2016/10/02 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート とある修道院」にアニエスさんが現れました。
アニエス > 修道院、という呼称に相応しく、派手さは無いが清掃の行き届いた、
荘厳な石造りの小さな礼拝堂に満ちるのは、冷やかな静謐。

時刻はそろそろ、日付が変わる頃、といったところか。
薄闇に溶ける修道衣姿、手燭を携えて自室を抜け出してきた己以外、
聖堂の中には人影も見当たらない。

早朝から恙無く務めを果たすため、他の修道女たちは勿論、
穏やかな眠りの中に居る、のだろう。
己も本来そう在るべき、そして、そう在りたいと願ってもいた。
然し――――

俯いた己の面は怯え強張り、手燭ひとつでは心許無い仄明かりに縋り、
落ち着き無く周囲の暗がりへ視線を彷徨わせては、そっと、
熱の籠った呼気を虚空へと散らす。

今にも、暗がりから何か、悍ましいものが己を絡め取り、
二度と抜け出せぬ闇の中へ引き摺り込んでしまいそうな錯覚。
―――果たしてそれは、錯覚、で終わるものだろうか。

修道衣に包まれた身体の奥深く、何かが熱く溶け出すような感覚に、
ぞくり、項垂れた背筋が粟立った。