2017/11/22 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 聖堂」にツァリエルさんが現れました。
ツァリエル > 段々と日照時間が短くなる冬の午後、ツァリエルは一人聖堂にて祈りを捧げていた。
修道士時代から続けてきた祈りの習慣は王族になった今も続けている。

迷いが多いとき、悩みがあるとき、一人で静かに祈っていると
解決策はなくとも心がいくばくか落ち着くものなのだ。
直近で起こったことと言えば、また一人心強い味方を得られたことだった。
彼らの協力にいつか必ず報いなければならない。
そのために自分は何をすべきか、少し頭の中を整理したかった。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 聖堂」にワルセイ・イダーヤさんが現れました。
ワルセイ・イダーヤ > (冬の午後の時間、静かな聖堂に、硬い靴が鳴らす靴音が響いて…)
……ふ、何故、俺はここに足を運ぶのだろうなぁ…
(そう呟いた男。この男は神が嫌いである。しかし、神の存在は信じていて。
悩んだとき、どうしようもなく空しくなった時に、無意識にこの聖堂に足を運ぶ
今日も、妹をよみがえらせるための研究が行き詰まり、悩み、虚しさに身を焦がしていた。
そして、気が付けばこの聖堂にいたのだ。)
……まあ、せっかく来たのだ。貴様に、祈ってやろう…
(そう神を貴様と呼んだ男は、神に祈ろうとして…ふと、一人の少年に気が付いて)
……む、すまんな。そなたの祈りの時間を邪魔してしまったか?
(そう聞けば、少年の隣へときて…)
……何ゆえ、そなたは祈っているのだ?
(そう、ふと思ったことを呟いて…)
ああ、名乗りもせずにすまんな。俺はワルセイという。旧時代の遺物さ…そなたは?
(そう自嘲しつつ、名前を聞いて…)

ツァリエル > 突如現れた黒い貴族服の男に、わずかに驚くものの
気を悪くした様子はなく首を振って

「いえ、邪魔などと。聖堂は誰にでも開かれているものです」

そう言ってにっこりと相手に微笑んだ。
この人もまた神に救いの手を求めて来たのだろうか。
大人にも祈るべき悩みがあるのだな、とひっそりと思う。
ワルセイ、と名乗った相手に問いかけられてやや物憂げに瞼を伏せる。

「……この国の未来を案じておりました。
 おかしいですよね、僕のような力が何もないものが祈っても仕方がないことなのに。
 申し遅れました、僕はツァリエルです。ワルセイ様」

そう静かに名乗った。

ワルセイ・イダーヤ > ツァリエルか。まあ、よろしく頼む。
(ツァリエルと名乗った修道士風の少年。その微笑みを見て)
なかなかいい顔で笑むな。何というか…そなたの優しさがにじみ出ている。だが…儚いな。
(そう言って。そして、物憂げな表情と、その後に続いた言葉に)
ふむ……国の未来を案じるか…
(そう呟き、少し悩めば)
俺が思うに、未来とは、今の積み重ねだ。
俺はそなたのことは知らない。そなたが今までやってきたことも、何もな。
国は、優しさでは動かん。
国は、思いでは動かん。
国は、考えるだけでは動かん…
だが、この三つが無ければ、国は、ダメになるだろう。
悩む暇があったら行動しろという者もいるが…
そなたは、未来を案じ、悩むという今を積み重ねている…
まだ、そなたは幼い。行動しようにも、できぬことが多いだろう。
なら、今憂い、思う事を積み重ね、未来の自分につなげろ。
未来の自分が。力をつけた自分が、同じ思いを持つようにな…
(そう言いきり、ふと恥ずかしそうに…)
ふ、老人のたわごとだ…聞き流してくれて構わんよ…

ツァリエル > 「未来の自分に、つなげる……」

ワルセイが諭した言葉を染み込ませるように繰り返す。
彼のすべての言葉をいま一瞬で理解できたわけではないが
それでも自分よりも年かさの相手の言葉には重みと優しさが篭っていた。

「……ありがとうございます、ワルセイ様。
 これから先の自分がそうできるかどうかはわかりませんが
 それでもこの祈りが無駄ではないようにしたいと思います」

そうして再び、感謝の意を込めて瞼を伏せた。

「……ワルセイ様は、どうしてこちらに?
 なにゆえ祈られに来たか、お尋ねしても?」

単純な興味と、少々不躾だろうかという不安もあったが
じっと相手の瞳を見つめて尋ねてみる。

ワルセイ・イダーヤ > ……ふ、老人のつまらぬ話だが…
(そうふっと苦笑すれば)
俺には妹がいる。とても器量が良く、優しかった妹が…
だが…病魔に侵されていてな、何とか治してやりたいのだが…
そのために、長く、長く研究を続けている。
(そこで、少し悲しそうに…)
だがなぁ…ふと疑問に思うのだよ。ここまでしても、妹の病魔は治る気配はない。
もう、何十年と研究し続けてだ…
自らの体を改造し、何とか生き続けてはいるが…いつかは、死ぬだろう。
その前に、妹を…何とか…
(そこでせき込み、男は慌てて懐から乳白液の入った小瓶を取り出し、飲んで…)
……見苦しいところを見せたな。ともかく…俺が祈りに来た理由…それは。
……それは、もしかしたら、妹の未来を…妹が元気に歩き回れる未来を…
生きているうちに、見せてほしいと、願いに来たのかも…
……ふ、俺も、未来については不安なのだよ。
(そう、自嘲的に笑って…)

ツァリエル > 「妹さんが……」

なんと気の毒な話だろうか。
何十年と治療にかかっている少女のことを想って同情し、
そしてそのために自らの身を顧みず犠牲にしてまで助けようとするワルセイに同情した。
祈りの内容を語る彼は確かに見目は若いものの、まるで老人のような気疲れがツァリエルには見えた。

そっと相手の手を両手で取ると、力づけるように握る。
思いを込めて、ツァリエルはワルセイに語りかける。

「きっと……きっと、いつか必ず妹さんの病気は良くなります。
 元気になってワルセイ様と一緒に毎日楽しく暮らせる日が……。
 神は自ら助くるものを助けます、きっと貴方の研究もうまくいきます。
 大丈夫、信じて祈りましょう……僕も同じ祈りを捧げます」

もしも本当に神がいて、それでなおこの兄妹へ救いの手を差し伸べないのなら
それはあまりに酷い仕打ちではないか。
そう思うとツァリエルは居てもたっても居られずつい、励ましなどを口にしてしまうのだ。

ワルセイ・イダーヤ > (手を握られ、相手からの温かい励ましの言葉……それは、老人の心に染み渡たっていって……)
……ふ、そなたは……そなたは、優しいなぁ…
(そう言うと、しかめっ面は少し緩み、少年の頭を優しくなでて…)
ありがとう。ツァリエル。すまぬが、この老人の願いを聞いてくれるのなら…
いまだけは、俺の妹のことを祈ってくれ…神に、思いが届くように。
俺は神が嫌いだし、神も俺のことは嫌いだろう…だが、そなたのような優しく熱心な信者の願いなら…神も、無下にはしまい…
(そう言って、ワルセイは片膝を付き、手を組んで…神に、妹の復活を願って……
そして、しばらく静かな神への願いの時間が続くだろうか…
そして……)
では、な。ツァリエル。そなたの未来に、幸多からんことを願っている。
……そなたに、神の加護があらんことを…
(そう言って、手の甲にキスを落とし……講堂を去っていった…)

ツァリエル > 頭を撫でられたなど、いつぶりだろうか。
もう久しく撫でられた覚えがなく、それをワルセイにしてもらうのはこそばゆい感覚があった。

彼が片膝をつき、手を組むと同じように隣で手を組みかしづいて。

「僕が熱心な信徒かどうかはわかりませんが……
 でもきっと神はどんな祈りも無碍にはされませんよ」

そう言って、彼と彼の妹の未来の為に祈る。
自分が案じる未来の中に、彼らもまた含まれている。
今はまだ、何をなすべきかは見えてこないがそれでもこの国を憂うものとして
また王族の一人として、彼らの幸せを願う。

しばらくして祈りが済むと瞳を開きワルセイへ向き直る。
その手に口づけを受ければ突然のことに驚いて頬を赤らめた。
ドギマギしながら手を引き、だがさよならの挨拶とともに彼へ微笑んだ。

「ごきげんよう、ワルセイ様……
 ワルセイ様にも神のご加護があらんことを」

そうしてしばらくはまたひとりの時間が訪れる。
日が暮れるまでしばらく祈りを続けると、ツァリエルもまた聖堂を去っていった。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 聖堂」からワルセイ・イダーヤさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 聖堂」からツァリエルさんが去りました。