2022/10/30 のログ
■ミスト > 何人か、あるいは何組かの客を案内した頃には夜も更けてきた。
月が空に輝く夜だが、この通りでは月明かりよりも人工的な外灯や照明がまぶしいほどに輝いている。
夜が更けようが関係なく、娼館街は眠らない。
「月が真上にきそうだ」
ミストは肩にかけていた『男娼ストリップショー』と書かれた看板を下ろし、何気なく呟いた。
隣に立つミレー族の男娼奴隷は、同じく空を見上げる。
「ほんとだ」
「そろそろ店内に戻ろうか。まだ指名貰えるかもよ」
「小金程度じゃ借金返せねえからなぁ」
そう言えば彼は借金奴隷だったか。
ミレー族なのに隠れ里を出て、うわべだけ人の好い人間に騙されて借金を背負わされて、奴隷市場に売り払われたのが経緯だと前に聞いた事があるが、それだけ。
最後に店の周囲をぐるりと見渡す。
人通りも落ち着いてきた通りに、まだ引ける客はいるだろうかと見渡して、それらしい人影がいなければ二人は店内へと戻ることだろう。
■ミスト > 「ミスト、戻るぞ」
どこの店の客引きも、次第に店舗内へと戻っていっているのが見えた。
同僚の声で周囲に視線を巡らせるのはやめて、看板を再び担ぎなおす。
他愛ない雑談を交えながら、二人店の横から店内へと続く裏口がある狭い路地に入っていった──。
ご案内:「奴隷市場都市バフート 娼館街」からミストさんが去りました。