2018/08/10 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 臨時医療施設」にディールさんが現れました。
■ディール > 神餐節も終盤に掛かる頃合。
記憶を一時的に消去する為の違法な香や、食事、水に混ぜる媚薬。
或いは浴室に設置されたソープや石鹸、シャンプー等に混ぜて正気を喪わせる媚香や魔の香、薬等全体的に不足し始めていた。
本来の目的は治療の筈が、完全に裏の顔である神餐節を利用し、喜捨や寄付といった目的を得る為の手段の一つとして医療が利用される現状。
こういった穢れ作業には慣れている。
金持ちなのだろう王族や貴族には安値でそういった薬を卸し、修道女を抱かせヤルダバオートは莫大な寄付を得る。
そして得た寄付と引換えに『協力者』としてコネクションを得る。
媚薬等や媚香については後の後遺症を考えなければ安く作れる物だ。
「兎に角一晩限りを楽しむ」目的なら粗悪品で十分。
上質な物を望むなら自分の魔力も用いた特殊な薬を使えばいい。
元手を必要とせず貴族や王族、或いは宗教関連の各方面に顔と名前と恩を売る良い契機にはなっている。
「……次の依頼人が来るまで暇か。」
依頼人か患者かは兎も角。漸く一息つける。
長煙管に違法な薬物を詰め込み、火をつけて一息。
煙草と異なり周囲には濃密な甘さの霧を撒き散らすだけ。無害、無毒とはいわないが決して嫌な臭いではないだろう。
■ディール > 背伸びを一つ行なう。同時に室内もぐるりと見回す――。
宗教とはとかく儲かる物でもあるようだ。施設自体は見た目こそ質素だが。
中で何が行なわれていようと外には伝わらない様に様々な仕掛けや仕組みが施されている。
例えば壁。見た目はただ薄っぺらい白い壁紙を貼り付けただけの煉瓦を組み上げ、その周囲を板で囲った薄い壁。
逆にその薄い壁が、中で非合法的な行為が行われても大声を出せば助けが来るだろうと言う甘い認識を誘う。
実際には煉瓦にも、板にも。『防音』ではなく『吸音』の淫紋とは系統の違う刻印が施され、どんな大声を上げようと決して外には届かない。
魔力が発揮されるのは声や物音が発生した時、その紋に触れた時になるので中々そうとは気がつき難い。
隣には自分とは違う真っ当な医者が待機している筈だが、更にその隣には修道女目当てで依頼を引き受けた己の同類もいる。
外にいる受付員が、真っ当な医者に振るか己の様な存在に振る依頼人か、患者か。供物かを見定め振り分ける。
だから基本、己は他者が来るまでやる事もない。
粗末な机の上にある硝子細工の灰皿に長煙管を立てかけると背中を再度伸ばし、そして左右にねじるなどの動きも加えていた。
序盤のラッシュに比べれば今は落ち着いた時間でもある。
■ディール > 修道女の記憶を消す、或いは封じる為の小道具も今なら自分で作成が出来る。
指先に浮かばせる毒々しい紫色の輝きで近くに備え付けられていた白い紙に刻印を施す。
指先から離れた紫の光点は紙の上に勝手に刻印を描き、描き終えた後で紙は縮小していく。
刻印自体は天使を思わせる翼をモチーフに内面に呪詛文字を書き連ねた物。
其の侭では外に呪詛が漏れ出てしまう為、描き終えられた紙は最終的に折りたたまれ、表面を魔力でコーティングされた御神籤の様な形状になっていく。
所有者を設定してしまえば、所有者の意の侭に相手の記憶をその紙に封じ込める事が可能になる物。
「――修道女として記憶を保有されたままでは困る。故に記憶を封じ込め、元の神聖都市としての表の顔を取り繕う、か。
ふん、面倒な事だ。」
実際記憶封印のほうが媚薬や媚香より需要はあった。
一度に購入されていく数は莫大な――貴族としての遊びに使う限度を超えた物が多い。
誰が購入したのかは兎に角、目的自体は明白とも言える。――心の傷を背負い、表情を暗くした修道女のいる神聖都市に等誰が信仰心を向けるというのか。
■ディール > 昼休憩の時間。合図を知らせる鐘が鳴り響く。
――漸く休憩だ。椅子から離れ、扉の外には時間外の札を下げる。
備え付けられているベッドに戻ると横たわり、瞼を閉じて意識を闇に闇に――其処のない深淵に鎮めていく。
一時の休息を得て――また活動するのは何時になることか。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 臨時医療施設」からディールさんが去りました。