2022/08/22 のログ
ホウセン > この夜、小柄な人外の姿は王都には無く。
商いで使う労働力兼商品を買い付けに来たのと、愛玩用の奴隷を見繕うという極めて私的な動機で。
とっぷりと日が落ちても、賑わいはさして目減りしていない。
昼間の健全な――奴隷売買その物が不健全罵りは免れられないとしても――喧騒から、聊か秘めやかに。
売り込みも”そういう用途”を想定した下世話な文言を選んで、道行く客達に投げ掛けられていて。

「嗚呼、そうじゃな、無論学があった方が良いのじゃが、この値段はちぃと高過ぎじゃ。
もう一声値引くか、抱き合わせで二人買うたら割引…というのなら考えようぞ。」

人を人として扱わぬ界隈でも、物怖じせず妙に堂々とした子供っぽい姿。
夏の装いとして、平素袖を通しているものからやや薄手の装束を身に纏い、見上げるぐらいに身長差のある奴隷商と価格交渉中のようで。
基礎的な学問を修めた没落貴族の子弟という、肉体労働以外にも使えそうな商品が目に留まったのが発端らしい。
整った顔立ちを活かして懐柔するという選択肢も無いではないが、人の見目を金銭に換算して考えるような相手には効果は薄かろうと。
シンプルに商人として妥協点を探って言葉を交わしているのだけれど、傍目から見たら良い所のボンボンが”お使い”に奮闘しているようにしか見えぬかもしれぬ。

ホウセン > 価格交渉は未だ継続中ながら、相互に一通り言いたいことを言った後の間。
声を荒げていた訳でもなく、オーバーアクションな身振り手振りをしていた訳でもない。
確かに未だ蒸し暑いが、額に汗を滲ませるほどでもなかったのに、角帯に挟んだ扇子を抜き取り。
舞踊が如き流れるような手つきで開き、パタと緩く扇ぎ始め。
何ということは無い。
お互いの主張を頭で噛み砕いて、次に何を言うかの間繋ぎの挙動でしかないのだから。

「そこまでしか負からぬのであれば、少し切り口を変えるかのぅ。
今後、帝国出身者が身売りをするという話が持ち込まれたら、一番にお主を紹介する…というのであればどうか?」

装束は言うに及ばず、中身の少年めいた姿まで徹頭徹尾北方帝国の形質。
皇女降嫁よりこちら、以前は希少で中々に値が張る上に供給が殆ど無かった帝国出身者の奴隷という図式が崩れて。
最初に需要が上昇し、次いで需要に応じられるよう供給量を増やす為に、陥れられる同国人が増えて。
一つのジャンルと定着してはいるものの、何も縁がない奴隷商が仕入れようとすると割高になるのは否めない。
その橋渡し役として便宜を図ると嘯き。

そうしている間、横合いから妖仙を掻っ攫おうとする別の奴隷商やら、自らを売り込もうとする奴隷。
はたまた良識を謳い、人身売買に手を染めんとする”子供”を諫める何者かが現れるやもしれぬが――

ホウセン > ――未だ交渉は続き、妖仙が宿に戻るのはまだ暫く先になりそうで。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からホウセンさんが去りました。