2019/11/06 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」にジェイさんが現れました。
ジェイ > 日付が変わる頃合いを過ぎても、この場所の熱気は衰えない。
次々と競りにかけられる奴隷達と、それを買い求める者達。
デモンストレーションか大勢の男のものを受け容れて泣き叫ぶ少女。
檻の中に入れられて、自分の運命を虚ろな瞳で待つ女。
自分の生まれを必死で叫び、騙されたと訴える少年――。
けれど、買い手達にそれは届くことはない。問題は何に使えて、いくらの値がつくかだ。
だから、彼らの悲哀を顧みる者なんていない。
それは、喧騒から少し離れた壁際で競りの様子を見ている男も例外ではなかった。

「なるほど、いや、成る程――噂通りだな。」

この街で取引をするという商人の護衛を引き受けて、その仕事の帰り。
せっかく訪れたのだから市場か酒場を見てみようと思っていたが
その前に、と思って此処に訪れた次第だ。
興味本位の、物見遊山。と言われれば全く否定もできない。
ただ、欲望という名の希望と、絶望の入り混じった熱い、ひたすらに熱い空気。
自分がそこに足を踏み入れるつもりはないが、それを眺めるのはそう悪い気分でもなかった。

ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」にスミさんが現れました。
スミ > 木々はとおに色づき、森の動物たちの多くは早冬の準備にとりかかろうとしている。
そんな時節のしかも真夜中にも関わらず、熱気と人の溢れる都市。
悲壮な声にいやに陽気な声、真剣な競りに群がる声や、ひそひそと何やら内緒の相談をしている囁きの声。
行き交うのは買う方と買われるほう。
大概、どちらかがぎらぎらと欲望をみなぎらせて大股で歩き、相反するように連れられている方はしおれてふらふらと小走り。

「ほう――ほうほう…」

そんな人々の間を急ぐでもなく、ややのんびり歩みを進める薄汚れた姿ひとつ。
己の上半身の倍はあろうかという、これまた薄汚れたリュックを背負って、顔の半分はあろうかという眼鏡越しに辺りを物珍しそうに見ながら歩いている。

「はあ――人里に出たと思ったら、これはまた…」

そんなことをぶつぶつ言いながら澱の中に囚われた人をつぶさに眺め、かつ足を止めなかったものだから、進行方向に黒づくめの人が居るのに気付かない。
そのまま放って置けば、ばすん!と顔面からぶつかって、眼鏡にヒビ位は入るかもしれない。

ジェイ > もし、この世に神がいるのならば、きっとそれはとても平等なのだろう。
善人にも悪人にも強者にも弱者にも、完全無欠に公平で肩入れしない。
例えば、売り手に逆らったのか、ロープを巻いた拳で手ひどく殴られた少女にも
顔を背けながらけれど、ほくそ笑んだ顔で見つめる貴族の女にも
残り少ないだろう、粗末な食事を同じ檻の子供に分け与える痩せた少年にも
誰にも拘わらず、関わらず、ただ、平等に見守るだけ。
――それは、此方に向けて歩いてくる、明らかに進行方向を見ていない女にもだ。

「おっと――危ない。」

それ故に、誰かがなんとかするしかない。
神はありがたくも、ただいるだけのでくのぼうと変わらないのだから。
つまるところ、ぶつかる直前に、手を伸ばしてその身体を受け止めよう。
ちょうど、額の辺りを掌で押しとどめる形だ。
顔面からぶつかられるのも困るし、況や眼鏡が割れたら其方が困るだろう。

「―――失礼。だが、あまりぼんやりしていると、あそこの壇上に上がる羽目になるぞ。」

相手が歩みを止めてくれれば、そんな言葉を添える。
空いた手で指す壇上は、孔という孔を犯された少女が首輪をつけて引っ張られるところだった。

スミ > 「!おぅ??」

額が進行を押しとどめられ、身体の方だけが前に泳ぐ。
そのまま踏み出そうとして突き出た脚が、親切な御人へ悪さをしなかったのも、きっと神のお力とは関係なかったろう。
おっとっと、と今度は背中の荷物に引っ張られるようにお腹から仰け反って、起き上がりこぼしのように何とか体勢を直すと漸く相手を眼鏡の奥から見止めて、にいーと笑った。

「やあやあ、ご親切にどうも。
 ははは。まあ私なぞ商品にしようというもの好きがいればそうなりますかねえ」

言いながら、指されたほうの檀上を見て、流石にすこーし口の端がひきつって、そのまま恩人へと視線を戻す。

「ええと、まあ檀上に上がるとしてもあんな芸当は御免被りたいところですが…
 時に、此処は何処でしょう?
 その前に貴方は何方でしょう?
 ああ、その前に私は『スミ』と申します」

立て続けに言うと、ぺこり、とお辞儀をしようとして背中を折る。
当然のように、そのまま頭から地面に突っ込みそうにふらふら。

ジェイ > 大仰に響いた悲鳴に此方を振り向く者はいなかった。
ついでに慣性の法則で振られた脚を、僅かだけ身を引いて避けよう。
掌を離せば、奇跡的とも表現できるバランスで揺らいで、そして態勢を立て直す相手。
大きな眼鏡の奥の緑色の瞳と、金色の瞳が触れ合う。
もし、魔力を感じる眼鏡に見えるのならば――挨拶に片手を振り返す男はどう見えるか。
恐らくは、数千、数万ピースあるパズルを何十、何百種類も混ぜ合わせたような歪でモザイクのように――。

「そうでもない。綺麗にして、整えればそこそこの値で売れるだろう。」

感情の色合いの薄い声が請け合う。
実際、明るい緑色の瞳が印象的な女性だ。
売ればいくらかの値段がつくだろう。いくらつくかは興味がないし
流石に先ほど伝手ができたばかりの商人に売りつける気もないが。

「それは…どこから説明すればいいのかな?
 ごく一般的な解説をするのならば、此処はバフートの奴隷市場。
 俺はジェイ。今日は、そうだな…見学というところかな。」

問われるままに名前を名乗り返す。
壇上から戻した視線に映るのは、巨大な荷物が揺らいでいる様だろう。
そっと、伸ばした指先が、「失礼」と荷物を圧してバランスを立て直す一助としようと。

「――スミ?
 ああ、ひょっとして“自然地帯の環境と昆虫類の分類について”の作者の?」

名前の響き。
そしてその様相を見て、最近図書館で読んだことのあった論文の名前を口にする。

スミ > 「はっはっは、どうもどうも」

そこそこの値、と言われると褒められでもしたかのように後頭部を掻き掻き笑う。
そうしながら何度も瞬きをしながら男を眼鏡越しに、次いで、その硝子を通さずに上目で見て
またほお――等と言って独り、うんうんと頷いている。
頭から突っ込みそうになった所をまた助けられると、にいーと眼鏡のおくから満面の笑みで見返した。

「いやあ、すみませんねえどうにも。
 はあ、ばふーと、ですか……知りませんでしたなあ」

都市の名前を名を聞けばきょとんと瞬いて言葉を零し、またにまあと笑って後頭部を掻く。

「ジェイさんですか。どうもどうも今後ともよろしくお願いします。
 ああああどうしてどうしてよくご存じでお恥ずかしい!」

まさか、自分の論文読者、しかも題を正確に覚えている相手と出会うとは思っておらず。
荷物のせいかへらへらゆらゆらしていた顔が、一気に赤くなって手で顔を覆う。
ついでにまた背後にふらっと一歩。

「まああの、そうです一応。あんまり見ないでください。
 いやあ、とんとヒトの世界のほうは把握できてなくてですね。
 ついさっきまで近くの山に籠って昆虫採集やら天体観測に勤しんでいたらついに食料も底をつきまして。
 木の実で凌いでいたんですがそろそろ荷物も入りきらなくなってきたので泣く泣く下山をして王都へ向かってたつもりなんですがねえ…
 ああ、ジェイさんは見学ということは、将来はこちらにご就職で?」

まだ赤いのは治っていないし少し冷や汗めいたものもかきつつ。
よっこいしょ、と荷物を背負いなおしながら眼鏡越し、ぱちぱちと何度も見直すように男の顔を見上げた。

ジェイ > 「褒めてはいない」というのはきっと無粋だろう。
言葉を返さなければ、よく笑うその顔が、瞬きながら此方を見る。
眼鏡越しに、それから眼鏡を外して。
それに突っ込む前に、バランスを治す手助けをしておこうと。
満面の笑みに応える表情は、変わらず感情が薄い侭。

「知らなかった…。
 まあ、そういうこともあるだろう。」

此方に歩いてきた調子を思い返せば、納得をせざるを得ない。
此処まで彼女が誰にも、拐わかされなかったのは
ほんの少しだけ神が不公平にサイコロを振ったのだろうか、と。

「学究の徒、という訳ではないがこの間図書館で見かけてな。
 情報量は群を抜いているし、考察も鋭かった。優れた論文だと思う。
 だから、でもないが――「さん」は付けなくて構わない。
 そして、そんなに照れなくてもいいと思うが。」

真っ赤になる彼女とは裏腹に、静かな口調で言葉を紡ぎ返す。
薬学と、生物学、あと魔物学の書物にはできるだけ目を通すようにしている。
書物の内容を思い返すように一瞬宙を彷徨っていた金色の眼差し
それが、冷や汗まで浮かんでいた彼女に戻れば、その言葉に

「いや、此処に就職するつもりはあまりないな。
 見学という言葉が悪かった。仕事の帰りに、少し見に来ただけだよ。
 君風に表現すれば、仕事で商人の護衛にこの街に来て、一夜泊まってから王都に帰る途中だ。
 だから、王都に帰るのならば、護衛代わりに送っていこうか?
 明日になるし、報酬はいただくが。」

就職、の辺りは少しだけ顔を嫌そうに顰めてみせる。
そして告げる提案。あの論文を書ける才が哀れ奴隷都市の闇に消えるのは勿体ない。
 

スミ > 「ははは、ああもう、いやどうも」

赤くなったまま少し俯き、しきりに後頭部と頬を指先で掻く。
まさかあの論文が本になるとは思っていなかったし、こんな所で読者と会ってしまうなんて想定外だ。感想は聞きたいけども、聞きたくないような。
感情のあまり乗らない相手の声を聴いて、そうっと顔を上げて男を見上げる。
相変わらずのぼやける彼の姿は、眼鏡のガラスを透かす場所とそうでない場所とでちぐはぐに分かれる。
口元がムズムズとしてしまうのは、性分と言うもので…

「ああでは、ジェイ君、でどうだろう?
 まあそうだね、照れる程すごい事を書いていたわけでもなし。ああでもいいんだ!感想は今は言わないでくれ!
 そうかそうか、就職の視察でないのならば同道をお願いしようかな。勿論、明日で構わないよ。
 報酬は王都についてからで構わないかな?今手持ちがなくてね。
 キミが昆虫好きなら、今でも結構イイものが提供できるけども」

ふっふっふ、と肩で含み笑いしながら、また背中の荷物を揺する。そのまま仰け反るが流石に今度は、しっかと自分の脚で踏ん張った。
また起き上がりこぼしを演じながら、眼鏡のガラスの隙間から男を伺うように見て、少し首を傾げて見せる。

「キミがもう宿を取っているのなら、空いてそうならそちらに泊りたいな。
―――あとまあ、道々でいいけどもキミの身の上話にも興味があるんだが、そっちも有料かな?」

ジェイ > 金色の瞳が、緑色が浮かべる感情の色合いを観察する。
表情を隠すのは苦手なのか、口元がむずむずする様子。
それを見て少しだけ笑った。困ったような、楽しそうな曖昧な色合い。

「ああ、呼び捨てでも構わないが、それで良い。先生。
 おや――感想は言わなくてもいいのか?」

相手の呼び名を了承。
そして、自分が選んだのはそんな敬称にしておこう。
雇い主になる、というのもある訳であるし。

「――では、契約は成立だな。書面に起こすまでもないだろう。
 期間は明日から、王都の君の目的地に到着するまで。
 報酬は、昆虫――でも構わないが、現金にしておこう。後払いで構わない。
 貴重なサンプルを台無しにするのは勿体ない。」

条件を細かく確認するように口にする。
ゆらり、ゆらりと揺れる視線は相手の起き上がりこぼし姿を見ながら
やっぱり、此方を伺う様子――それにまるで気付かないよう、右手を差し伸べる。
目的はふたつ、重心を安定させることと、契約の証に握手をすること。

「宿は確か空いていたと思うが――宿代は……俺が立て替えておこう。
 身の上話くらいならば構わないが、本当は生体のサンプルが欲しい。
 そう見えるような気がしたのは、は気のせいかな?先生。」

最後の台詞は、少し意地悪い色合いを浮かべてみせよう。
感情の薄い顔、どこまではっきり相手に伝わるかはわかりはしないけれど。
ともあれ、案内してくれ、と言われれば話の続きは道々でも、と歩き始めるのだけれど。

スミ > 相手が『さん付けでなくていい』と言ったが途端に、気安くなる話し言葉不快げな様子もない。
まくし立てた後で仕舞ったと顔を引きつらせていたが、相手の変わらない様子―――ある意味どちらに思われていたとしても解らないという事でもあるのだが―――にほっとした表情を隠そうともせず、赤毛の女はははあと笑う。

「いやあ先生とはね。
 ―――感想はまあ、いつかは聞かせてもらうとも、うん」

こほん、とわざとらしく落ち着いて見せてから軽く咳払い。
それも数秒と持たない。言葉通り正体不明の相手との同道に心が躍っているのがまるわかり。
深夜にもかかわらず、眼鏡の奥で緑の瞳が閃いて金色を矯めつ眇めつ、ふっふっふ、と色気のない笑みが零れる。

「ああ気を使ってくれて済まないね助かるよ。
 そうだね王都の私の宿まで。名前は忘れたけども、まあ王都に着けば何とかなると思うよ」

喋りながら、差し出された右手を取る。感謝の言葉は標本に関することなのか、身体の安定を助けてくれた事へなのか。
白い手はよくよく見れば、爪の間に土が入っていたりするけれども。

「済まないな何から何まで。ちゃんと返せる(とおもう)からまあよろしく頼むよ。
 心配しないでくれ嫌なことはしない主義だよ。
 ただハッキリ言ってもらわなければ解らない時もあるからそれは勘弁してくれるとありがたい。
 ――生体サンプルを呉れるというのならば、有難く貰うとも!」

途中何やら言葉を途切れさせつつもまくし立てて
相手の本気だか冗談だかの申し出には、本気の視線を眼鏡の上から覗かせる。
そうして、足取りを進める男のやや後ろをふらふらと付いていく。
後ろから見たら、薄汚れたリュックに足が生えている様でもある。
宿へ着くまで道々、女のおしゃべりが止むことは当然のようになく
男からそれでも呆れた雰囲気が出なかったならば、それはそれは大したことで――――

ジェイ > 「先生は先生だろう?
 博士号を持っているかどうかまでは確認はしていなかったが」

口調が変わるのに不快な様子はない。
その程度のことを気にするような性分でもない。
そうして、次いだ色気のない笑みと感謝の言葉――に添えた言葉。

「どうやら、王都についてもすぐに契約は終わりとはならなそうだな。
 宿で汚れを落としたら、少しは情報を思い出してくれるかな?」

そうでなければ、あの広い王都を彷徨う羽目になる。
困ったような色を表情に浮かべながら、躊躇いなく白い手を握ろう。
軽く力を込めて、握手をひとつ。

「返せなかった場合は、壇上に上がる覚悟をしておいてくれ。
 ――そうだな。生体サンプルが欲しいなら、君の身体と引き換え。というのはどうだろう?」

警告。それから最後の言葉には明確な笑みの色合いを乗せた。
揶揄るようなそれに相手がどう答えたか。
“ゆっくり考えてくれ”なんて添えてから歩き始めるのだろう。
リュックと黒尽くめの連れ合いは、ともあれ、宿に向かっていく。
絶え間ないおしゃべりにどの辺りで、応えなくなったかは――二人だけが知っている。

ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」からスミさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」からジェイさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」に黒須さんが現れました。
黒須 > (奴隷の売買が謳歌する都市バフート。
ここはどこを見ても同じようにどれ位を売り、金を作ろうとする汚れた都市であった。
ここに居る奴隷は年齢、容姿関係なく売られていた。
ある理由では肉奴隷、ある時には労働力。ある時には実験など、訪れる客の目的は様々だ。
そんなある日、その日はいつも以上に賑わっていた。)

「…」

(集まる群衆の目線の先に居るのは黒須であった。
上裸にされ、手は縄で縛られ、口には犬の躾に使う様な道具が使われており、言葉を発することができなかった。)

『さぁさぁ!今日の目玉商品だ!
こちらは元貧民地区最強と謳われた男、黒須・狼!!
見た目の割に強靭な肉体で、傷知らず!働かせるのには持ってこいの人材だ!!』

(隣に立つ不良風な男。
自分の不意を突き、気絶させては拘束し、腹いせに売ろうとしていたのであった。
群衆の目が痛いほど刺さり、皆ニヤニヤと購入をするかと考えていた。)

「(…だりぃ、めんどうだ…)」

(それでも危機感を持たずいつも通りにしている黒須は、ただただボーッと空を眺める。)

ご案内:「奴隷市場都市バフート」から黒須さんが去りました。