2018/10/02 のログ
■ミュレス > (大勢の聖職者達が、白亜の階段に視線を注いでいた。幾十もの瞳が、金色の炎を宿した審問官と、立ち回りを誤った司祭を見つめている。侮蔑、嫌悪、そして恐怖がそこにあった)
あなたは形振り構わなかった。全てに背を向けて栄達を求めた。権力を得る為、人々からの敬意を勝ち得る為、ただひたすらに……上り詰めて……
(微笑んだ審問官が階段を一歩降りる。顔を強張らせた司祭もまた同じ。一歩、一歩と神聖都市ヤルダバオートの中心を貫く階段を下っていく。5歩下って、司祭が叫んだ。「穢れているのが私だけだと言うのか!この街に、清らかな者が住んでいるというのか!」それは、もはや悲鳴だった)
■ミュレス > 上り詰めたその後は……
(審問官が言葉を切った。腕に宿した炎が膨張し、火球となって司祭を打つ。金色の松明が白昼の都市を照らす。悲鳴を上げ、慈悲を乞い、異形の審問官を呪い、ついには足を滑らせた)
後は、墜ちるだけ。
(全身火達磨になった司祭が階段を下っていく。煮えた血を滴らせ、歯の折れた口で何もかもを罵り、自身を産み落とした母に救いを求め、最後に右腕を伸ばす。その先に聳え立つ権力の中枢、ヤルダバオートの大神殿はしかし、余りにも遠かった)
■ミュレス > (生きながら燃え、転げ落ちて行った司祭を見る女の目には、いささかの動揺も認められなかった。『改心』させた女達を振り返る)
彼の宝物庫へ、案内して頂けますか?
(そう、この審問官とて正義に駆られた訳では無い。『出る杭』となりつつあった司祭を打つべしという考えはノーシス教団の上層部に広く浸透しつつあったのだ。彼と同じく栄達を望む者達への牽制という意味合いもあった。そしてこの女もまた、司祭の終わりによって得るものがあった)
腐敗した同胞以上に、邪教信仰は見逃せません。
(異端審問官の狙いは、司祭がミレー族に対する迫害の中で手に入れた祭具、教典にあった。過去の神、創造神に関する情報、そしてかの神とその教えを虐げたナルラート王朝の足取りを知る手がかりを、彼女は求めていたのである)
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からミュレスさんが去りました。