにより好みの女かどうか等見定めているのだが―から新たに何も知らず入室してきた旅人を見ては、とん、とんと机を指で小突く。

それは合図。

『犯した後に飼うから拉致監禁する準備はしておけ』という合図だ。

そんな醜い欲望は一切表に出さず、声だけ聴けばそれこそ万人の父であるかの如き慈悲深い落ち着いた柔らかな声音と耳障りの良い全く心にもない言葉を選んで旅人に悩みを打ち明けるようにと囁く。

無論それは相手の悩み、抱える闇を聞き出し、答える事で信頼させる意味もあるが無臭の媚薬の香を相手がたっぷり吸い込み体を蝕む時間稼ぎでもあり。

シシィ > 聴こえてくるのは落ち着いた壮年の男性の声音。
祭文の型通りの様な言葉だろうが、それでもこの言葉に救われるものはいるのだろう。己がどうなるかはやはりわからない。判じかねるような表情を浮かべたまま、旅装の襟元をわずかに緩めて用意されている椅子に腰かけた。

「ありがとうございます。この街は───私のような異邦のモノにも門戸を開いてくれます故とても助かりますね……悩み、悩みか───」

さて、どう言葉を選ぼう。己が見定められていることにはまだ気づいてはいない。というよりは、この都市のからくりを知っているものでもなければ容易には気づけないだろう。
それを知るには己は外様で──。

また、己が訪れる直前までこの部屋でなされていたことには気づけない。香りのない媚香、残されていた痕跡はすでに清められた後であれば、それも当然で。
司祭の問いかけに思案するように頤に指を絡め、目を伏せる。
この居室に滞在すればするほど毒が回るという事実にもまだ気づかない。
あ、と思い出したように顔を上げて。

「申し訳ありません、司祭様、私としたことが…。私の名はシシィ、小さく商いなどをしております。この街には訪れたばかりで──、そうですね、この街で知り合いを作る方法など教えていただければ嬉しいですね」

当たり障りのない言葉。胸に秘めた過去も秘密も、そう簡単に女は口にすることはない。
朗らかな声音は、そんな闇を抱えているようにも見えないだろう。
緩く足を組んで指を解くと軽く首を傾ける。

清冽すぎるほどに整ったこの都市の暗部がすぐそこで蠢いていることに気づかずに今はただ言葉を重ね──。
まさかあの人のよさそうな神官でさえ、彼の手足だったのだと気づきもないまま、蜘蛛の巣の横糸に足を載せた、そんな風情にも彼らには見えているのだろう。

ジェド > 「無論。我らが神は愛深き御心の持ち主。であれば、たとえ信じる神が違えども、異邦の民であろうとも、神の慈悲を賜る為訪れた者をどうして拒みましょうか?――初めまして、シシィ。成る程、商人でしたか。そうですね、この都市の民は皆心穏やかで優しい民ばかりです。その優しさ、清き心に私が逆に助かる事がある程です。はは、いやはや、未熟な司祭だと痛感する反面、より皆の為、神の為精進せねばと思いますよ。……知り合いを作るのは難しくありません。畏れる事なく、貴方が一歩歩みより、声をかければ皆快く応じる事でしょう。知り合いを作れるかどうか、そのような悩み、壁を作るのはシシィ、貴方の心なのです。そしてそれは迷いという名の壁。貴方自身が壊す資格を与えられているのですよ。ですが、それでも迷うなら私の名を使いなさい。これでも自画自賛となりお恥ずかしいですが一応一定の評価を得ていると自負しております故。」

神聖都市の闇は深い。

そしてその闇は正しく蜘蛛糸、複雑に、巧妙に隠されて秘されたものであり、表向きは神々しい偽りの光によって眩まされているのだ。

旅人の彼女が言葉を選び、初対面の己に本心を打ち明けないのは自然であろう。

この司祭の悪質なところは、善良に生きていれば本当に聖人になりえるだけの才能を持ち合わせ、豊富な経験を積んでいる事だ。

何千何万という人々の悩みを聞き入れ、その多くを私欲の為に肥やしとした下衆な男は如何にも腰の低い、司祭という地位にありながら民と対等な目線で親しく触れあっているという如何にも善人のそれを仄めかしながら相手が当たり障りのない悩みを打ち明けてくれば小馬鹿にすることもなく真剣に聞き入り、答えるのだ。

そして、朗らかな落ち着いた声音からも、悩みをどう打ち明けるかの一瞬の沈黙ではなく何を話すかの逡巡であったとも百戦錬磨の司祭は見抜いていた。それは仕切り超しに一方的にだが相手の表情、仕草から心理を読み取ったというのもある。

その間にも相手の旅服の下に秘された肢体に、媚香が肌から、肺より内から浸透し火照りを与え始めるであろう。少しずつ、少しずつ。

蜘蛛糸で搦めとり、身動きを封じるように。

旅人はこの神聖都市という魔窟に入り込んだ時点でもうこうなる宿命であったのかもしれない。

権力を盾に、欲望を糧に私腹を肥やす悪しき司祭の魔の手は神聖都市全域どころか王国、魔族にさえも伸びているのだから、仮に此処を逃げ出して真実を告げるべく助けを誰かに求めても救われはしないのだ。

数分もすれば、相手の体は次第に熱が篭り、思考力が鈍くなっていく事であろう――

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からジェドさんが去りました。
シシィ > 「……ええ、そうですね。礼拝に訪れた私に神官様はこうして懺悔室の利用を勧めてくださいましたし、ここを訪れる方の表情もとても柔らかで、宗教と寄り添っている街だと──」

ふ、と意識が途絶えたようにも感じる眩暈。不自然に言葉が途切れ、こめかみに指を添える。一度視線を伏せて、めまいが収まるのを待つ。慣れない環境にいるせいだろうか?なんて考えながらもその原因に気づけるわけはないだろう。香りのない香のほかにも、むろんミルラ等の香は炊き込められている。匂いに敏感なものならば其方に意識がとられるだろうし、わかりやすいものに原因を求めるのは人の常だ。

己もまたそれに一応の答えは求めるものの、しっくりは来ない。
密室の中にいる、というのもよくはないのだろうと、窓のない室内に改めて視線を向け、僅かに息をついた。

「……すみません。ええと、話しを続けますね?衛兵の方もまずはここを訪れることを勧めてくださいましたし…ジェド様の名前を──?なるほど、街の皆様に信頼されているのですね」

穏やかに言い含める言葉、これがほかの街であれば、ほかの場所であれば、鼻につきもするのだろう。でもこの場所故の効果か、あるいは彼の穏やかな口調と、雰囲気がまたそれを納得させる。

そうして言葉を重ね、時間を重ねた頃合い、焚き込められた香の効果で旅人の意識は途絶える。
その後何があったのかを語るものは、いない。

後ろ盾のない旅人の足取りが消えることなど、この神聖都市であっても珍しいことではなく、その光が強ければ強い程、巣食う闇もまた深く。

旅人はその闇の淵を覗くことになるのだろう──

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からシシィさんが去りました。