2020/08/17 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からレムリアさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にエキドナさんが現れました。
エキドナ > 「掘り出しもの~…なんて都合よくないよね~」

バフートのメイン市場。
今の時間帯こそ活気に溢れたこの場所は、様々な身なりの者たちが行きかっている。
奴隷商人、奴隷、そして買い手…目に見える範囲の中でも実演販売よろしく痴態が繰り広げられてもいて。
そんな中でいくら暑いからといっても、だいぶ露出度の高い恰好で練り歩く褐色肌の女。

知る人ぞ知る王都のクラブのオーナーたる女であり、新しい奴隷の買い付けのために自らこの場所に赴いて品定めをしているところである。
だがそんな恰好で無防備にブラブラしている様はいつ何時襲われ、「商品」にさせられてしまうかわかったものではないが。
そんなスリルすら娯楽にしてしまえる女は、周囲の邪な視線を浴びつつ、気ままなウィンドウショッピングを続ける。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にヒルデさんが現れました。
ヒルデ > 少年は、透明な円筒状のケースの中で溜め息をついた。
そのケースは単なるガラスではなく強度があり、円筒状の檻と言える。
中には赤い絨毯が敷かれ、椅子が一つ置いてあるだけ。そこに腰掛けているのだった。
透明な壁面の外には、一般人には中々手の出ない値段が提示されている。
馬車で移動中、賊徒の集団に襲われ……他の客はどうなったか分からない。
兎に角、ありがちな経緯を辿って少年はここに売り物として入るハメになり、武器は取り上げられた。
そこでふと目に入ったのは──

「ねえ、お姉さん」

少年は立ち上がり、一見無警戒に見える格好で歩いている女性に声をかけた。
ガラス面には小さな穴が複数相手いて、声をかけるのは難しくなく。

「ちょっと、危ないよ。何か上に着た方がいいって。やばい奴らが妙な眼で見てるからさ」

そんな場合では無いのだが、明らかに危険と思える相手を放っておくのも忍びなく思い。

エキドナ > 女が歩いていたのは、市場の中で比較的若い奴隷が売られているところ。
安値の奴隷なら鎖だけでそこらへんに繋がれているし、高値の奴隷ならご覧のように立派なショーケースに入れられているという様だ。
値段の判断材料は、出自・血筋・能力・外見・性機能などなど…
つまるところ女に声を掛けてきた少年は、奴隷としては上玉、というところだ。

「へー、奴隷ちゃんから心配されるのは初めてかも」

奴隷から声を掛けられるのは、珍しいことではない。
女は顔立ちはともあれ身体つきは人目を引くためか、大抵は自分を買ってくれと申し出てくるのがほとんどだ。
だからこそ己の身より赤の他人のことを気に掛けてきたケースの中の少年を、物珍しそうに眺める。
もちろん、少年の警告など耳に入っているわけがない、その必要がないから。

「奴隷ちゃんは妙な目で見てくれないの?」

警告を無視どころかまるで聞いてないかのような態度の女は、どこか挑発気味にケースに近づいて、谷間の露出の目立つ胸元を見せつけてくる。
値段を見ればそれなりに知恵の回る子のようだが、やたら落ち着いている様子に少し意地悪したくなったのだ。

ヒルデ > 憂鬱な気分をおして警戒を促してみたが、彼女の様子はといえば実にあっけらかんとしていた。
少年は少し呆れはしたものの、この国では見た目通りの実力とは限らないことも当然あり得る……
とりあえず「奴隷じゃない!」と反論しかけるが、現状では間違いなく奴隷の陳列ケースに入れられているわけで、
反論するだけむなしい。
と、すごすご椅子に戻りかけるが、そこでどこか物珍し気にこちらを見る視線に気付く。

「……? って、何言ってんんだよ! 僕はそんな、えっと、そんなつもりはっ!?」

首を傾げたところで、悪戯っぽい声と……晒される胸の谷間。
本能でそこに吸い寄せられる視線をごまかすようにかぶりを振って、あたふたとしながら言い返す。

エキドナ > 「んふふ~、わっかりやすい反応しちゃって~」

少年の露骨な反応に、女は実に楽し気だ。
と同時に、彼はまだ自分の立場がわかっていない。
ここで売られるというのがどういうことか、わざと捕まりその酷さを身をもって楽しんだことのある女からすれば、彼には明るい未来はない。

「でもさ、こんな値段で売られてるんだもん、頭良いんでしょ?
自分から良さそうな買い手に売り込まないと、バッドエンドっちゃうよ?」

己の思っていることなど微塵も顔に出さず笑顔のままだが、急にそうやってマジトーンで少年に忠告をしてくるのは、やっぱり悪戯心からだが、同時に事実でもある。
どうせそのうちそういう趣味のある男性か、いい歳のマダムに買われてしまうのがオチといったところだろうか。

ヒルデ > 単にからかわれただけ、と分かって、少年は口をもごもごさせながら渋面を作った。
その後でかけられた言葉には、確かに道理が含まれているように思う……
お節介で身の安全を気遣ったぶんだけの見返りは貰った、と言えるかも知れない。
ただ、自分の値付けに関しては全く関与していないので、何をウリにしてしていいものやらと言ったところ。
しかし、そんな甘えた事を言っていられない状況であるのは間違いない。

「……お姉さん、僕を買ってくれませんか? 持ち歩いてないだけで、蓄えはあるんです。
足りない分は、働いて返しますから。体力に自信があります。大人の男の二倍……いや、三倍は働きます」

相手は客の立場として居るのだから、金は持っているだろうと判断し、言葉遣いを改めて訴えかける。
私財を全て換金すれば、少し足りないが、何とかなる額だ。本当に無一文になりはするが。
そこはもう、背に腹は代えられないというやつで。

エキドナ > ようやく状況を飲み込み、頭をフル回転させながら打破を考える少年の変化に、女は楽しそうだ。
意地悪なのか、親切なのか、面倒見がいいのか、悪魔的な女の言葉に操られたとも言える少年は、予想通りに自分に対して売り込みを掛けてくる…奴隷としての立場で。
だが…

「自由になるつもりの奴隷を買う人がいるかなぁ。
あたし、買った奴隷は一生コキ使うつもりなんだけど~」

少年の売り込みは、どうやら不合格らしい。
お金で解決できるなら、そもそも売り手である奴隷商人と交渉すればよいのだ。
この女は別に善人ではない、奴隷を買いに来ている客なのだ。
女はまぁ相変わらずのにやついた意地悪そうな表情で意地悪なことを言っているだけなのかもしれないが、さて少年のほうがもうそこまで気が付くほどの余裕があるかどうか。

「どうするぅ、もいっちょチャンスあげようか。
ちゃあんとセールストーク…やってみて」

女は徐にケースに近づいて、その豊満な谷間をケースに押し当てる。
柔らかく大きな二つの乳房が形をかえてケースに張り付き、女の吐息がそれを曇らせる。
そうしながら最後のチャンスとばかりに、彼にもう一度売り文句を言わさせようとして。
まぁこの女はただ単に奴隷になりますとかそういう言質が欲しいだけな、変なとこでサディスティックな変態に過ぎない。

ヒルデ > ぐっ、と言葉に詰まる少年。
単純な力量で自己主張出来る冒険者稼業とは違って、こういう話術の類はむずかしい。
本当に頭の出来が値段に含まれているのか、ここの奴隷商人に対して疑わしい気持ちがもたげる……
思考を切り替えるよう、かぶりを振るった。
が、相手を怨むような思考回路は持っていない。10の値段に対して10を立て替えてくれ、その差額は労働で返すと言っても、
11の得がなければメリットは無いのだから。となれば、付加価値をアピールするしかない……
そこまで交渉する相手として目の前の女性が適しているか、という点は考える必要が無かった。
次に自分の前に立つ人間が最悪の相手である可能性があると想定できなければ、冒険者はつとまらない。

「……あなたが満足するまで働く、奴隷になります」

解放するために一時的に買い上げてくれ、というのではなく、そうアピールした。
奴隷を求めて来た客にそれ以上率直なアピールは他にない、と少年は考えたのだった。

エキドナ > 最早まともに思考できているのかどうかすら怪しい状態の少年。
奴隷側からの売り込みなのだから、奴隷になりますしか売り文句などありはしないのだが。
せいぜいできるのは売り込む相手を選ぶことくらい。
目の前の女が良い買い手かどうか、今物凄く考えてしまっていることだろう。

「ちゃんと言えたね、えらいえらい」

にっこりと笑った女は、ケースから離れ奴隷商の方へ。
どうやら言わせるだけ言わせてさよなら…みたいなことにはならなそうだ。
そこからはもうトントン拍子だっただろう。
少年の金額をあっさりと支払ってきた女はケースの前に戻り、奴隷商がケースを開けるのを待つ。

「んじゃあ、今からあたし…エキドナ・ローレルがボーヤの飼い主だからね~
それでぇ、ボーヤの名前は?」

とりあえずケースからは自由になった少年に自己紹介がてら名前を尋ねる。
その間奴隷商はちゃっかりしっかり、少年の首に奴隷の身分を示す黒い首輪を取り付ける。
無理やり外そうとする、逃げる、反抗する等によって、爆発するという…あと飼い主の気分次第でとも。
もちろん首輪の説明は、取り付けてから懇切丁寧に。

ヒルデ > そして……一体、どういう合格ラインを越えたのかまでは分からなかったが、
目の前の女性は流れるように速やかな購入手続きを終えた。
この選択肢を選んだのが正しかったのか、というのは考えるだけ野暮というものだろう。
選ばなかった選択肢の向こうにある未来など、分かりはしないのだから。
当然と言えば当然だが、購入者に対するアフターケアとして取り付けられる首輪……
その説明は一応聞かざるを得なかったが、聞いている間、人でも殺せそうな目付きで商人を睨み続ける。
と、名前を聞かされ、また名前を問われると目つきを改めて購入者を見上げ。

「ヒルデです。エキドナ……様」

何でこんなことになってしまったのか、とも考えるだけ無駄なのだが、考えてしまうもの仕方ない。
人生の数奇を怨む気持ちを表には出さず、己もまた名前を名乗り。