2022/06/25 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート 市場の隅」にグァイ・シァさんが現れました。
グァイ・シァ > 市場都市、その名の通りあらゆる場所にあらゆる市場を抱える都市。
商われるのは揃って同じ種類の『商品』だが、格(需要もしくは希少性)によって場所は分かれる。

もの珍しいもの、希少性も需要も高いものは豪奢なオークション会場へ。
働き手として異能を持っているなどとして価値の高いものは屋内で。

最も価値がひくく、ありふれたような『商品』は露店で商われる。
それでも多くのヒトと『商品』が溢れるあたり、この国随一の都市といっていいのだろう。駆け引きの声や素行の悪い『商品』を叱咤する声も相まって、活気で言えば建物に擁された市場よりもよいといえた。
その露店がひしめく広場の隅。あまり客も通りかからないような場所。
ある幌がかかっただけの露天で、痩せた女がひとり、地面に座り込んでいる。両手首と首からは鎖が伸びて、近くの建物の鉤と繋がれていた。

項垂れた赤毛の女は、破れた幌の合間から西日が差し込んで照らそうと身動きをしない。
店主はどこへいったのか、そのほかの奴隷もみあたらず、ただただ騒めきと時だけが過ぎる。

女は見ての通りの『商品』だったが、痩せているくせに『買い主』が現れる度に膂力をもって暴れた。手を伸ばされれば噛みつこうとし、少しでも戒めが緩めば相手に襲い掛かろうとした。
手を焼いた店主はひとまず仕入れたばかりの女をここへ――――こうやって暴れるものを繋ぐための楔が打ち込まれた建物が、この広場の近くには沢山あった―――繋ぎ、他の商品を商ってしまうことにしたようだった。

グァイ・シァ > 女はヒトではなかった。
項垂れ、動かないのは力尽きたわけではなく、只ひたすらに待つためだ。
痩せた身体も戻そうと思えば戻せたが、思うような『買い手』が現れるまでは価値のないものでいる方が良い、そう了解していた。

その市場は不夜城だったが、露店の隅々まで照らす灯りなどなかった。
闇に沈んだ片隅は翌朝、店主が様子を見に来てみれば果たして鎖だけがその場に残されている。

攫われたのか、逃げ出したのか

どちらにしろ、店主としてもいつの間にか紛れていた『商品』だったので取り立てて騒ぐこともない。むしろ厄介なものが消えてほっとしたかもしれない。
いつしかそんな『商品』があったことさえ忘れて、日々を過ごしていくだろう

ご案内:「奴隷市場都市バフート 市場の隅」からグァイ・シァさんが去りました。