2016/11/11 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にアンブロシアさんが現れました。
アンブロシア >  
「神聖都市ヤルダバオート」
多くの聖職者達が生活する都市
表層だけ見れば治安のとても良い街なのだろう。
しかしその裏側は淫蕩と堕落が潜んでいるのか、街のあちらこちらに暗い影が落ちている。

――その証拠に今宵は1匹と表現して良いかは不明ではあるが、群れ集い一つの形を成している魔物が人に擬態して都市の中を徘徊していた。

本能か、そうあるべきかを知っているように光を避けるように聖なる力を避けるように街に出来た影を縫うように歩き、今も何処の建造物に向かう為の路地を一歩避けて存在する薄暗い路地を歩いている。

ずる……ずずず………ずる…………

何かを引きずるような重々しい音に混じる整備された路面とすれる布の音。
明らかにサイズに見合わないゆったりとした黒衣が地面に引きずられ、不自然な音を響かせている。

その黒衣はこの都市に滞在していた聖職者のモノか、時折魔物の傍を通る人影は一瞬だけチラと視線を向けるものの、直ぐに視線をそらし通り過ぎてしまう。

それでも何人かは黒衣の人影に挨拶するが、魔物は賢く、だぶついたローブの袖を左右に振り、極自然にしかし何処か人形の様にぎこちない動作のみで挨拶を返す。

都市に出来たほころび、その象徴ともいえる神聖都市に入り込んだ魔物。
今宵は不幸にも魔物と遭遇するものが出るか、それとも魔物を捕らえ引き渡すものがでるか……それはまだ不明である。

アンブロシア >  
神聖都市を警備する衛兵や騎士達が正常に仕事をしていれば、人に擬態する事が得意な魔物だとしてもそれを見破り排除する事は容易い筈だが、残念ながらその正義の眼は狭い路地まで届かず、薄汚れ曇った眼では擬態は見破れず、結果として魔物が存在している。

何時ぞやと変わらぬ千鳥足の如く不安定な歩み
右に左に揺らぎながらの足取りは重く緩やかで、見る者に不安を抱かせるが、それすらも見てみぬふりをする者達が多いか、適当に袖を振るだけで平気と判断して近づくものはいない。

ずるずる……ずる……ずずず……する……

灯りが存在するとはいえ薄暗い路地、魔物が着込んでいるのは黒衣であり聖職者が好んで着用するローブ。
それが魔物の擬態を更に巧妙にしているのだろう。

深くかぶり人であれば目元まで届いているフード、そこから覗くのは夜よりも濃い闇。
意識して覗けば闇の奥底で触手達が絡み合い、耳澄ませば粘り気ある水音がねちゃねちゃと小さく響いている。

しかし、誰も人影に興味を持つものはいない……

アンブロシア >  
欲望を叶える為の知恵は良く働くようで、人の姿に擬態しながらも手当たり次第暗がりに引きずり込んで喰らうようなマネは絶対にしない。
何故ならそれがリスク高い事を知っており、他の獲物を喰らう際にデメリットとなることを理解しているからだ。

だから人に擬態した魔物は真っ直ぐに左右にぐらりぐらりとブレながら道を歩き続け、幾つモノ建築物の入り口にも眼もくれず、偶然に美味しそうな獲物が引っかかるまで歩き続ける。

ずるずる……ずず……ずずずず……ずるずる……

夜の帳が落ち眠りにつく聖職者も多いであろう時間、それでも何処からか魔物が好物としている音色も魔物の鋭敏な聴覚には響いてくる。
しかし、「それ」ではダメなのだ。
それは既に誰かの下で鳴いていて、誰かに占有されているという証拠でもあるのだ。
それに他の雄から雌を奪えるほどに魔物は強くはない。
不意でも打てれば……チャンスはあるが臆病でもある魔物はそれすらもしないで、誰にも占有されていない獲物を探して彷徨い続ける。

アンブロシア >  
暫く彷徨っても獲物を見つけられないと理解し判断すると魔物は一度闇深く潜り暫く都市に潜伏する事にする。
のそり、のそりと、歩みはわき道へと向かい、その深い闇のほうへと溶け込むように消えていくのであった。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からアンブロシアさんが去りました。