2016/01/17 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート とある聖堂」にサフィールさんが現れました。
■サフィール > (遊学、社会勉強、呼称はどれを用いても構わないが、つまるところ、この娘が此処に居るのは、ただ、裕福な世間知らずの小娘の、物見遊山に他ならなかった。勿論、問われれば母を亡くしたばかりの傷心を慰めるため、などと、尤もらしいことは幾らでも言える。宿で旅装を解き、真っ先に向かった先が聖堂であるというのも、「それらしく」はあるだろう。しかし、重厚な質感の扉をそっと押し開き、正面に伸びる緋色の絨毯を敷き詰められた通路を辿り始める喪装の娘の、ヴェールの奥に覗く双眸は、隠し切れない好奇心の輝きを宿してもいる。例えば此処の地下では売春宿が営まれているとか、告解に訪れた婦女子が、告解室の扉の向こうへ消えた侭、二度と日の当たる場所へ戻ってこないという噂があるとか、―――そんなこと、この娘は知らないし、己には無関係だと思い込んでいる。ステンドグラス越しの柔らかな日差しを浴びて、鳩尾辺りで両手指を組み合わせ、深く息を吸って、吐く。己を包む静謐が、偽りであるかもしれない、など、考えつきもせずに)
■サフィール > ―――おかあ、さま。 …そちらは、居心地よろしくて…? (いずれは王位を継ぐ者として、領地を、領民を治める者として、上に立つ者に相応しく在れ、と、常々口煩く説いてきた母だった。甘やかな抱擁や優しいくちづけの記憶は薄く、けれど王妃とは、王家の女とはそうしたものなのだと思い込んでいれば、寂しさも切なさも今更抱けない。ただ、ひとつだけ―――「お父さまを、信じ過ぎてはだめ」という、あのひと言だけが不可解で、繰り返された分だけ頭にこびりついている。どういうことなのか、と問うても、母は弱々しく微笑んで、短く応えるばかりだったけれど) …「お父さまは、男の人だから」…って…あれはいったい、どういう意味だったの? (それだけでは、この小娘には理解出来ない。そう食い下がるのが口惜しくて、訳知り顔で頷いてみせたけれども。こんなに早く別れることになるのなら、もっとしつこく訊いておけば良かった、と、眉根を寄せて溜め息を洩らし)
■サフィール > (何にしても、小娘には判らないことばかりだ。それ、をひとつでも「知る」ための旅ではあったけれど、あても無く歩き回るだけで、何かひとつでも、ためになることを理解出来るのかどうか。通路を挟んで設えられた信徒席と思しき長椅子の端へ腰を降ろし、高い天井を仰ぎ見て、物思いに耽ること暫し。王太子たる身を案じた従者の何れかが迎えに来るのが先か、己が飽きて立ち上がるのが先か。少なくとも西日がステンドグラスの色を変える頃までは、娘の姿は其処に留まるのだろう、と―――。)
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート とある聖堂」からサフィールさんが去りました。