2021/08/20 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にグリセルダさんが現れました。
グリセルダ > 「いいえ、旦那様がた、……わたくしは、ただの占い師でございます」

にこやかに微笑んでやり過ごそうとする、初めのうちは穏便に、
なんとかして騒ぎにならないよう、と配慮する気持ちもあったのだ。

しかし、数人でまわりを取り囲んだ男たちが、あまりにも不躾で。
やれ、女を売り物にした方が稼げるだろう、だの、
今なら懐があたたかいから、良い値で買ってやるぞ、だの。
しまいには深く被ったフードに手をかけ、本当はミレーじゃないのか、
とまで言い出す輩が出るに至り――――堪忍袋の緒は、ぷつりと切れた。

「うるっさいなぁ、そういう商売はしてないって言ってるでしょ!
 女と見れば娼婦扱いするの、すっごく失礼だと思わない?!」

ぱん、と水晶玉を携えているのとは逆の手で、フードにかかった男の手を叩き落とし、
高く声を張って言い返したが――――当然の帰結として、周囲の男たちが色めき立つ。
取り急ぎ、一番ひ弱そうに見えた若い男に体当たりをして、
無理矢理抉じ開けた隙間から囲みを抜け出したが。

ローブを翻す小娘と、いきり立つ荒くれ男たちとの追いかけっこ。
それを囃し立てる者は居ても、救いの手を差し伸べようという者は居ない。
迷路のように入り組んだ通りを、あちらへこちらへと逃げ惑う小娘の方も、
誰か助けて、と叫ぶゆとりはなく――――――。

グリセルダ > あちらで見ず知らずの人を盾に、こちらで廃屋と思しき建物を抜け道代わりに。
こればかりは父親に感謝すべきだろう、母親の血では考えられない身軽さを発揮し、
数人の男たちを相手取った逃走劇は、娘の逃げ切り勝ちで幕を閉じる。

日暮れを迎え、男たちが疲れ果てて諦め、毒づき去って行く姿を、
どこかの物陰に息をひそめ、見送る小娘の姿があったのだ、とか――――――

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からグリセルダさんが去りました。