2021/08/14 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート/奴隷市」にルヴナンさんが現れました。
■ルヴナン > 雨が降る昼下がり。
午前中から降り続く雨は、昼を回っても止む気配がない。
けれど、この街の熱気はそんなものには負けることもなく、本日何度目かの競りが行われている。
壇上に上がっているのは奴隷として売られるどこかの誰か。
雨具もなく、濡れ鼠になっているのはその方が哀れさを演出できると考えたのか。
身の上を切々と語っているのか、あるいは、身の不幸を怨みに変えているのか。
――今のところは、特に興味を惹かれるようなことはない。
「いや、ここは相変わらず楽しいね。」
けれど、鏡の仮面の下で唇が笑みを囁いた。
黒い傘の下、弾ける雨粒の音に紛れた滑らかな声は、普通の人間には聞こえなかっただろうけれど。
身形は悪くない。高級、とはいかないがそれなりに手の込んだ衣服。
唯一、顔の半分近くを隠す仮面。一枚板のような鏡のような金属製のそれが違和を滲ませる彼。
その仮面越しの視線は、むしろ、競りを眺める人々にこそ注がれていた。
唇に浮かぶのは柔らかな笑み。穏やかな微笑。まるで、獲物を前にするそれにも似て。
■ルヴナン > 奴隷が一人、買われた。
買われたのは幼い少女、買ったのは紳士然とした貴族。
夜会で見たことがある人物だ。篤志家として知られる人物だ。風評通りなら。
さて、次はどんな人物が売りに出されるのやら――。
壇上に、顔を向ける。他の多くの客と同じように。
傘の向こう側から、鏡に歪に映る奴隷の顔貌。
ゆるり、と唇がまた、笑みの形に綻んで、視線をまた競りに参加する客たちに向ける。
大抵の言葉は、ほとんどの声は傘にぶつかって消えていく雨音のようなものだ。
けれど、その中にも面白いものがあった。
例えば、今競りに向けて懐の金を握りしめた青年。どんな思いがあったのか。
それを見ながら、そっと踵を返す。
後に紡がれる物語は、一体どんなものになるのか――想像しながら。
ご案内:「奴隷市場都市バフート/奴隷市」からルヴナンさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にヘルティナさんが現れました。
■ヘルティナ > 「――へぇ……。」
宵闇も深まって猥雑とした活気に包まれた奴隷市場を、赤いドレスの女が物珍しげに眺めていた。
とは言え、多くの人々の情欲と嗜虐心に満ちた品定めの視線を集める檻の中の奴隷達には一瞥をくれるだけで、女が足を止めたのは其処から少し離れた一角――檻に入れられ鎖に繋がれた彼女達への調教、或いは愛玩に用いられるであろう品を扱った店の前だった。
「余り趣味が良いとは言えないけれど……随分と面白い品を取り扱っていますのね……。」
拘束用のベルトに様々な責め具を備え付けた椅子に、謎の粘液を滲ませながら蠢く無数の繊毛を備え付けた下着。
何れも女性に対する欲望を満たすためだけに用意された品でありながら、絡繰や魔法仕掛けの技術を惜しげもなく詰め込んだ其れらは女の興味を引くには十分で。
思わず、くすりと小さな笑みが零れ落ちた。
■ヘルティナ > そんな女の様子に気付いてか、店の奥から現れた店主と思しき男の挨拶に軽く会釈を返しながら。
もし宜しければお試しになられますか――次いで店主から投げ掛けられたそんな問い掛けには、まさか、と肩を竦めて見せる。
「――けれど、そうね……此方のお店では他にもこういった類の品を取り扱っているのかしら……?」
使用する予定は当面無いのだけれども、蒐集品としてひとつやふたつ手許に置いておくのも良いかも知れない。
そんなことを考えながら店主の男に尋ねると、勿論とばかりに肯定の言葉を返す彼に案内される侭――女の姿は店の中へと消えてゆく。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からヘルティナさんが去りました。