2020/11/25 のログ
■ソーニャ > 尾行に気づいたり、背後の気配を察知したり、という能力も、小娘は持ち合わせていない。
だからきっと随分長いこと、己は追尾者に無防備な背中を向けて、
危険な街歩きを楽しんでいたのだろう。
振り返った先にも、怪しげな影がよぎることは無く―――
ただ、背中に感じていた夜風が、不意に和らいだような気がした。
けれどもそれを違和感として袋小路に向き直るより早く、肩口へ大きな掌が触れる。
トン、と軽く叩かれた程度、しかしそれは小娘にとって、完全な不意打ちであり。
「―――――― っ、……びっ、くり、させないでよ……!」
勢い良く振り返った視界を、ほとんど覆い尽くすような巨躯の男。
顔を見ようとすれば、首が痛くなるほど仰のかねばならないような。
振り仰いだその瞬間こそ、見た目の年頃相応の、怯えたような表情をみせたけれど、
直ぐ、不機嫌そうに眉根を寄せた、小生意気な顰め面に変わり。
「……立ち入り禁止なら、立札のひとつも立てときなさいよ。
ま、頼まれたってこんなとこ、長居しない……… け、ど」
ぽんぽんと憎まれ口を叩いて、踵を返そうとしたところ。
踏み出した足がふらつき、身体のバランスが大きく崩れる。
とくん、とくん、―――――鼓動が、呼吸が、にわかに乱れ始めていた。
「……… な、に、―――――」
声が、不自然な掠れを帯びる。
■ベクラム > 全く警戒の様子がない、そんな小娘がどうなるか知っていないはずもないと思うが……もしくはどこかのご令嬢がお忍びに逃げ出したのだろうか。
何にしろ、いい素材であることは間違いなく、遠慮なく淫欲の種火を秘孔から灯していけば、怯える表情に目を細めた。
すぐに見えるしかめっ面も、ただの強がりにしか此方には見えない。
小言の様に重なる文句にも、嗚呼というように申し訳無さげに眉をひそめて愛想のいい苦笑いを見せていき、己が牙をしっかりと隠していく。
「いやぁ、それは申し訳ないですねぇ。忙しくて設備の方に人が回らなくて……」
平謝りと共に頭を軽く下げていくも、しっかりと少女への観察は怠らない。
故に、足元がふらついたのが見えれば、倒れないようにと腰を落としてかがみながらも、そっと腹部に腕を回して支えていく。
胸にも尻にも触ることはない、臍のラインを太い腕がぐるっと巻き取るような支え方だ。
しかし、脇腹に触れた指が先程同様に追い打ちに秘孔を突いていく。
こそばゆさの神経を過敏にさせる様に血流を乱すものだが、くすぐったさが上がるわけではない。
その上位とも言える刺激、快楽へと僅かに通ずるようにしてしまうものだ。
こそばゆい痺れが甘くなり、こうして重ねた腕だけでも淡い痺れを煽るはず。
勿論、此方は知らぬ素振りで支えるだけだが。
「おやおや、体調がよろしくないようですね……? よろしければ、少し休める場所へご案内しましょうか」
心配そうにその顔を覗き込みながら、小生意気ながら整った愛らしい顔を確かめる。
白の映える黒絹と、シトリンを思わせる大きな瞳、それを見つめながら提案を囁きかけた。
覚束ない状態でこんな場所の表通りに出ようものなら、彼女のような少女はあっという間に貪り尽くされるだろう。
善人ぶるのも、じっくりと心と体に絶望を植え込むための下味に過ぎない。
■ソーニャ > 見上げる長身、分厚い体躯、どれをとっても、威圧感の塊のようなもの。
しかし物腰や表情、言葉遣いの穏やかさが、不思議と警戒心を抱かせない相手だった。
―――もっとも、相手を所詮は人間如き、と侮っている小娘にしてみれば、
はなから警戒心など、抱く余地も無いのだが。
「もう、良いわよ、こんなとこに居たってつまらない、か…… ら、」
帰るわ――――と、続けるつもりだったところへ。
純粋に、紳士的に、と言っても良い所作で回された腕が、己の腹部を絡げ取る。
と同時、―――――ざわり、背筋がざわついて、膝からかくりと力が抜けた。
「ぁ、……… ぇ、 なに、―――――…
――――― い、え、平気…… あ、たしに、構わな、……… っ、っ」
おかしい、と思いはした。
人間の少女とはわけが違うのだ、こんな風に突然、体調不良に襲われる筈は無い。
身体の芯が、得体の知れない熱感に甘く揺らされているような―――
支えとして巡らされた腕を、振り解こうと身を捩るだけで、新たな震えが背筋を駆け抜け、
一瞬、目の前が白く塗り潰されたかと思うほど――――あられもない声が零れそうで、
咄嗟に唇を、きつく噛み締めなければならないくらい。
俯いた首筋が、耳朶が、髪の間から覗く頬が、夜目にも紅く色づいて見えるだろう。
そうして結局、小娘の頭は上下に動く。
お願い、だなんて、絶対に口にはしない。
助けてくれるのが当然だと言わんばかりの傲慢さを、辛うじて保ちながら。
けれどももう、自力で歩くことすら難しいのだ。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にベクラムさんが現れました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にベクラムさんが現れました。
■ソーニャ > バフートの街では日常茶飯事、きっと今この瞬間にも、
街のあちこちで似たようなことが起こっているのだろう。
この後の顛末を知るのは、罠にかかった小娘と、罠にかけた男のみ。
全ては、街を支配する闇の中――――――。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からソーニャさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からベクラムさんが去りました。