2018/10/08 のログ
■チルユキ > ともすれば息が触れ合いそうな間近さで、零された笑う気配に視線を上げる。
確かに人間の、気配。其れでも向き合った双眸は何処か合わせ鏡のようにも見えた。
暗い、何時か見た、きれいないし。或いは、甘いかおりの。
「紅玉………の、いろ、の、目。………、お前の名の響きは、何」
名乗られない事は、当たり前のように流して問いかける。
敢えて名乗らない男の機微を知ることも、読もうとすることも無く。
知りたければ聞き、興味が無ければ口を閉ざす。
生来の身分でも無く、捕まえられて間が無い事、等。後ろ暗い来し方は奴隷商の方も口を閉ざすだろう。―――もしも金を握らせれば囀るように答えるのだろうが。
持ち合わせた何かを確かめる掌には、多少の身動ぎをした程度でされるがままに。
捕まれた足から裾野が肌蹴て、其れを直す素振り、よりも。
「――――ァ、」
触れる前に遮られて、焦れたような声が唇から零れる。
触らせてくれない、ことへ。抗議しようと投げかけた視線が揺れる。
男は己を恐れる素振りが無いから、血を欲しがっているとは屹度思っていない、のに。
煽られて小さく咽喉が鳴る。注ぎ込まれる吐息に鼓膜を震わされて、のどの渇きが増す錯覚すら。
「………貴方、が。その、寛大な……飼い主になる、の……」
びり、と足首に電流が奔ったような感覚に囚われる。
脚に触れられるのは二度目なのに先程と明らかに色合いが変わる。
滑らかな太腿の、その柔らかな内側に。指が届くのを一瞬夢想して、渇きに熱が混じる
「………欲しいものをあげる。だから、……欲しいもの、ご褒美……聞いて………。」
振り解く膂力すら今は意識の彼方に置き去りに。
――――長らく店を開けていた奴隷商の足音も、やがて近くへと。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からアルクロゥさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からチルユキさんが去りました。