2019/06/09 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート オークション会場」にルドミラさんが現れました。
ルドミラ > 奴隷商ギルドが所有する屋敷の地下は今夜、陰にこもった高揚感で満ちていた。

『エントリーナンバー28、砂漠の国の元巫女。褐色肌の美しい18歳の生娘です。
さあ入札は──』

舞台上の鎖を打たれた者たちに次々と値段がつき、落札されてゆく。
買う者と売る者、買われる者の三種の人間しかいないオークション会場。
王都の娼館主である黒髪の女は、買う者と売る者の双方として、この場所に来ていた。
掘り出し物があれば無論買う気。一方で愛玩物として仕込み、磨きたてた奴隷の何人かを出品しており、
その売れ行きを見守るために。あるいは、市場調査の一環としても。
ウエストラインで引き絞られた黒ドレスの女の影は、
貴族や商人など富裕層中心と思われる客たちの群れの、一部となっている。

「まあ、お久しぶり。お元気そうね、またいずれカードでも。それと、今夜の幸運を」

出入り自由の客席へ向かいがてら、顔見知りを見つけて短く挨拶を交わす。
が、高額落札者が出たらしく、その後半は周囲のどよめきにかき消された。
お互い苦笑して目礼し、通り過ぎる間にも出品は続いている。
明るいのは舞台の上だけ。半ば影に沈んだ客席の、あるいは欲にぎらつく、
あるいは物見高い目つきの、あるいは隣席と談笑する者の顔、顔、顔。

ルドミラ > 魔族である女には、この場の猥雑で淀んだ雰囲気はいかにも心地よい。
人間が高原の清涼な空気を喜ぶように、自分たちにはヒトの貪欲、野卑さ、
見栄や嫉妬、ありとあらゆる悪徳が渦巻く巷でこそ、深呼吸でも繰り返したくなるというもの。
チュールごしの黒目がちの瞳は、欲望を剥き出しにする人々のひとりひとりを
慈しむような色さえ浮かべていた。

人波の間を縫って向かう先は、舞台から10列目あたりの端の席。
かなりの混雑ぶりだ。屋敷の外で待機させている護衛を引き連れていたら、
きっと顰蹙ものであったろう。
席に着くと時折扇を使いながら、オークションの行方を見守ることにする。