2020/08/24 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にローズマリーさんが現れました。
ローズマリー > (全く、本当に鈍臭い子……)

声に出さぬ呟きの代わり、深い溜め息が尖らせた唇から零れる。

意識を取り戻したのはつい今しがた、その前の記憶は数日前に遡らねばならず、
つまり、この事態を引き起こしたのは、己の片割れであるあの、忌々しい娘である筈だ。
この事態―――恐らくはバフートの街であろう、奴隷商の店先に並ぶ檻のひとつへ押し込められ、
首にはご丁寧に、黒鉄の首輪まで嵌められている。
折しも、何処ぞの男が修道衣姿の若い女に目を止めて、己の檻の直ぐ傍で、店主と交渉中だった。

『ただの修道女じゃありませんよ、お客人。実はこの娘、伯爵令嬢でしてね』

何処で仕入れたのか、得意げにそんな台詞を吐く店主と、ぎらつく眼差しで此方を見遣る男。
紫の瞳を眇めて、そんな二人を上目に眺めながら、檻の中に座した己はまた、
退屈です、と言わんばかりの溜め息を吐いた。

(……何度も途中で『代わって』るんだから、そろそろ逃げ足が速くなっても良い頃よ)

あの子は本当に、遊び方というものを知らない。
ギリギリの処で逃げ切れてこそのスリルだというのに―――このままでは、
ご丁寧に『伯爵令嬢』という血統書付きで売られてしまう。
勿論、逃げ出すチャンスは幾らでもあるだろうが―――面倒な、と、またひとつ、溜め息。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にルヴィエラさんが現れました。
ルヴィエラ > (金額面での交渉だろうか、伯爵令嬢と言う肩書を盾に
少しでも値段を吊り上げようとする店主と客との間で、割合真剣な駆け引きが行われている中
其の喧々諤々を他所に、折へと近付いて来る影が一つ、在るだろう

ローブ姿、フードを目深にかぶり、傍からでは人相も知れぬ誰か
折の傍へ近寄り、其の中に坐する娘の姿を眺めれば、其の傍らへと座り込む
交渉に夢中な店主は、今の所気付いては居ない様子の中で
修道女姿の、其の娘に、密やかに掛けられた声音、は。)

「――――――……また、捕まって居るのかい?」

(何処か暢気な、それでいて、愉快な物を眺める様な声。
また、と言う言葉に、果たして娘がどれだけ覚えが在るかは知れぬ、が
ひらり、片掌を振ってみる仕草は、如何にも気安い物で在ったろう)。

ローズマリー > 服装にそぐわぬ太々しい態度から、使い潰された阿婆擦れだろうと難癖をつける客と。
とんでもない、間違い無く血統書付きの生娘だ、と主張する店主との遣り取りに、
売られる立場も忘れて眠気すら催し始めた頃。
――――ふと、別の男が此方へ近づいて来るのに気づいた。
檻の中へ差す細長い影の源を辿るよう、何気無く視線を巡らせて、

「―――――余計なお世話よ、旦那様。
 今日の私は、未だ、貴方のものじゃないわ」

フードの下から覗く面を認め、数度、瞬く間に記憶を手繰り。
一度は見開いた瞳を、再び、はすっぱに細めてみせながら、冷ややかな台詞を投げ返す。
その眼差しさえ、直ぐに興味無さげに男から外して、

「それとも、またお買い上げになるつもりかしら?
 出したお金のモトが取れない女には、前回で懲りたんじゃなくって?」

ルヴィエラ > (手持ちが足りないのか、単純にケチろうとして居るだけなのか
中々折り合いが付かない気配の交渉事を尻目に、檻の傍
如何やら、此方の事は覚えて居たらしい娘の冷ややかな態度に
くすくすと、小さく愉快気な笑い声が零れた。)

「今日は…確かに、其の通りだ。
それにしても、何時の間にか、何処へとも無く消えていた君を
まさか、こんな所で見つけるとはね。 ……いや、こんな所だから、なのかな?」

(何時かの時も、娘はこうして売られる立場で在った。
わざと捕まって居るのでは、なぞと思える様な二度目の邂逅
一度は己が元から逃げ出した娘を、されど追いかけなかったのも己
モトが取れなかった、か如何かに関しては――考え次第、か。)

「私が買わずとも、君ならば要領良く逃げ出せそうでは有るがね。
――買い上げても構わないよ、但し、今度は条件付きだ。
君が、君の儘で私の相手をするなら、ね。」

(ひとつ――告げる、条件。
今にも交渉其の物が破談しそうな向こう側を選ぶも
或いは、まだ見ぬ買い手を期待して待つも、構わない、が

――さて、如何する? なぞと問いかけながら、視線を娘へと向けて)。

ローズマリー > 傍らで、細かな数字の上下が繰り返されているのも、己には他人事。
誰に買われても、何処に売られても、其処が終着点になることは、
まず、有り得ない、と思っているからこその余裕だった。

流石にこの店では無かっただろう、しかし、以前にもこの街で。
今日と似たような形で行き会った男を前に、己は飽くまでも太々しいまま。

「ごめんなさいね、ひとつ処に留まるのは大の苦手なの。
 それに私、物忘れが酷い性質なのよ、
 誰かに買われたとか、そういうことも、直ぐ忘れてしまうの」

少しも悪びれた風を見せず、軽く肩を竦めさえして。
売買契約はこの男と、奴隷商の間でのもの―――己には関係無いことと言わんばかり、
―――――しかし、男が前回は提示しなかった『条件』を口にすれば。
ごく僅かに、ぴくん、と、片眉を跳ね上げた。

「この前と言い、今回と言い、………貴方、何を拘っているのかしら。
 私は私よ、……他の、誰でもないわ。
 それに、―――――そんな約束、精々、一晩限りしか保証出来ないけれど」

男が今、己を買い求めて連れ出したところで、一晩の後、目覚めるのが己か、
それとも『あの子』になるか、己にも予測のつかない時はある。
だからそんな約束、明日の朝には反故にされているかも知れないのだ、と、
―――そう告げながらも、改めて男を見つめ返した、それこそが、
男の条件を呑む、ということだと、男の方は気づくだろうか。
気付かなくとも、態々お願いしてやる気は無いけれど。

ルヴィエラ > (最終的に、随分と下の桁で金額調整が始まった物だと思う
互いが互いに、僅かでも儲けようとするのは決して間違った事では無いが
そうやって手をこまねいて居る内に、機を逃してしまう、と言うのは割と良く在る事だ
娘からの言葉に、僅か肩を竦めて見せながら、ゆっくりと立ち上がる
何時かの売買契約なぞ、この場では何の意味も無い事は理解して居り
故に――娘が、決して、否とは言わなかったことに、僅か口元へ微笑を浮かべ。)

「拘りと言うよりは、単純に気に入って居るか否か、だ。
君が君であるなら、其れで一向に構わない――何せ、私が買ったのは他でも無い君なのだからね。
……では、少々待っていてくれるかな?」

(其れは――約束を交わしたのと、同義。
金銭のやり取りこそ、己と、そして店主との間にのみ締結される物であるが
今娘と交わした言葉は、紛う事なく娘との間に結ばれた物

――僅かに声を荒げたのは、交渉中の男だったか。
店主の粘りに、そんな金額では払えないと言い放った直後
その隣から、割り込む様に己が声を掛ける
袖口から取り出した革袋から、最終的に、店主側が言い張って居た
「譲れない金額」を提示して見せれば、呆気に取られた店主の掌に、ぽんと乗せて。)

「―――――さて、では行こうか。
街中なのでね、少し歩かせて仕舞うが。」

(――そうして、娘の檻の鍵を開く。
相変わらず、憮然とした態度で座って居そうな娘に、手を差し伸べれば
其の儘、するりと連れ出そうとするだろう。
――檻の鍵なぞ、店主から受け取って居ない事に其の場の人間が気付くのは
二人が立ち去ってからになるやも知れず)。

ローズマリー > 己に如何程の値が付こうと、さして興味など惹かれない。
金額が高かろうが安かろうが、己の懐に入る訳でも無いのだし。
そもそも積極的に身を売ったつもりも無い、勝手に売り物にされているだけの話で、
かつて男が別の奴隷商に支払った額も、今、男が払おうとしている額も、
特に己自身が贖わねばならない、とは思えなかった。

ともあれ。
大層羽振りが良いのか、前回同様実にあっさりと、男は己の『対価』を支払う。
金を貰った商人の方には勿論文句も無かろうし、客になり損ねた男も、
縦幅も横幅も立派な商人を相手に、それ以上ごねられる筈も無く。

カタン、と開かれた扉から差し伸べられた手を、己は一瞬、胡散臭そうに眺めてから手を伸ばし。

「物好きね、……あれだけ払うなら、もっと大人しくて愛らしい、
 明日になっても夢のように消えたりしない子が、幾らでも見つかると思うけれど」

阿婆擦れ、とまで自認する気は無いが、擦れて歪んでいるのは認めざるを得ない。
そんな女の、一夜の自由を買い取る男に対する眼差しは、やはり冷ややかなままだったが。
少なくとも街の中、別の誰かに攫われてしまわぬ程度には、男の傍らに寄り添って。
向かう先は男の宿か、それとも何処かの物陰か。
何方でも構わない、と思ってしまう辺り、太々しさは筋金入りと言えるだろう――――。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からルヴィエラさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からローズマリーさんが去りました。