2017/02/04 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にシルヴィアさんが現れました。
シルヴィア > どれだけ忌み嫌っていても、血反吐を吐き尽くすまで嫌悪をしていても二重の意味で生まれた街は忘れ難く、その地に足を踏み入れる事を望まず、滅びを渇望しても魂に刻まれた束縛はその地に舞い戻る事を強制する。今宵はそんな不愉快な夜であり、肌を突き刺すような唾棄すべき神聖なる力に気は昂ぶり……それでも都市に堕ちる影から安らぎの香りを得ながら、少年は少女は一人秩序が保たれている表層の通りを歩いている。

「………ハァ………………………。」
物憂げな溜息は言葉の変わり怒りの行く末、死者の低い体温では湯気の一つにもならない大きな息を深く吐き出し、見えぬ鎖に縛られ都市に括りつけられた己の魂をかきむしりたい衝動に駆られながら、不定期に訪れる回帰に何とも言えない表情を長く垂れた前髪の合間から覗く唇で浮かべ、それでもその楔の力が弛む一夜を乗り越える為、なるべく暗夜の濃い場所を探して歩く。身体にも髪にも黒紫の陽炎は浮かばせず、なるべく人通りの少ない、人気の無い道を選んで進む姿は異質であれ死者の王の姿と違い、奇異の視線程度で済んでいる。これが殺意が篭ればきっと己の中の衝動も堪え切れない……が、奇異の視線であれば平気だと、何度も小さな声で呟きもして……。

ただボロボロの衣装に素足で歩く姿は浮浪者かそれとも何処からか逃げ出してきたか、そんな全うな姿には見えようも無い。ならば早く身を潜められる場所を探すしかなくて、思考も先程から衝動に堪えること、隠れられる場所を探すこと、苛立ちと悲しみと入り混じる複雑な感情を抑えようと、と……ぐるぐると目まぐるしく変わり、少しだけ頭に痛みすら感じていた。

シルヴィア > 足音も無く、呼吸音すらない、不死者だから呼吸すら必要ないし、僅かに浮いているから足音も無い、歌を歌いながら歩く程穏やかで楽しい気分などではなく、ただただ当て所なく歩く姿は矢張り奇異な様で、神聖都市と言う場所柄か心配そうに声をかける人もいたのだが、流石に口を開けば罵詈雑言の恨み言しか出そうに無い為、首を横に振り好意を断りつつ、足先は闇の濃いほうへと向っていく……。

「……アア、美しいね……人は優しさと言うモノを持ち合わせているんだねぇ……。」
静かに左手を胸元に添えて、口元には作った笑顔と取られてもしょうがないくらいに判りやすい笑みを浮かべると、静かに一言だけポツリと呟いた。
――が言葉は其処で終わらない終わらせない。

「……偽善かな?それとも浮浪者に施しでもすれば徳が得られ神に近づけると?それとも奉仕の喜びとやらで腹が膨れるとでも?…くだらないくだらないくだらない………。」
と、まるで不死者に堕ちる前の己を見ているようで吐き気も壊したくなる衝動も何もかもの負の感情が湧き上がり、堪えきれず足を止めると胸元にそえていた左手で拳を握り締め、見ず知らずの路地の壁にその拳をたたき付け、怒りも何もかもをぶつけて見せる。だが今の身体には破壊するだけの物理的な力など皆無、代わりに残ったのは僅かな負の気配と拳の形に僅かに崩落した痕だけだった……。