2015/11/05 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/とある教会の告解室」にツァリエルさんが現れました。
ツァリエル > 懺悔のためのその部屋に一人静かに入るとツァリエルは膝をついて神に祈った。
祈りながら、重い溜息と共に自分の罪を神の前で告白し始める。
今はここには誰もいない。神の御前でもなければ絶対に吐露できぬ秘密だ。

「いと尊きお方よ、私は罪を犯しました。
 見ず知らずの人とも思えぬ相手にそそのかされ……
 姦淫の罪に耽ってしまいました……」

細く震えるような、か細い声でそう告げる。
この間貧民街で攫われたところをヴァイルと名乗った少年に助けられたと思ったら、
吸血鬼のように己の血を首筋から吸われそのうえ衝動のままに相手の手に体をゆだね
初めての手淫と精通に導かれてしまったのだ。

まだ生理現象には疎く成人には程遠いツァリエルにはひどく恐ろしい体験だった。

ツァリエル > そしてさらに恐ろしいことに、あまりにその鮮烈な性体験が初めてだったのもあって
幼い体にはしっかりとその甘美な経験が刻みつけられてしまったのだ。
無事に住処へと戻ってこれたことは大いに喜ばしかったが
その性的な衝動や吸血による快楽の疼きは戻った後も一向に収まらず
ことあるごとに若いツァリエルを苛んだ。

こんな恥ずかしいことを親代わりの神父さまや他の修道士たちに相談することもできず
夜な夜なベッドにもぐりこんではどうやってこの熱を沈めればよいのかわからず震えて泣きながら苦しみ悶えた。

いっそ自分の手でと意を決してゆるくたちあがった己の性器に触れて指を絡めるも
あの冷たく細い指で触れられた体験には及びもつかない。
なによりどうやって慰めればよいのかツァリエルは何も知らないのだ。

ツァリエル > 一晩満足に眠ることすらできない時もあるほどで
そのたびに周りの人から心配をされて申し訳なく思うのだ。

この自らの内から湧き出る衝動が何よりも恐ろしい。
ずっと淫らなことを自分から遠ざけてきたのに、その努力の甲斐なく
しかも他人の手を煩わせなければろくに処理もできないということが
どうにもやるせなく悲しかった。

このままではいつかとうとうこの欲望が抑えきれなくなって
行きずりの誰でもよいからそんな関係に落ちてしまいかねないことが怖い。
せめて罪の告白をすれば思い胸の内も軽くなるかと思えばそんなこともなく
あの事件を思い出させることで余計辛い思いをしただけだ。

ツァリエルの信じる神はもちろんなにも答えない。

ツァリエル > 告解室の内で押し殺したすすり泣きの声が聞こえる。
顔を手で覆い、迷える子羊は神の御前でひとしきり泣いた。

やがて泣きつかれてようやく落ち着いたか、泣きはらした目を俯け
のろのろと告解室から出てくる。
力なく肩を落としその足取りも重いものだが
一歩人前に出ればそれとは悟らせぬように態度を明るく変えて取り繕うだろう。

ツァリエル > 教会の外に出る前に、そっと目元を袖口で拭い涙を隠す。
一度ぴしゃんと頬を両手で叩いて気分を入れ替えれば
そのままそっと教会の重い扉を開いて去って行った。

まだ昼前の外は明るく、その日差しがツァリエルの目には眩しすぎて
ひどく焼かれそうなほどの白さだった。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/とある教会の告解室」からツァリエルさんが去りました。