2019/04/03 のログ
ご案内:「奴隷市場」にロズさんが現れました。
ロズ > 「だーかーら、荷を追加するなら追加のお給金をいただけませんかねぇ!?」

市場の片隅で奴隷商人と言い合っている一人の傭兵がいた。
奴隷の運搬のために雇われたのだが、雇い主は追加で荷を増やしたいと口喧しく強請っている。
だがこちらも譲らない。荷が増えればリスクも増える。ならば給金も増えるのが道理だ。
だというのに道理も叩けば引っ込むと思っているのか雇い主は一歩も譲らない。
地面に叩きつけた紙巻の火をぐりぐりと踵で踏み消しながら傭兵は続けた。

「いい加減にしねぇとこの仕事から降りるぞ!」

自爆めいた脅し文句だが効果はあった。訳有りの奴隷を運ぶ商人にわざわざ雇われたがる奴は少ない。
そのことを痛感しているのか顔を青くして押し黙る商人を、親の仇のように睨みつけ続ける。
周囲では商人の荷である奴隷達が所在無さげに顔を見合わせいた。

ロズ > ついには根負けした商人が帳簿をめくり、追加の給金をなんとか捻出しようと苦心し始めた。
とりあずはこんなところだろうと鼻を鳴らして腕を組む。傭兵は舐められたら負けだ。
あえて乱暴に口調を崩しているのもそのためだった。強そうに見えれば高値がつく。

「そんなに金に困ってるんなら現物支給でも構わねぇですぜ」

あまりに長く悩み続ける商人にそう助け舟を出す。親指で示したのは周囲の奴隷達だ。
一見すると見目麗しい逸品揃いだが、どうも出自や何やらに訳があるらしい。
訳有りならば安かろう悪かろうだと思っていたが、首から下げた木片に刻印された値段は結構なものだった。

「あー……とっさの思いつきだが悪くないな。奴隷か」

身の回りの世話から下の世話までなんでもござれが奴隷というものだ。
戦場を連れ回したところで誰も文句を言わない便利な道具。そんな認識だった。

ロズ > 「はあ? いくらなんでも高過ぎる? ま、そうでしょうな」

こっちだって奴隷を一人丸ごとぽんと寄越されるとは思っちゃいない。
味見でもさせてくれたら一晩の遊び代が浮く。二晩でもいい。いや三日三晩で手を打とうじゃないか。
そう告げると「マジかこいつ」みたいな顔で若干引かれた。舐められるよりはいいが。

「どっちでもいいですぜ。こっちとしては。で、どうすんです?」

腕を組み直して返答を待った。そろそろ出発しなければ夜盗が起き出す頃合だ。
暇潰しに奴隷達の顔を眺めていった。見覚えのある顔が数人いた。ちっ、世の無常にも飽きてきたな。

ロズ > 「――時間だな。割が合わなくなった。俺は降りる」

月も雲に隠れれば夜盗が起き出す。これだけの人数を運ぶとなると万が一があった。
流石に護衛が抜けて搬出を強行することもないだろう。次はもっとマシな傭兵を雇えよと忠告をした。
見覚えのある顔から無理やり視線を引き剥がし、踵を返す。

「…………」

幼い頃の憧憬に背を向け、奴隷市場を後にした。

ご案内:「奴隷市場」からロズさんが去りました。