2017/11/26 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にマヌエラさんが現れました。
マヌエラ > 微かに聞こえていた音たち。男たちの下卑た歓声。その一部は、アザレアを追う男の怒声。その合間に混ざる、犯される修道女たちの悲鳴じみた嬌声。
いくら耳を塞いでも指の合間からもれ聞こえるそれらの音が。
いつからか、小さくなり、そして変質を見せていた。

呻き。犯されるだけでなく、暴力にさらされているような恐怖に引きつった呻き。しかもそれは、男も女も、同じ声を出しているのだった。

「ねぇねぇ、まだいるの?いるよね?」

その中で響いた、意味のある言葉。それは、アザレア以下の幼い少女のもの。
ぺたり、ぺたり、と小さな足音が近づいてくる。

「仲間はずれにしてるわけじゃないよ。かくれんぼしてるから気づかなかったの」

歌うように、微笑む幼い声が近づく。

アザレア > 悲鳴―――どれだけ必死に目を瞑り、耳を塞いでも、完全に排除することは出来ない。
けれどそれが、いつの間にか小さく、低く―――そう、ひくく。

女たち、だけのものにしては、あまりにも低過ぎる声が。
いつしか混じり始めていたことに気づいたのは、そのなかで、
何故か、塞いだ掌の奥へ、鼓膜へ、年端も行かぬ童女の声が響いた瞬間。

「―――― だ、」

誰―――と、思わず洩らしかけた声を危うく噛み殺す。
だって絶対に普通ではない、耳を塞いでいるのに、こんなにはっきりと。
それも、小さな女の子の声なのに―――聞いているだけで、背筋が寒くなる。

ぺたり、ぺたり―――近づいてくる素足と思しき足音を背後に、
耳を塞いでいた両手で、悲鳴を上げたがる口許をぐっと押さえる。
気づかないで、お願い、それ以上近づかないで―――。
先刻までよりもずっと切実な願いは、けれどきっと叶えられない。
祭壇の陰から、長い修道衣の裾が、僅かではあるけれど見えているのだし。

マヌエラ > 「ねえ、おねえちゃん。どこぉ……」

問いかけの声。足音が止まる。距離ははかりかねるだろう。うめき声が邪魔だ。
沈黙が支配する。いや。うめき声だけが満ちている。少女の気配が消え――

「ねえ!!」

突然、気配もなかった眼前から、アザレアの頭を小さな両手が挟んでぐいっと上を見上げさせた。
そこには、顔の半分が自分自身の金糸で隠れてしまっている幼い少女の顔がある。にっこりと笑い――

「みぃつけた、おねえちゃん」

その背後に展開されているのは、礼拝堂を埋め尽くすように広がった触手の群れが。
男も女も問わずに穴に入り込み犯している、より賛美を極めた光景だった。

アザレア > 見つかってはいけない、勿論、声に答えてはいけない。
頑なに、得体の知れないモノに対する本能めいた恐怖に支配されるまま、
身を強張らせていた娘の頭の左右へ、不意に小さな掌の感触。
その小ささからすれば信じられないほどの強い力で引き起こされ、
彼女、と目が合ってしまった。

「っ、――――― ひ、ぃ……っ………!!」

あどけない、可愛らしい少女の顔だ。笑顔もとても愛らしい―――けれど、
彼女の背後に広がるものを、娘の瞳は同時に認識してしまっていた。

化け物―――うねうねと、ぐにぐにと、所狭しとひしめき合う異形の群れ。
それらが、娘たちだけでなく、男たちさえも凌辱の標的にしている、
悍ましい光景を見せつけられて―――とうとう、高く掠れた悲鳴が零れ出す。
ぎこちなく頭を振りながら、さして深くもない祭壇の奥へ隠れようと、
じりじりとお尻で後ずさり―――

「や、……ぃや、な、に、いや、いやあああ、っ……!!
こ、な……ぃで、たすけて、許して………!!」

マヌエラ > 「もちろん、許すよ、助けるよ」

歌うように楽しげに。ただの足音に怯える子猫に愚かしいかわいらしさを見るときの人間のように。

「だって、おねえちゃん、悪いことしていないでしょう?」

鈴の音が鳴るような笑い声。

「だからぁ、大丈夫だよ、おねえちゃん・・・・・・」

祭壇の反対側から、いないいないばあをしていたかのように、大量の触手がなだれ込み、アザレアの四肢を絡め取ろうと迫る。

アザレア > 許す、と、助ける、と言ってくれるけれど、その表情は相変わらず可愛らしいけれど、
―――頭の中に鳴り響く警鐘は、どうしても止まない。
悪いことしてないでしょう、と問われれば、かくかくと機械的に頷くも。

大丈夫、なんて言葉を真正面から裏切るように、右から、左から、頭上から、
幾つもの触手が押し寄せてきて、呆気無く四肢を絡めとられてしまう。

「ひ、っや、ぃ゛やああっ、あ、あ゛……!
やめ、ほ、ど…いて、いやっ、いやあ、助けて、いやあああっ……!!」

ずるずると祭壇の陰から引き摺り出されながら、必死に身をくねらせて泣き叫ぶ。
だって、そこかしこで同じ修道衣姿の娘たちが、そして男たちまでが、あらゆる孔を犯されているのだ。
大丈夫だなんて、信じられないに決まっている。
怯え切った眼差しが、彼女の稚い笑顔へ縋るように向けられて。

マヌエラ > 「つかまえたーっ。だいじょうぶ、だいじょうぶ。さわがなくてもだいじょうぶ」

ずるずると引きずり出したアザレアを、触手たちは神輿のように掲げて中央へ運ぶ。

「あのね、おねえちゃん、とってもかわいかったから、もっともっと気持ちよくしてあげたいの」

恥らうような笑みとともに告げる言葉は、過去形で。つまりこの触手の持ち主は、過去に彼女とであったことがあるということで。

「あの時、わたしにこたえて、お胸をおっきくしてくれたの、とってもうれしかったんだぁ」

にっこりと、笑った。

アザレア > 「や―――――っあぁ、やだ、やめてぇ、っ……!」

引き摺り出されて、担ぎあげられて、ばたつく四肢はむなしく宙を掻く。
恐怖にかられた悲鳴と、苦しげな呻き声と、蠢く異形の這いずる音が満ちるなかで、
―――――彼女の言葉が、娘の小さな頭に宿った記憶を擽る。

「ぇ、―――― ぁ、……あ、あ……、」

思い出した。
身体のありとあらゆるところを弄られ、嬲られ、犯され尽くした、
あの、悍ましくも艶めかしいひと時の記憶が。
目の前に居るのは、確かに幼い少女だけれど―――それでは。

「……… マ、ヌエ…ラ、……さ……ん………?」

まさか、そんな。
恐る恐る呼んだその名が、正しく彼女のものだとしたら、
―――返事を待つ僅かな間にも、ずきん、ずきん、身体の芯が甘く疼き始める。

マヌエラ > 「おぼえててくれたんだね!」

うれしそうに、うれしそうに、声は響いた。

「マヌエラ、だよ、おねえちゃん……! すがたは違うけど、また会えたの、とってもうれしい!」

アザレア > ―――――間違いなく、彼女だ。

嬉しそうに笑う、あどけない童女の姿をした、けれどこのひとは。

その瞬間に、娘は悟ることになる。
あの日と同じ、あるいはそれ以上の狂宴が、じぶんを待つ未来であるということ、を。

夜は、まだ始まったばかり。
娘の意識が途絶えるまで、あるいは、彼女がこの夜を存分に堪能するまで。
まだ、暫しの時がかかるもの、と―――――。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からアザレアさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からマヌエラさんが去りました。