2018/10/05 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にニアさんが現れました。
ニア > 夜も冷える繁華街の片隅で営まれていた奴隷貸出という名の店の店頭。
鎖に繋がれ、あられもない格好をした龍人が見世物のようにそこに放置されていた。
首からは「1日1万ゴルドー」と書かれたプレートを下げており、
待ちゆく人々を見つめるその瞳には光彩はなく、
10年前と同じ、地獄のような日々に疲れ果て、彼女はぐったりと動くことを止めた。

そういえば、囚われてから一度もまともな食事を口にしていなかった気がする。
お腹も空いた。
体にも力は入らず、何もかも諦めてしまったかのように、ただ変わっていく街並みを眺めるのみ。

今宵も、貪欲な者達によってこの身体を弄ばれるのだろう。
どこか他人事のような考えが頭をよぎり、そのまま目を瞑る。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にジーヴァさんが現れました。
ジーヴァ > 夜がすっかり深くなり、衛兵たちがあくびをしながらも夜間の警備を怠ることはない。
それはつまり、この都市が生み出している富が莫大であることを示している。
人間金払いがよければ、きちんと働くというものだからだ。

「だがそれが、大きな隙になる……お勤めご苦労様ってな!」

今回彼に言い渡された任務はかく乱。
どういう理由かまでは分からないが、とにかくこの辺りを荒らし、奴隷たちを片っ端から解放しろとの指令だった。
というわけで二人組の衛兵たちが過ぎ去るのを待ち、彼は行動を開始する。
布切れをまとった女性がぐったりと倒れている店に近づき、店主に聞く。

「おっさん!そこの女買いたいんだけどよ。夜からでもいいのか?」

勘定をしようと店主が近づいて来れば、隠し持った錫杖から氷槍を放ち、即座に喉と胸を刺し貫くだろう。
そうして鍵を手に入れれば、後はこちらのものだ。

ニア > 意識が遠のき、眠りにも近い状態にあった彼女は状況を理解することもできぬまま、目を開けた。
たった今、目の前で店主が殺された。
その光景を突きつけられた彼女は力なく顔を上げる。

身長はさほど高くないが、声からして男。
一体何のつもりなのかはわからないが、それは一瞬にして絶望を砕くような音にも聞こえた。

「……ぁ…、ぅ……」

声を出そうにも口がうまく回らず、朦朧としていた意識は更に深く…
その体には今まで人間達につけられた痛々しい傷跡だけが残り、彼女の体を覆っていた布切れは今にも風で飛ばされてしまいそうだった。

ジーヴァ > どうやら護衛も寝ているらしい。
不用心なことだとは思うが、仕事熱心な衛兵の巡回が夜も続いていて、
しかも奴隷たちに反抗する気力はないとなれば、気も緩むだろう。
氷槍によって声を発することなく人生を終えた店主の服を剥ぎ、続いて店内に乗り込んで奴隷用の服を探す。
何着か見つけて戻り、何事かと周囲の人間が近づいてくるのを見れば。

「さて、ご来店のクソ野郎ども!
 一方的に嬲るのがそんなに好きなら味あわせてやるよ、飢餓の炎!」

その何人に向かって鞭のようにしなる炎を叩きつけ、それを焼き尽くすまで炎の勢いは止まらない。
注目を不運な男たちに集めているうちに、奴隷たちを縛り付ける鎖の根本にある錠前に鍵を突き刺し、ガチャリと捻って解除する。
首輪は外す暇がなかったが、魔法が使える者もそう多くはないだろう。奴隷のうち、何人かには紛れ込めるよう服を渡し、
特に傷跡が酷く、布切れを纏った女性に自らのローブを羽織らせ、さらに炎を放って混乱を煽る。
手を握って通りとは反対の方向に歩き出せば、後は入り組んだ路地の中だ。

「さて、お嬢さん。喋れるなら喋ってくれ。ダメなら頭を左右に振ってくれ。
 魔法が使えるか?」

ニア > どうやら、彼は自分たちを助けてくれたようだ。
もう1カ月近く、ここで過ごしているが…
こんなことをするもの好きは一人もいなかった。
だから、驚きの余りに声を出すこともできず、もはや自身の力で歩くことすら困難。
疲弊しきった身体は引きずられるかのように、彼へと付いていく。

繁華街では今も大騒ぎなのだろうが、その喧騒が聞こえなくなったころ、問われた言葉に彼女は首を振るしかなかった。
魔法は…魔力を封じる首輪が外れれば使うこともできるだろうが
どうやらこの首輪は特殊な素材で作られているようで、鍵がない限り外れることはない。
その鍵の在処も定かではないが、きっと兵士たちに囚われた時に首輪をつけられたのだから、王都の憲兵達が持っているのだろう。

とにかく、何か喋らなきゃ…
しかし、思ったように口が回らず、漏れるのは嗚咽の様な呼吸の音のみ。

ジーヴァ > 少女は首を左右に振り、疲れ切ったようにこちらへついてくる。
ジーヴァの見立てではおそらく魔力を封じているのだろう首輪の開錠もここでは難しく、破壊は少女ごと吹き飛ばしかねない。
チッと軽く舌を打ち、あらかじめ決めていた順路で路地を通る。

ゴミの山、浮浪者、片足をなくして寝転ぶ傷病兵……どれもこの街ではよく見かける光景が通り過ぎ、
やがてジーヴァのようにフードを被った男女が現れる。彼らとしばし話し合った後、ジーヴァは少女に事情を話した。

「俺はお嬢さん、あんたを助けに来たわけじゃない。
 あくまで俺たちの仕事の囮としてここまで連れてきた。
 だけどよ……一つ提案がある。その首輪を付けられたってことはあんたは魔力があって、魔術なり魔法が使えるな?
 そうなら頭を上下に振ってくれ」

ニア > 彼に一体何の目的があるのか、どうして自分一人がここまで連れてこられたのか、
全く理解することはできず、否
理解するには少々の療養が必要なくらい、身体は悲鳴を上げており
空腹と溜まった疲労のせいで目眩が起こる。

この1カ月で見慣れた光景をただただ通り過ぎ、これまた顔も知らぬ男女と会話を交わす彼をじっと見つめていた。

どうやら彼の目的は私情ではなく仕事。
そのわけと理由を聞けば納得がいくが、一体何の仕事なのかという疑問も浮かぶ。
続いて問いかけられる質問に彼女は首を上下に振った。