2015/10/09 のログ
リィン・レイヴィア > メイシア=アレテイア=エクレシア、それがこの少女の本名である。
古代語で、「救い主たる真理の宿る神の家」という意味。
それは、少女が担う『救世姫』としての使命を如実に表したものである。
少女はエクレシア王家出身の王族であった。
しかし、王家を取り巻く政治闘争の果てに、王家は滅び去った。
今は、この少女、現在はリィン・レイヴィアと名乗る少女がいるのみだ。

「……必ず」

リィンは静かに立ち上がり、聖堂の上部を見上げる。
ヤルダバオートの印を見る。
今の多くの国民は知らないことだ。200年ほど前のナルラート朝にて、主神の名前が「アイオーン」から「ヤルダバオート」に変わったことなど。
その歴史は既に史書の中から消されている。
だが、ミレー族はその伝えを守ってきていた。
このミレー族と王国王族の混血の少女もまた、同じだった。
少女は、ヤルダバオートからこの王国とミレー族を救う姫として旅に出た。
今日はその、戦いの宣言に来たということだ。

リィン・レイヴィア > 「……まずは、王都かな」

聖堂の出口の方に向かいながら、リィンは呟いた。
救世姫になったとはいえ、すぐに何かが出来るわけではない。
偽神を倒すための力を蓄えなければならないし、情報も必要だ。
そのため、リィンは冒険者になることにした。
自分のような子供に仕事など来るかどうかは不安であったが、それでも一番手っ取り速そうであったのは、冒険者だった。
後は、旅の修道女として神の教えを説くということぐらいか。

「……王都」

不安がないわけではない。リィンの家は反逆の家として滅ぼされた。
リィンも反逆者の子供だ。見つかるわけにはいかない。だからこそ名前も変えている。
3年も立ち、あの時から政情も大きく変わっているようだ。
今はそれに駆け、冒険者としての旅立ちの準備をするほかなかった。

「行こう――」

前を向いて、リィンは歩き出した。

ご案内:「大聖堂」からリィン・レイヴィアさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/とある教会の井戸端」にツァリエルさんが現れました。
ツァリエル > よく晴れた日の午前中は、洗濯のお勤めに励む修道士や修道女たちが共同の水路や井戸に集まってくる。
この集まりが一種の近所付き合いや、情報のやり取りになっていて
おごそかさが取り柄の彼らには似合わず賑やかな交流の場になっている。

修道女たちが長い修道服の裾をまくりあげ、あられもない格好の素足で盥に放り込んだ洗濯物を足で踏んで洗う。
他にも汚れがひどいものは洗濯板でごしごしとこすり、せっけんや灰を洗剤代わりに使うのだ。

ツァリエルの住まう教会もかなりの人数の人々が暮らしており、その洗濯物の量もまたかなりのものだった。
だが、仕事に文句を言うこともない。疲れはするがこれは神が与えたもうた日々のお勤めだ。
感謝こそすれ、恨むことなど何一つない。

同い年の子供に比べれば随分ほっそりとした腕でツァリエルは持ってきた衣服を次々に洗う。

ツァリエル > やがて一通りの量を洗い終えると、固く絞ってよく水気を切る。
これもなかなかの力仕事だが、教会に入ってから何度もやった仕事だからもう今では慣れっこだ。
途中で女たちが手伝おうかと声をかけるが、丁重に断った。
お互いにそれぞれの仕事があって彼女たちも大変なのだから、遠慮して当然だ。
それに……、彼女たちが恥ずかしげもなく素足を衆目にさらし濡れた修道服を肌に張り付ける様は
本人たちが気にしていなくともツァリエル自身が気にしてしまう。

邪な考えが自身に湧き起こることをとても罪深いことだと思っている彼は、頭の中で神に許しの言葉を唱えながら
ロープが張り巡らされた物干し場に自分の預かった分の洗濯物を干し始めた。