2019/05/21 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 港湾都市に向かう隊商と別れ、九頭龍山脈の調査に向かって街道筋に戻ったのが今朝方のこと。
その足は、隊商を追うでもなく、王都に戻るでもなく、近くに存在する背徳の街に向けられた。
自分自身でも奴隷を扱う事があるから、訪問するのは初めてではない。

「嗚呼、此処の乱痴気騒ぎは酷いものじゃと思うておったが、昨今の王都も他所のことを言えぬなぁ。」

視線は通りの少し先、奴隷市場の主要街区に向けられている。
夜半を過ぎて、逆に賑わいを増した様子に小さく嘆息。
傍観者を気取る小さな存在は、それでもこの街の流儀から無縁ではいられない。
取引先の挨拶回りついでに、顔馴染みの奴隷商人の出店を訪れたら、木の椅子ではなく肉の椅子を勧められた。
ミレー族と思しき獣の耳が見える”椅子”は、接客用にと身奇麗にされているようで不快感は覚えない。
四つん這いにした背に乗るよう説明を受けたものの、それはそれで座り心地が悪かろうと、子供子供した体は奴隷の膝の上にちょこんと腰掛けている。

ホウセン > 年の頃、二十歳手前と思しき奴隷の胸に後頭部を預ける。
それなりに弾力を主張するヘッドレストは心地良く、もうちっと熟れた頃合の方が…とは、思っても言わぬ。
奴隷は奴隷として扱うが、必要以上に過酷に接しても益はあるまいと。
対面にいる商人は、奴隷の売買よりも、奴隷の略奪に向いていそうな屈強な大男。
王都の現状は、噂話程度に耳にしてはいるようだが、見聞きしている者の一次情報は欲しいらしい。

「ん…?
 お主も聞いておろうが、北方帝国の公主が大挙してやって来たことと、影響力の揺り戻しを狙っておる何処ぞの教団がのぅ。
 ある意味、性の大盤振る舞いじゃ。
 建国祭の時期であっても、斯様な乱痴気騒ぎにはなるまいよ。」

情報を聞き出そうとする合いの手に乗り、サラリと現状を口にした。
それらに浴しているのは、権力と財力を持つものにある程度限定されているとしても、性の紊乱は著しいと。

「…お主、まさかとは思うが、北方帝国の者を奴隷として仕入れられぬか等と考えておるまいのぅ?」

黒い瞳が、じとっと。
さりとて、唇は弧を描き、悪趣味な共犯者を見つけたかのような表情。

ホウセン > 椅子にされている奴隷の太腿に掛かる負担は、たいした物ではあるまい。
上等な生地を使った装束がやや重いが、袖を通している妖仙自身が軽量級なのだから。
だからという話でもなかろうが、威厳という単語には縁遠く。
膝の上に載せるだけでは済まず、知らず知らずの内に細い身体には腕が回されて膝の上抱っこの風情。

「公主は言うに及ばず、その付き添いの者を含めれば、確かに例がないぐらいの帝国人が王都にはおるが…
 嗚呼、そうか。
 戦が止んで、ハテグでの捕虜を奴隷に横流しするのが難しゅうなったのじゃろう。」

その癖、シェンヤンムーブメントで需要そのものは上がっている。
商いをする者ならば、相場が上がっている時に在庫切れというのは精神衛生上宜しくない。
伝がない訳でもないが…と思案する表情は、横合いから伸びる指に頬をつつかれて端整とはいかず。
主人の客人だというのに、愛玩動物が如き扱いとなるのはどういうことか。

ホウセン > 多少の無礼にとやかく言うのも雅量に欠けると、聊か達観気味の顔つきで奴隷の悪戯を許容する。
妖仙が何も言わぬせいで、奴隷商人も何も言わない。
大方、弟なり妹なりと生き別れている奴隷の精神安定に一役買えばよいとでも考えているのだろう。
妖仙の指摘に、大柄な男は素直に首肯して。
ふんと、小さく鼻息を吐き、思案顔。

「確かに需要は見込めはしようが、外交使節としての性質を有しておる者もおるからのぅ。
 下手に手を出せば縛り首じゃ。」

特に厭戦派からしたら、今の和平ムードに水を差す輩は、鏖殺の対象でしかあるまい。
忠告は忠告だが、何をしても計画を押し留めようという熱意には乏しい。
一つには、奴隷商人が如何なる策を練るのかに興味が無いでもなかったこと。
もう一つは――

「えぇい、儂を見るでない。」

――妖仙には、ある程度算段が立てられること。
取引のある奴隷商は、その辺りを見込んで、胸襟を開いたのだと察せて。

「ちぃと考える。
 お主は、客の呼び込みでもしておるが良いわ。」

都合よく使われるのも癪だが、考えた策を実験したい心地もある。
その二律背反に落とし所を作る為に、しっしっと店主を追い払う仕草。
事情を知らぬ客が訪れたのなら、ミレー族の奴隷の膝の上に、上等な帝国人の奴隷が乗っかっているように勘違いされても仕方なかろう。

ホウセン > これ以上は、此処にいても益はなかろう。
そう判断すると、”椅子”から腰を浮かし…

「気が向いたら、また連絡させてもらおうかのぅ。
 そうそう、この奴隷、儂に懐いておるようじゃから今宵一晩借りていくのじゃ。」

けろっと言い放った数分後、奴隷市場に程近い宿へと引き上げて――

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からホウセンさんが去りました。