2022/05/01 のログ
ご案内:「バフート中央部:奴隷市場」に348番さんが現れました。
奴隷商 >  
「はいはい、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
 今日も良質な奴隷を取り揃えておりますよ!」

多くの人で賑わう市場に男の声が響く。
ここバフートでは恒例となる奴隷の競売が始まった合図だ。

お立ち台の上に並んで立たされた奴隷は全てミレー族。
生まれついての奴隷として育て上げられ、適齢になるとこうして売りに出される。
まっとうな人としての生を知らない、哀れな子供達であった。

348番 >  
「……………」

次々と買い手が決まる奴隷たち。
昨日まで同じ施設で過ごしていた仲間が、下卑た笑みを浮かべた男達の手に渡っていく。
もはや見慣れた光景に、今更どうとも感じない。
きっと、買われた先での暮らしも、施設とそう変わらないだろうから。

ご案内:「バフート中央部:奴隷市場」にミシェリさんが現れました。
ミシェリ > 奴隷市場の猥雑とした空気は興味深くあるものの、どことなく辟易するもの。遊びの対象を探してうろついている自身の品性も褒められたものではないものの、下卑た笑いを浮かべる者達とは一線を引くようなすまし顔をして、興味を引くものがなければ宿へ引き返そうかと思っていたころ。客引きの大きな声につられて目を向けてみると、お立ち台に並べられたミレーの子ら。ここでは何ら珍しい光景ではなかったものの、その中の一人に視線を惹かれて。

「……もし。その、左から二番目の、…そう、白い髪の子は」

声がした方へと進んで奴隷商人に声をかける。お立ち台の上に並ぶ子の中から、奴隷にしては髪の白さが際立つ少女を指差して、売約済かどうかを尋ねてみた。

348番 >  
ぴく、と猫のような耳が動く。
左から二番目、白い髪……当てはまるのは自分しかいない。
目線が声のした方を向き、そこにいた人物を捉えた。

「(……女の、ひと?)」

ここに奴隷を買いにくるのは男がほとんど。
意外な光景に、琥珀色の瞳が僅かに見開かれた。

奴隷商 >  
「おや、あの子が気になりますか?
 まだ幼いものの、物覚えの早い良い子ですよ、ええ。
 買い手はまだ付いておりませんが……」

あくまで商人として丁寧に対応する奴隷商に対し、
周囲の客は声を上げた女性に対しても値踏みをするような視線を向ける。
女が何の用だ? とか、奴隷じゃないのかよ……とか、
聞こえてくる囁きも品性に欠けたものばかりだ。

ミシェリ > 交渉相手である奴隷商人に向き合いながら、時々少女の方を観察するようにしていた。ちょうどその時、お立ち台の上からもこちらに視線が注がれていた。くすりと微笑み、軽く手を振ってみせて。

「そう。覚えがよいのは助かりますね。見目がいいだけでも十分、気になりますし……、ああ…声は?」

奴隷の中には声帯がつぶれたりしている者も珍しくない。その点を懸念して小首を傾げる間も、周囲からの粗野な視線に晒されて。さほど気になるわけではなかったものの、あまり周囲でがやがやとされていて交渉の声が掻き消されても困る。少女に向けて振っていた手の動きを止めると人差し指を立てて。

「……火遊びされたいのでしたらお付き合いしましょうか?」

指先から細い火柱が、5mほどの高さまで噴き上がる。感覚からさほど手練れの者もいない気がしたため、脅しはこれだけで十分だろうと、数秒ほどで炎を消して。

奴隷商 >  
「ええ、その点は心配ご無用です。
 ウチは商品の扱いには特に気を遣っておりますので。
 やや大人しすぎるくらいですが、良い声で鳴いてくれますよ、ええ」

それこそが一番のセールスポイントとばかりに、大仰な手振りを交えてにこやかに述べる。
実際、他の奴隷も含めて奴隷にしては清潔に保たれている。
気性の荒そうな子には"躾"の痕も僅かに見られるが、白髪の少女はそれも無さそうだった。

「おや……これはこれは、他のお客様が失礼をいたしました」

あなたが火柱を上げても奴隷商は笑みを崩さなかったが、
周辺の男達はあなたから距離を取るように後退り、野次も聞こえなくなるだろう。

348番 >  
「(今のって……魔法?)」

火柱に一瞬びくっと肩を震わせたが、魔力を感じ取って再び顔を上げた。
種族として強い魔力を持つのが特徴のミレー族。
首輪にはそれを封じる効果があり、これは奴隷商とその購入者にしか外せない。

ミシェリ > 白い髪の少女へ目を向けたついでに他の奴隷達も観察してみる。他の子らも並べ売りされる奴隷としては一定の基準をクリアしているように思われる。それだけ商品の扱いをしっかりしているのならば、この奴隷商人も信用できるものだろうと考えて。

「よいですね。…可能であれば一日お貸しいただく形から…お願いできたら嬉しいのですが。難しければ、即決でも。……いかほどで?」

炎を消した指先を振るう間に、騒々しい野次馬達は離れていった。満足そうに吐息をこぼしながら、懐からずしりと重たそうな財布を取り出し。どういった形態で取引できるかと、値段を尋ね。

「いえ。このくらい賑やかな方が、商売も繁盛して喜ばしいでしょう」

奴隷商人からの謝罪には首を振りつつ構わないと示した。彼にとってはああいう客でも寄ってきてくれるだけ嬉しいだろうと、軽口で返して。

奴隷商 >  
「貸し出しは致しかねますが……
 購入した奴隷にご満足いただけなかった場合、期日内であれば返品も承っております、ええ。
 ただし、こちらとしても使い物にならない状態で返されても困りますので───

 『見た目を損なうような扱いをしていないこと』
 『首輪を外さないこと』

 以上の二点をお守りいただける場合のみ、代金を全額お返しいたしましょう」

あくまでも見た目には拘り続けるらしい。
精神的な損失には何も言わないあたり、彼らにとって奴隷の価値はそこにあるのだ。

「ええ、皆様には毎度ご贔屓にしていただいております。
 こちらとしては代金さえ支払っていただければ問題ありませんので、ええ」

そう言って、値段はこのくらいで……と相応の金額を提示した。
状態の良さを売りにしているだけあって、結構な値段だが……払えない額ではないだろう。

ミシェリ > 見た目への拘りを覗かせる商人の説明に目を細くする。この奴隷商については憶えておいてよさそうだと思いながら説明に耳を傾けて、全額返金を約束されたサービスのよさに、深く頷いた。

「ええ。せっかくこうして可愛く出してくださっているものを台無しにする趣味もありませんし。では、交渉成立という事で、―――おいで…?」

提示された金額はそれなりだったが、迷う事なく支払いを済ませた。改めて少女へ視線を向けると、片手を差し伸べて小さな動きの手招き。一時となるかどうかは分からないけれど、今の主人は自分に決まった事を示して。

「…では。……よい商売を続けてくださいね」

商人にそう一声をかけたころ、道に溢れる通行人を掻き分けるようにして一台の馬車がやってきた。黒いフードに全身を包み性別も年頃も分からない御者に片手を挙げて、自分はここだと合図をし。

348番 >  
どうやら、自分はあの女性に買われたらしい。
彼女と奴隷商に呼ばれ、少女は小さく頷いて陳列台を降りた。

「わ、わたしを買っていただき……ありがとうございます」

緊張でやや上擦った声になりながら、主人となる女性に深々と一礼。
奴隷商は代金を受け取って女性に会釈した後、すぐに他の客の対応に向かった。
ここに返されてこない限り、自分との関係もこれっきりだとばかりに。
……最初から商品としか見られていなかったことくらい分かってはいたけれど、少し寂しく感じた。
そのまま迎えの馬車に乗り込むだろうか。

ミシェリ > 台から降りてきた少女を微笑みで迎え、一礼に対して小さい会釈を返す。そのまま少女の手を取ると、停車した馬車へと乗り込み。二人の姿はどこかへと消えていく――
ご案内:「バフート中央部:奴隷市場」からミシェリさんが去りました。
ご案内:「バフート中央部:奴隷市場」から348番さんが去りました。