2018/06/17 のログ
ティルニア > 聖母像の前の影は後ろ姿でも小さく見えていたけれど、
自分とあまり変わらない体格の少女と知って少し驚く。
こちらへ歩いてくる彼女に慌ててぺこりと頭を下げて、愛想よく笑いかけた。
すぐには追い返されそうにない雰囲気だったから、おそるおそる一歩踏み込む。

「こんばんは。……えっと…お祈りしたくて…」

修道服を身にまとった少女は、こちらとあまり変わらない年頃に見える。
しかし自分とは真逆の落ち着いた雰囲気に、つられて背筋が伸びていた。

「…ほんとは違う教会に行くつもりやったんけど…迷っちゃって。
 ごめんなさい、こんな夜遅くに…」

こんな夜更けに訪問した理由を話すのは、なかなか恥ずかしいものだった。
頬を掻きながら説明して、お祈りをしていっていいかと少女の表情を窺う。

フローリア > 近づいてみれば、声の通りに小柄な人影。
暗がりで姿だけでは男の子にも間違えてしまったかもしれない。
けれども仄かな明かりに照らし出された容貌は、可愛らしい女の子のもの。

「こんな時間から、ありがとうございます。
 どうぞ、こちらへ。」

人懐こそうな笑みを浮かべた少女は、自分とそうは変わらない年頃だろうか。
お祈りをしたいということならば断る理由など何処にもないわけで。
先程自分がいた場所を手で指し示すと、先導するように足を向けた。

「あら、そうだったんですね。時間は気にされなくて結構ですよ。
 これも神の御導きなのでしょう。あとでお送りしましょう。」

こんな時間にやってきた理由が明らかになると、微笑みを浮かべて少女を振り返る。
街の中心から外れたこんな場所まで迷い歩いたと言うなら、大変だっただろう。

ティルニア > 返事を待つ間はそわそわしっぱなしだった。
さすがに夜遅すぎるなんて言われたら、食い下がるわけにもいかない。
迷子になっただけで、また迷いながら宿までの道を探すはめになってしまう。

「あ、…ありがとっ……!」

不安が解消されて発した感謝は時間にあわない大きな声になってしまった。
とっさに両手で口を塞いで、今度は感謝を示すために笑いかけて、
少女が先に歩き始めると扉を閉めて後に続く。

「えっ。や、そんなのは、さすがに悪いからっ。
 …帰り道…教えてもらえるだけで助かるよ。そしたらちゃんと帰れるし…多分」

親切に迎え入れてくれただけでなく、帰りの付き添いまでしてくれると言い出す少女。
さすがに申し訳なくて首をぶんぶん振りながら、しかし道は教えてほしいと素直に頼む。

聖母像の前まで歩く間、好奇心旺盛に教会の中を見回していた。
時々少女にも視線を向けて
清らかという言葉がそのまま修道服を纏ったような姿に、つい見惚れる時間もあって。

フローリア > 元気な声で感謝を述べられると、微笑ましくてくすっと笑ってしまう。
響いた声に慌てて口を塞ぐ仕草は、同じ女の子としても可愛らしく見え。
それは聖職者というよりは、年頃の少女らしい素の表情で。

「王都の方に比べればこちらは治安は良いですけれど、それでもこの時間です。
 大丈夫ですよ。私も夜のお散歩に出るついでですから。」

表通りを歩いている分には、そうは危ない目に遭うことはないだろう。
けれど聖都とは言え、裏通りに入ってしまうと安全は保障できない。
勢いよく首を横に振る少女を、ついでだからと楽しげに笑う。
神の御前で嘘を吐いたわけではない。
つい、今さっきそう予定を決めただけのこと。

さほど大きくもない礼拝堂は、小綺麗ではあるもののやはり歴史は感じさせる。
幸い薄暗い明かりのおかげで老朽化の痕は見えないだろうけれど、
興味深そうに見渡す少女の好奇心を満たせるかどうかは不安が残るところ。
こちらを見つめる視線に、少し首を傾げて見せてから。

「どうぞ、こちらで祈りを捧げてください。」

そう告げると、数歩後ろへと下がる。
そして両手を組むと瞳を閉じて。

ティルニア > 小さな笑い声が聞こえて、眉を照れくさそうに斜めに垂れた。
大きな声を出してごめんなさいという謝罪は少し頭を下げるだけに留める。
深呼吸をして落ち着きを取り戻し、口を塞いだ手を下ろす。

「王都の方は、怖そな人が多かったもんねぇ。
 じゃあ……うん、一緒にお願いします」

ずっと田舎の方から旅してきたから、大きな都市の雰囲気に驚く機会も多い。
夜は気をつけようと自分にも言い聞かせるみたいに、うんうんと首を縦に振る。
自分よりも土地勘がありそうな彼女の言葉には素直に甘えておこうと決めた。
楽しげに笑う少女ともっと話してみたいという考えの方が主だったかもしれないけれど。

「……ここ、ええね。何か…故郷のこと、ちょっとだけ思い出すっていうか。
 うちのとこの教会はもっと小さかったし…こんなにしっかりしてなかったけど」

故郷の教会はただ古いだけという雰囲気だったけれど、
歴史を重ねたこの教会にいると懐かしい気持ちにさせられる。
顔を綻ばせて、小さな声でひそひそと話し
聖母像の前までやってくると床の上に膝をつく。
両手を組んで祈りを捧げる間、
修行がうまくいくように、商売繁盛、なんていう現金な言葉も混ざったけれど、
真面目な顔で、故郷の人たちが元気にいるように、神のご加護があるように祈る。

「ふー……っ」

ひとしきり祈り終えて、深く息を吐いて緊張を解く。
立ち上がると少女を振り返り、終わったよと笑いかけた。。

フローリア > 土地勘がないようだから旅人だとは思っていたけれど。
どうやら少女は王都の方にも行ったことはあるらしい。
少女から聞く旅のお話は面白そうだと感じる。
瞳を閉じて、捧げる祈りは少女の道行きに対するもの。
そして偶然であったかもしれないけれど、この出会いへの感謝を捧げ。

「気に入っていただけたなら嬉しいです。
 きっと素敵な教会だったんですね。大事なのは大きさじゃありませんから。
 申し遅れました。フローリアと申します。
 少しの間ですけれど、お散歩にお付き合いくださいね。」

遠く離れた地で、故郷の教会を思い出せるということは、
普段から通っていたということだろう。
それも嫌々通っていたのでは、そんな風に語られることもないはず。

振り返った少女が何を祈ったのかまでは分からないけれど、
まっすぐな少女の祈りが神に届くことを願う。
少し遅れた挨拶を口にすると、行きましょうかと出口を指し示し。

ティルニア > 「うーん。村の子たちと遊んだり、勉強したりするとこだったから
 集会所…みたいな感じにもなってたけど」

故郷の教会を認めてもらえると分かりやすく声が弾む。
敬虔な信徒とは言えないけれど、教会は思い出深い場所だったから。
純粋な信仰の場ではなかったから、そこをどう思われるか少し不安もあったけれど。

「あっ。…うちは、ティルニア。よろしくね、フローリアっ…
 ……うん、じゃ、行こっ」

話していると、また声が大きくなり始めてしまった。
片手で口を押さえながら自己紹介をして、大きく頷く。
礼拝堂にいる間くらい神妙にしていようと気を引き締めなおしたところだったけれど、
促されて出口に向かう足は少し浮ついた動きになっていたかもしれない――

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からティルニアさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からフローリアさんが去りました。