2019/10/23 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷競売所」にジナイアさんが現れました。
ジナイア > 風がゆると吹く、黒い空に星が瞬く秋の夜。
昼間の太陽の温もりが消え去って、冬の冷たさを予感させる冷えた空気が漂い始める頃。
『奴隷都市』と冠する都市の中心部に位置する、一際大きな簡素な石造りの建物内部は昼とも変わらず、多くの人肌の熱気で満たされている。
かん、と高く、ひとつの競りの終わりを告げる硬質の音が響くたび、建物ごと震わすほどの数多のどよめきが外まで溢れる。

その建物の中心たる競売所から、扉ひとつ隔てた外。
石造りの不愛想な外見に似合わず、幾つか絵画や彫刻などの調度品が設えられた、シャンデリアが照らす広間は今、扉の向こうとは打って変わってしんと静けさで満たされている。
一見豪華なサロンのようなその場所に今は、ソファへと埋もれている黒髪の女がひとりだけ。
目の前のローテーブルには、ティーカップがひとつ湯気を立てている。

「……随分と、豪奢な」

床から天井、右から左へと周囲を見渡し、最後にシャンデリアを見上げて独り言ちる。
王都の友人から頼まれた『届け物』を果たした後。
一息つきたいと所望した所、同じ建物内の『カフェ』を案内されたものの……
意味ありげな彫刻が施され、ぴったりと閉ざされた分厚い扉の向こうから漏れてくる熱気で、一息つくどころか落ち着かない。

……気になる、という訳ではない
と思う……