2019/03/30 のログ
■ナイン > (彼女を見送り…深い吐息と共に、ソファへと身を沈めれば。
父の代より見知った店主が、したり顔で茶を淹れて来る。
湯気の立つカップを置き乍ら。さりげのない一言を添えるのだ…「なかなかの仲人振りでした」、と。)
――っは、ん。伯は随分と金を出してくれたからな?
今後の為にも、恩を売っておくに越した事はない…だろう?
(ふて腐れたように、頬を膨らませた。
――――たった一つだけ。かの少女に告げなかった事が有る。
辺境伯が彼女を望んだのは、奴隷となった貴族娘を玩弄する為でも、更なる破滅を与える為でもない。
先日来の資金供出に併せ、己が伯から頼まれたのは。思い出すだに、何ともこっ恥ずかしい唯一つ。
「王都に在った今迄は。とうとう、かの女性に想いを告げる機会を得られなかった。
叶うなら、今からでも。間に合わないとしても、彼女を迎え入れたい」と。
形式上は奴隷と主人。だが其処から、全てを覆してみせると。
その為に、己は。馴染みの店に言伝を送り、優先的に彼女を仕入れさせた。常連の立場を利用し、仕入れ後直ぐに買い取った。
――なるほど、店主の言う通り。これでは仲人と呼ばれても仕方有るまい。
彼女が、遠き地にて、かの伯の情愛を得て。再び心を取り戻すか。
向けられた想いを受け容れ、二人が同じ道行きを選択出来るか。
そして、此の国の貴族たる、血に対する誇りを抱き直すかは……まぁ、後は当人達の問題だ。)
■ナイン > (残念乍ら。此の都市で売りに出される、他の姫君達令嬢達に関して迄は。責任など持ちようがない。
その内一人を、手段として、救い上げたに過ぎず。救う事自体は、決して、目的とは成り得ないのだから。)
――――後は。利用価値が在るか、どうか。
そして…潰えるには惜しいと。絶やすべきではないと。思わせてくれるか否か。それだけだろう?
(直ぐ様答えの出る者達は、多くはあるまい。
否、答えなど示せぬ侭、この侭堕ち消える者も多い筈。
願わくば、出来るだけ救われろ等と。口が裂けても、言う資格など無いご都合めいた夢物語。
不機嫌を模り、装い、当分唇は曲げられた侭。
己の家には真っ当な職業奴隷を購入する話なぞしつつ。王都へ戻る迄の一時を、店内で過ごす事となる。)
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からナインさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート 市場」にジンライさんが現れました。
■ジンライ > 天気の良い春の気候。昼を過ぎた頃。
奴隷市場都市の中心近くにある市場――と言っても商われているのは都市の名の通り奴隷――は、丁度幌の下に商品が並び終わって、店員の呼び声も喧しい、一番活気のある時間帯。
春先といえど軒先に並ぶ商品に変わりは無い。…恐らくいい意味で。
今日も今日とて人で溢れる(売り手も買い手も商品もヒトなのだから仕方がないが)その市場の、街との境目の辺りで、縁石に腰かけている東洋風の男がひとり。
「………」
くあっと一つ欠伸をすると、手持ち無沙汰に小石を拾って、器用に片手でお手玉を始めた。
(賭場が開くまで、大分余っちまったなァ…)
妓楼の主の使いで街に来たものの、思ったよりも早く要件が片付いてしまった。
夜に賭場が開くまで余った時間を潰そうと、観光気分で奴隷市場に来たものの…特に興味を惹かれることもなく、こうしてぼんやりと春の陽に日干しになっている。
■ジンライ > 何時もなら
暇になれば小刀で以て、木片で根付やら爪楊枝やらを作って時間を潰すのがこの男の常なのだが。
出先で適当な木片も見当たらず……
「……こんなこッたら、途中で適当な枝でも拾っつくンだったなァ…」
ぼやく頭上から不図、舞い降りる白い花弁。
お手玉の手が止まる。
「………」
男が見上げて目を細めたのは、風流を感じ取った訳ではなく。
(……悪くねえ木だな…)
■ジンライ > ゆら。
立ち上がる。
枝は、丁度間合いの中。
奴隷市場へ行き交う人々は、道端の男の動向など一顧だにしない。
それをちらりと確認してから。
「――よッ」
パチン。
躊躇いも溜めもなく、腰の獲物に伸びた男の腕が一瞬翻った。
次にはすとん、と落ちる子供の腕程の太さの枝を、器用に雪駄を履いた足の甲で受け止める。
枝先の白い花が舞い散った。
■ジンライ > へッ、と含み笑いを漏らす。
面つきがとても怖い。
「――よッし」
甲の上から枝を取り上げると、肩にひょいと担ぎ上げた。
上機嫌な面は、悪巧みをしようとして居る様にしか見えない。
■ジンライ > 市場をちらりと一瞥すると、白い花弁をまき散らしながら踵を返す。
鼻歌を歌いながら宿の方へと姿を消した。
ご案内:「奴隷市場都市バフート 市場」からジンライさんが去りました。