2019/08/10 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にロレッタさんが現れました。
ロレッタ > ――――――深く沈んでいた意識が、不意に浮上する。
どうやらどこか、硬い床の上に蹲る格好で眠っていたらしい。
幾度か瞬き、両手で目許を擦って、そっと上体を起こす。

目の前に、頑丈そうな鉄格子があった。
上体を起こした際に手をついたのは、やはり硬い金属製の床で。
己が狭い―――華奢な小娘一人入れておくには、充分な大きさではあったけれど―――
兎に角、立ち上がれるほど広くはない檻の中に居るのだと、やや遅れて理解する。

先刻、覚醒を促したのは、どうやら隣の檻の前で始まった商談の所為らしい。
己と大差ない年頃の少女が、恐ろしくごつい体格の男に買われようとしている。
にやにや笑っている商人と客、嗚咽すら洩らせないほど怯え切っている少女。
そんな光景を他人事のように眺めながら、ふと、己が靴を履いていないことに気づいた。

「はだし……」

脱げてしまったのか、逃げられぬように脱がされたのか。
いずれにしても、己の首には隣の少女と同じ、売り物を示す首輪が填まり、
後ろには絶妙な長さのリードが伸びていて、碌に身動きも出来なさそうな。

どこでどう間違えて、こんなことになったのか。
仔細は全く不明だけれど、取り敢えず。
己は奴隷として、売りに出されているらしかった。
今のところ、誰かの目に止まった気配はないようだけれど。
ぼんやりしていては拙いのでは、と、少し、思わないでもない状況だった。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……」

バフートのとある店の前で、男が立ち止まった。
ちら、と店の看板……っていうか。木の板だ。
木の板を見れば店名と、『初物に自信アリ!』とか書いてる。
男、呆れてため息。初物に自信アリって。魚類とか旬の野菜売ってんじゃないんだぞ? と思うが。
男はそのまま、とある檻へと近づく。

「……よぉ、お嬢ちゃん」

その檻にいる少女は、周りの怯えている少女とは少し様子が違って。
あぁ、今目が覚めたばかりなのかな、なんて思いつつ。
男は、その少女に声をかける。

「キミ。なんかこの場に慣れてないっぽいな。
 純粋な奴隷じゃなくて、つかまった口か?」

周囲の客や、用心棒の様子など気にせず。
男は、少女にだけ、声をかける。
その様子は、どこか。本当に、ただ買い物に来た客のように。
やる気がないというか。そんな感じだった。

ロレッタ > 見るとはなし、隣の様子を眺めていた視界に、ふっと影が差す。
感情の色が見えない面持ちで、影を描いた主へと振り仰ぐ。
掛けられた声に対する反応と言えば、大きな空色の瞬きひとつ。

「なれ、…れ、て、ない……?」

フードに隠れていない白銀色が、さらさらと左方へ傾ぐ。
たどたどしい、言葉とも呼べぬ断片に、またひとつ瞬きを添えて。
今、正に引き摺り出されようとしている隣の少女の方を、
無感動に一瞥してから、目の前の男に視線を戻し。

「ローラは、どれい、じゃない。
 ここ、知らない場所……ローラ、教会?で、寝てただけ。
 起きたら、ここに居た」

この町ではありふれている、とは言え、間違いなく悲劇の筈だけれど。
語る声音にも表情にも、悲壮感は欠片も見えず。

「そういうお前は、ここで何してる、の?」

セイン=ディバン > 男の姿を見ても、声を聞いても怯えた様子も無い。
やはり、明らかに奴隷の反応ではなく。

「……ん~。なんとも。
 キミ、大丈夫か?」

帰ってきた言葉はすごいのんびりしてて。
男は、色々と心配になるのだが。

「ローラっていうのか。
 ……うん。まぁ、そんなこったろうとは思ってた。
 連れ去られたか、拉致か、誘拐か。まぁ、どれでもいっしょか」

相手の名前を記憶しつつ、まぁそんなことだろうな、と考える男。
どうしたものか、と考えていた男だが。
逆に問われれば。

「いや、まぁ。奴隷を買うか。
 それか、それに関した商品を買いに来てたんだけど。
 あぁ、オレはセイン=ディバン。冒険者だ」

檻越しに名乗りつつ、周囲を見る男。
案外にこの店は人気のようで。このままでは、この少女もどこかに買われていくかもしれない。
そう考え、男は少女相手に指を3つ立てる。

「ローラちゃん。提案なんだが。このままだとキミ、まぁ商品として買われるわなぁ。
 で、だ。1。オレに買われて、オレの家でメイドをやる。
 2。オレに買われて、自由の身になる。
 3。オレみたいな怪しい男に買われるのはゴメンだ。
 どれがいい?」

と。3つの提案をしてみせる。あとは相手の選択次第だ、とばかりに。

ロレッタ > 隣の檻前で繰り広げられている大騒ぎとは、好対照、と言えるかどうか。
裸足に首輪、リード付きで檻に閉じ込められているにしては、緩過ぎる反応をしているだろう。
けれど正直な話、奴隷という言葉の意味が、まず、理解出来ているとは言い難く。
加えて、何か薬を使われたかも知れない深い眠りの後では、如何にも頭の回転は鈍かった。

「ローラは、大丈夫……多分。
 未だ眠いけど、痛い所もないし」

まるで己自身に言い聞かせるように、一人、深く頷いて。
己が発した問いに対する、男の答えを待つ―――が。

「せい…ん、……でぃば………」

人の名前を覚えるのは苦手だ、というよりも、あまり名乗られた経験がない。
舌足らずにその名を復唱してみたが、ぼうけんしゃ、なる単語は意味不明。
ほんの少し、眉間に縦皴を寄せて首を傾げる。

目の前に示された指先を、やや寄り目気味になりながら凝視しつつ、
頭の無事を疑われそうな長さの沈黙を経て。

「自分で自分を、怪しい、って言う男の言葉、信じて良いのか分からない。
 それにローラは、めい、ど?なんて、やったこと、ない。
 ………でも」

嘘を吐く、誤魔化す、といった高等技術は、生憎持ち合わせていない。
だから何処までも素直に、率直に、真っ直ぐ男を見上げて。

「自由、って何をすれば良いのかも、ローラは分からない。
 お前が、それを教えてくれるなら、…買われて、やっても良い」

結局、お前呼びに戻ってしまっていたが。
己なりの選択は、示した心算である。

セイン=ディバン > 男も、奴隷を買った経験はあるし。今でも家には奴隷メイドがいる。
だからこそ、もしかしたらこの少女が。
なにかの薬品使われ。思考を阻害されている可能性があるのにも気付いていた。

「そっか。ならまぁ、まず最悪の状況ではなさそうだな」

相手の発言から、少し安堵する男。
体が痛くない、というのは良いことだ。
少なくとも。現状は。

「……いや、覚えられなかったら。
 オッサン、とか。オマエ、とかでいいよ」

決して長い名前ではないが。相手が人の名前を覚えられないタイプなのでは、と思い。
名前など、覚えなくてもいいよ、と言う男。

「ははは、そりゃそうだ。
 ……そうだな。じゃあ、こうしよう。
 とりあえず、キミのことを買って、助けてやる。
 その後のことは、相談、ってことで」

素直な物言いに、男が笑い。近くの商人に代金を払う男。
商人は、ニコニコと笑いつつ、檻の鍵を開け、少女を外へ出そうとする。
少女が裸足なのに気付いていた男は、空間から呪文で少女用の靴を取り出し、相手に差し出すが。

「あぁ、そうだ。この段階になってから言うのはズルいけどさ。
 オレ、今からキミを抱こうかと思っているんだけど。
 もしもイヤなら言ってくれ。その時は、まぁ。
 ガマンするからさ」

少女の鎖が外されたのなら、男は手を差し出し。
そして、相手が付いてくるというのなら。
近場の宿に向かうであろう。相談と。秘め事を行う為に。

ロレッタ > 最悪、というのがどんなものか想像もつかないが、己はまたしても頷く。
既に逃亡者を演じた経験がある身としては、身体が痛くないのは吉兆だ。
痛かったら走れないし、逃げられないのだから。

「うん。良いこと、だと思う。
 ……覚え、られないんじゃ、なくて、…お前の、名前、言い難い、んだ。」

とうとう、見ず知らずの男に責任転嫁を図った。
しかも、己を助けてくれようという男にだ。
―――これで笑える目の前の男は、実はかなり、大人物なのかも知れない。

改めて男の示した提案は、聞いた限り、己に不利益は無さそうであり。
首輪の重苦しい感触にも辟易していた己は、首輪を両手で引っ張りながら、またひとつ頷いた。

「分かった、……有難う」

ふたつの言葉の間に、随分間が空いたのは、やはり頭の回転が鈍っているからか。
何にしろ、男がそれなりの金を支払えば、商人は喜んで、この仏頂面の奴隷を引き渡す。
差し出された靴を履く時に、少しだけよろめいたものの―――
反射的に伸ばしかけた手は、男の言葉に一瞬、空で止まった。

「……ローラ、…せいん?の、奴隷には、ならないよ」

奴隷、というのが、首輪を着けて、誰かに飼われる存在であるのなら。
目の前の男に限らず、誰の奴隷にもなる気はない。

しかし。

「でも、ローラ、せいんに返すお金、ない。
 だから、……ずるい、と思うけど、今は許してやる」

買われた奴隷の台詞にも、助けられた弱者の台詞にも聞こえないだろうが。
真っ直ぐ見つめる視線と共に、差し出された手に俺の手を、存在を預ける。
何処へ連れて行くのも、何をするのも、男の思う通りに、とでも――――――。

セイン=ディバン > 奴隷の中には、逃げ出せないよう、足を負傷させられたりする者も居る。
逃亡阻止の為ならまだしも、中には、愛玩目的でそういった風にさせられている者も。
そう考えれば、相手はまだ、幸運だったのかな、と思いつつ。

「そうだな。
 ……そうか? そうか……。
 まぁ、だったらスマンな」

相手の言葉に同意していた男だが。
名前が言いづらい、と言われれば。
少し、しょんぼりとした様子を見せた。
しかし、さして気にしないようにしながら、相手の身柄を買い受け。

「礼を言うのは、今後のことを話してからでいいよ」

まだその先がどうなるのか分からないのだから、と男は苦笑しつつ。
買い物終了。さぁ、行こうか、と手を伸ばすものの。
相手が動きを止めたのを見て、ん? と首をかしげる。

「……ははははは、ホント、ローラは真っ直ぐに物を言うなぁ。
 ま、許してくれるなら助かる。
 あぁそれと。金は返さなくてもいいからな?」

くつくつと笑いつつ、相手の手を引き、宿に向かう男。
そうして、部屋に着けば。男はコートを脱ぎ、執事服になり。
ベッドへと腰掛ける。

「さて。じゃあまぁ服を脱いでこっちに来てもらいたいんだが……。
 まず、ウチでメイドをやる、ってなると。まぁ、実質雇用契約とはいえ、奴隷みたいなもんだ。
 買った以上キミを手放すつもりも無いし。奴隷になりたくないキミにしてみりゃ、オススメはできないな。
 なんで。ここで一回オレに抱かれてくれたら。
 キミに、ある程度のお金を渡して、服とか、旅用の装備も買ってあげる。
 後はまぁ、キミがしたいようにすればいい。旅をするも。
 どこかの町で平凡に暮らすも。本当にキミの自由。
 これでどうだい?」

ゆったりと執事服を脱ぎながら笑う男。
相手の反応や、いかに。

ロレッタ > 「……別に、謝らなくても、良い」

物言いや態度が悪くとも、人の心の機微に無関心、と言う程でもなく。
男の表情が少しだけ曇って見えたので、慌ててひと言添える。
頭の中で男の名を繰り返し、きちんと呼ぶべくイメージトレーニングもしてみた。
と、いうことで、――――――手を引かれて何処かの部屋へ辿り着く頃には、
何とか、お前、ではなく、セイン、と呼べるようになっている筈。
呼び捨てなのは、変わりない、とは言え。

実は宿に泊まったことも、男と部屋で二人きりになったこともなく、
早速ベッドに腰かけて寛ぎモードの男に比べると、己は未だ表情も硬い。
戸口近くに佇んで、ローブのごわつく生地を、掴んだり、離したりと落ち着かなげに。
話を聞いていない訳では、勿論、無いが。

「――――――セインは、お金持ち、か」

たっぷり間を措いて、第一声がこれである。
凄いな、と吐息交じりに呟くが、顔は仏頂面から微動だにしておらず。
ローブを纏った姿の儘で、男の正面へ歩み寄り。

「…その条件は、ローラに、都合が良過ぎると思う。
 セインに、得するところ、あるように聞こえない。
 確かに、ローラ、売り物になってた、けど……
 ……男の悦ばせかた、とか、そういうこと、期待、されても困る」

作法もマナーも手順も、何も知らない。
それなのに、ただ一度の行為に、それほどの出資をして貰う価値があるのか。
分からないから、即答が出来なかった。
心なし、不安げな眼差しで男を見つめて反応を窺う。

セイン=ディバン > 「そう言ってもらえると助かるねぇ。
 ……そっか。言いづらいかぁ……」

相手のフォローに苦笑の男。
ほかでもない。実はこの名前は男が考えた偽名。
本名なんてとっくに捨てて、今や思い出せないくらいに馴染んでいる名なので。
言いづらい、というのは。今後、名を考えねばならぬか? と。
そんなことすら考え始める。

「まぁ、それなりだ。
 冒険者ってのは結構稼げるんだよ。稼げる時は、だけどな」

相手の第一声に、にっこりと笑う男。
もちろん、稼げない時はそりゃあもう貧困に窮することになるのだが。
その収入のメリハリこそが、ある種の楽しみであるわけなので。

「そうでもないさ。ほぼ逃げられない状況で、体を貪ろう、ってんだ。
 キミにとってもクソみたいな状況なのは変わりないだろ?
 オレとしちゃあ、キミのぴっちぴちの肌や『中』を味わえるし。
 ……それに。別段、悦ばせ方なんてのも、期待はしてない」

相手が不安そうな様子なのを見て、男が笑う。
ぽんぽん、とベッドを叩き、隣に座りなよ、と促し。

「それに、いざ装備を整えて旅立った時。
 キミの先に何が待ち受けてるのかも分からないわけだ。
 自由とは、リスクとリターン、両方あってのものだしな。
 ただまぁ? キミが色々な人と出会って。様々な経験をして。
 んで、いろんなことを学んだ後に、オレに再会した時。
 そん時に、恩返ししてくれりゃあ全然構わないぜ?」

あくまでも優しく笑いながら、服を脱ぐ男。
上半身はすでに裸身。多くの傷が刻まれた、筋肉質な体を曝け出しつつ。
男は、下も脱いでしまおう、と動いている。
もしも相手が行為を拒絶するのならココのタイミングだ。
ここで、したくない、といえば。男はあっさりと行為を諦めるだろう。

ロレッタ > 「――――――だいじょ、ぶ。少し、慣れた」

此方は未だ真顔で、己なりに安心させようという心算か、うんうんと頷いてやる。
詰まるところ、言い難さの原因は寝起きの己の不調であるのだから。
―――そして多分、今、フルネームを名乗れと言われたら、
己は自らの名で舌を噛むに違い無く。

「ぼうけん、しゃ…は、稼げる…。
 分かった、……覚えておく」

更に、何か間違えた覚え方をしたような。
浮き沈みの激しい、ハイリスク・ハイリターンの職業、の存在を理解するのは、
未だ、聊か早い、ということだろう。

―――とす、ん。
男の直ぐ隣へ、素直に腰を降ろして。
ぼうけんしゃ、というのは良く怪我をするものなのだろうか、古傷に彩られた男の身体を、
好奇心の赴く儘にじっと観察しながら―――そっと、口を開き。

「く………そ?な、状況、って、知らない、言葉だ。
 でも……あそこに居たら、ローラは、隣の子みたいになってた、よね。
 そっちの方が、ずっと、くそ、なんじゃないか?」

そこにはきっと、交渉の余地も、意志の確認も無い。
目の前の男が、善人か、悪人か、未だ判別は出来ないけれど。
少なくとも、一方的に貪られる弱者の末路は、辿らずに済むのだろう。
ならば―――男をじっと凝視していた目を、静かに閉じて深呼吸。
ローブの生地を握り締めていた両手を、揃えた膝の上に置いて。

「……ロレッタ・ギルフォイル。
 それが、貴方に捧げられる供物の、本当の名前、だよ。
 ――――――少しなら、痛く、しても良い、から……出来るだけ綺麗に、食べて」

本当の名前と、自らに課されていた役割と。
そのふたつを告げて、ひと時の服従を誓おう。
告げる声の語尾が、情け無く震えていたかも知れないけれど。

セイン=ディバン > 「おぉ、そうか?
 いやぁ、だったら良かった」

相手の更なるフォローに、少し嬉しそうな表情の男。
色々と立場もあるから、そう簡単に名を変えれない身としては。
覚えてもらえるのは楽でよかった。

「まぁ、人と、時期と、仕事によるけどな。
 ハハハ。ローラも冒険者になる、なんてのもアリかもな」

相手が一つ。学んだのに対し、男は微笑み、そう言ってみる。
そもそも、冒険者という職業は、何か一つでも芸があれば成り立つ。
それこそ……掃除が得意だ、とかでも全然問題ないのである。
隣に座った相手の頭を、軽く撫でる男。
安心させようという意図もあるし。軽い、愛撫の意図もあった。
しかし、触れた瞬間、男は相手の体から何かを感じ取った。
それは、魔王の夫であり、超越者と何度も戦った男だからこそ気付けたものなのだが。
なにか。純粋な人とは違う力のありようのような感覚であった。

「ん、そりゃ失礼。口汚かったか。
 ……そうだなぁ。そうかもな。
 買われた奴隷が全員不幸だとは言わないけど。
 大抵は、幸せにはなれないだろうからな」

良く見てるな、と。男は相手の言葉に頷く。
相手の言う通り。こうして、交渉が成り立つ分。
男に買われたことは、相手にとっては多少は幸せなのかもしれない。

「カッコイイ名前だな!? そっか。ロレッタ、か。
 あぁ、覚えたぜ。しかし、供物って……。
 まぁ、いいか。んじゃあ……」

相手の名前が、自分で考えた偽名よりかっこよかったから、つい反応してしまうが。
男は、相手の言葉に頷き、優しく、唇を重ね。そして。
ゆっくり。ゆっくりと、ローブに手をかけていく。
するすると脱がせつつ。男は、自身が酷く興奮していることに気が付いた。

ロレッタ > まさか、男が己の発言を気にして、別の名まで考えかけたとは知る由も無い。
盛られたかも知れない薬の影響も、そろそろ薄れてきているのか、
意識は徐々にクリアになっている。
大丈夫だという代わりに、もう一度頷き返して。

「ぼうけんしゃ、って……何、する仕事か分からない。
 でも、お金は欲しい、から……考えて、みる」

実際問題として、己に務まる職業とは思えないが―――知らない、ということは恐ろしいもので。
真顔で、半ば本気で、そういう身の振り方を思い描いてもいた。
しかし―――男の掌が、頭に触れて、そっと滑った瞬間。

ふわり、漂うのは、和えかな花の香り。
色気の欠片も無い、簡素なローブを纏った小娘の姿とは、恐らく不釣り合いな程の―――

「……しあわせ、がどんなものかも、ローラは、知らない。
 でも、ローラが、供物の役目、果たしたら……皆が、しあわせになる、って、言ってた。
 だから、……でも、それなら、ローラは、ロレッタ、は、」

――――――しあわせ、にする相手は、己自身で決めたい。

結局、今の己に理解出来て、この手で選び取れる自由は、その程度のもの。
目の前の男にとって、何がしあわせになるのかも知らないけれど、
―――それでも、捧げよう、と思ったその瞬間から。
己の身体は、ますます艶やかな香りを放ち始めるだろう。
今はただ、目の前の男の為だけに―――何処までも白い、素肌を晒して。
セイン、と呼ぶ声も、唇の色も、質感も、きっと何もかもが、
―――違う、と、悟られてしまう程に。

セイン=ディバン > 相手の様子が。どこか、少しずつ回復していっていることに気付き。
男は、笑顔のまま内心、安堵する。
どうやら、この少女が捕らえられていた店は。そこまであくどい店でもなかったようだな、と。

「ん~。色々だぞ? 冒険して財宝見つけたり。
 魔物退治したり。後は、俺がやったのだと、ゴミ拾いとか、荷物整理とか」

本当に、なんでもやるのである。金さえ貰えれば、仕事問わず。
それこそが、冒険者の本質である。
そうして、相手の頭に触れた瞬間。
何らかの力と、花の香りを感じた。
その違和感は、男にとっては微かなものであったが。

「……? そう、なのか?
 うん……?
 ……あー。いや、まぁ」

その違和感が、相手の言葉でさらに増大する。
どこか、浮世離れしすぎている。あまりにも、おかしな言葉。
しかし、男はそれに関して、一度思考を放棄した。
この場で追求することが正しいとは思えなかったからだ。
なので、男は相手とキスをしつつ。
相手が裸身晒せば。ゆったりとベッドに押し倒し。そして……。
男もまた全裸になり。既に猛っている、恐ろしく巨大なペニスを取り出した。

「……ロレッタ。ちょっと、ゴメンな?」

そう耳元で囁き、相手の足を大きく開かせようとする男。
もしも抵抗が無ければ、すぐにでも。相手のクレパスへと口付け、舌で愛撫を始めるだろう。

ロレッタ > ぼうけんしゃ、が何をするものなのか知らないのと同様、
奴隷を扱う商人の、あるいは店の優劣も、己には分からない。
けれど、少しずつ頭が、普段の回転を始めている。
何処か鈍かった四肢の感覚も戻り、―――靴は、己の意志で脱ぎ落として。

「ざい、ほう……まもの、……ゴミ、拾い?
 本当に、色々な仕事、するんだね。
 ローラは、……ローラに、出来る、の……は、――――――」

そこで、ほんの一瞬。
こめかみの辺りが、微かな疼痛を伝えてくる。
何かとても酷いことを、昔、誰かに言われた気がした。
誰に、何と言われたのか、思い出す前に男の唇が、己のそれを塞いだから、
掻き集めかけた記憶の断片は、さっと霧散してしまったけれど。

「せ………いん、セイン、……ん、っ………
 え、あ、……な、に、する……の、――――――っ、っんん……!」

裸の背が柔らかなシーツに沈み、男の気配を、体温を、より近しく感じて。
覚悟を決めた筈が、男の前で足を開く、その体勢はやはり、どうしても恥ずかしくて。
もう、とても開けられない、と思った目を、大きく見開いてしまったのは、
信じられないところへ男の吐息を、それから、舌先を感じた所為。

「や―――――っや、ぁ、セイン、それ、ゃあ、っ……!
 そ、んなと……こ、きたな、い、やだ、舐めちゃ、っ、」

漂う花の香を裏切るよう、露わになったそこは幼げな佇まいで、
未だ、一度も暴かれたことが無い、と、女に慣れた男なら直ぐ知れるだろう。
産毛すら見当たらない滑らかな恥丘、慎ましく閉ざされた秘裂は、
それでも、ゆる、と舐られれば淡く解けて、初々しい桃色の粘膜を覗かせる。
恥ずかしくて、居た堪れなくて、弱々しく抗い身をくねらせる間にも、
少しずつ綻び、戦慄き始めた花弁の奥からは、つとひと筋、唾液とは違う雫が伝い―――。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からロレッタさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からセイン=ディバンさんが去りました。