2015/10/10 のログ
ツァリエル > 今日は日差しもよく、空気も風も気持ちいいものが吹いている。
これなら数時間たてばよく乾くだろう。

王都には人が手を使わずとも洗濯のできる機械があるとか、そもそも奴隷を使うとかそんな話を聞いたことはある。
だが自身の享楽のために奴隷を使うことは間違いであるし、
日々の暮らしのための労働は尊いものであるとツァリエルは信じている。

やがてすべての洗濯物がロープにつるされ、ピンチで止められる。
風にはためくそれを満足げに眺めるとたらいと洗濯板を拾い上げて、一足お先に水場を後にした。
次の仕事が待っている。こうして日々自分のつとめがあることが彼にとっては自然なことでそれはとても誇らしいことだったのだ。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/とある教会の井戸端」からツァリエルさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にベルモンド=ダービーさんが現れました。
ベルモンド=ダービー > 厳かな夜の帳の中、他の神殿とは少し離れた場所に立てられた小さな教会。日中は相談事を持ちかけ罪を告白し、と、司祭を慕う周辺の住民が間をおかず訪れるその場所も、今はしぃんと静まり返り、人の気配は殆どない。
ステンドグラス越しにゆらゆらと揺らめくキャンドルの明かりを見て、周辺の住民は司祭様が夜遅くまでお仕事をされているんだなぁ、と思いながら、邪魔してはいけないとその場を去っていくのだが。

「…おぉ、神よ。ヤルダバオート様より遣われしものよ…。」

オレンジ色の灯に浮かび上がる司祭の顔は、昼間と変わらない笑顔だというのに、どこか恐ろしげな雰囲気。
そしてそれ以上に恐ろしいのは、司祭の目の前にいる、異質な何か。

ずる、り…べちゃ、り…

シルエットだけならばそれはあの気持ちの悪い蛞蝓に似ているだろう。
だが、その大きさは仔馬ほどもあり、夜の闇を思わせる表皮にはところどころ血のように赤い目玉が無数に見えては隠れ、どう贔屓目に見ても通常の生物とは異なるだろう。
普通であれば悲鳴を上げて逃げ出してもおかしくない悍ましいその姿に、司祭はむしろ恍惚の表情を浮かべて、それを目の前に膝をつき祈りをささげる。

「しばしお待ちくださいませ、わが神よ…。すぐに、神に捧げるにふさわしい供物を準備いたします故…」

ベルモンド=ダービー > 不意に生温い風が吹いて蝋燭の炎を激しく揺らす。教会は扉も窓もしっかりと閉ざされており、隙間風の入る余地もなさげだというのに。
だが、司祭はそれを不思議に思わず。頭を垂れたまま黙祷を捧げ続ける。

「お待ちいただけるのですね…お慈悲に感謝を…」

異形の怪物の前に首を垂れるその姿は、確かに司祭の方こそが怪物を敬っているふうに見えるだろう。
確かに司祭の方も、己をそれら怪物――司祭曰く『神の使徒』の意志の代弁者であり、奉る者であると信じている。
だが、事実は異なり、目の前の怪物は獣ほどの知能も持たない異界の魔物であり、召喚者である司祭の意志にしたがっているだけの存在。
故に司祭が待ってほしいと願えば、それは命令に従い大人しく待機するのだが…

「…遅いな…」

司祭が閉ざされた教会の扉に視線を向ける。
神の使徒に捧げる供物については、予め修道士の1人に言伝ていた。今夜神の使徒に拝謁する時間についても伝えており、それまでに用意するよう――連れてくるよう命じていたのだが。

「神よ、わたしは様子を見てまいります。恐れいりますが、もう少しだけお待ちください。」

男が再び傅けば、魔物はずるずると這うようにして暗がりに潜む。
司祭が願った故なのだが、それも流石神は自分如きの考え等お見通しか、と感嘆するのみ。
司祭はキャンドルの炎をランタンへと移し、外の様子を伺おうと入口へと向かう。