2018/09/25 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」に光流さんが現れました。
光流 > 酒場通りや娼館近辺とは違った種の賑わいを見せる、奴隷市場。
如何にも場慣れしていないそぶりの鬼は、奴隷達の顔を食い入るように見て、
奴隷商の男に話し掛け、落胆した顔を見せ、次の売り場へ向かう。
それを先程から繰り返していた。

「……いねぇか」

感じる疲労に立ち止まり、重い息を吐く。
里の少女が外に出て、帰らなくなり数日。
彼女の母親から捜索を頼まれての遠出であった。
最も手っ取り早く大勢の奴隷を見られるだろうと来たのだが、
少女が奴隷商に捕まったという証拠は無く、例え捕まっていたとしても市場で売買されているとも限らない。
既に今頃、どこぞの有産階級で飼われている可能性だって有る。
実際、捜すことは星を掴むような話なのだろう。
だが、母親の気持ちを思えば何もせずにはいられない。

「――――長老がなけなしの金も預けてくれたしなぁ」

サラシで潰している胸元の内側に隠す、金貨。
もし少女がここにいれば、購入する資金が必要だろうと。
隠れ生きるミレーにとっては貴重な額だ。

再び、足を進める。
商品として並ぶミレー族の顔を1人1人見ながら。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にルヴィエラさんが現れました。
ルヴィエラ > (この街から活気が失われるとしたら、其れはきっと原因は何にせよ
この国家と大陸の構造が大きく変わる時以外に無いだろう。
様々な奴隷が、様々な値段で取引される中、全身に灰色のローブを纏い
其の姿を隠しながらに、通りを歩く。

明確な目的が在る訳では無い、其の感覚は宝探しにも近い物が在る。
奴隷として売られている其の中には、時折己の目を引く娘が混じって居たりもするのだ。)

――――……だが、随分と様変わりしたね。

(其れなりに長く、この街を見て来たが。
此処最近、奴隷として売られ、或いは囚われて来る娘達の傾向が変わった様に思う。
との時流次第で、例えば没落貴族の娘で在ったり、王族の娘で在ったりと
所謂肩書や、箔と言う物が重視されたり、或いは戦争の機運が高まっている時には
戦闘や護衛が出来る腕の在る者が、重宝されたりだのと言う事が在る。
――ふと、視線を向けた先には、まだ恐らくは、此処に連れて来られて日が浅いのだろう
ミレー族と思しき見目の娘が、檻の中へと囚われて居た。
其の値付けの理由や根拠に関しては判らないが、其の見目にしては矢鱈と高額だと
僅かばかりの好奇心を惹かれて、少しばかり店の前で、其の娘の説明が商人の口から響くのを暫し待つ。

――程無くして、始まる売り文句。 娘の特徴などを、事細かに、陽気な声に乗せて叫ぶ声が
或いは、其の娘を探す鬼の元にも、届くやも知れず)。

光流 > 視覚と聴覚から入る膨大な情報の中、鬼の視線は1人の客と奴隷商に向く。
まるで自分が捕まえたのだとばかりに、高らかに商品を紹介する男の口から
発せられる文句は、正確には他のミレー族にも当てはまる特徴が多い。
確証は無いが、万が一にも先に購入されては敵わない。
男装の鬼は、客の背後へと向かい歩いて行った。
傍目には紹介されている奴隷に、同じく興味をもったといった風体だろう。

「……」

買われることを恐れたのか、ミレー族と思われる少女は奥へ奥へ後ずさり、影に隠れて姿が見えない。
商人が相手をしている者は顔馴染みなのか、それとも身につける物や所作を見て
上客と判断したのか、背後で興味を示す鬼に構うことも無く、商売に勤しんでいる。

「オレにも見せてくれ。生娘なんだろ」

痺れを切らし、口を挟む。
どこの馬の骨とも知れない東方の姿をした男に対し、商人は一瞬怪しむような表情を見せた。

ルヴィエラ > (――風貌だけで言うならば、ローブで全身を覆い、フードを被った己の姿は
其の見目からは、御世辞にも上客と判断出来そうな物では無いだろう。
けれど、背後にもう一人の客が近付いてくる其の最中には
証人と己が、何か二言三言会話している様子が見て取れる筈だ)

――――……随分と値が高いが、普通の娘では無い謂れでも?

(最後に問いかけた其の声は、けれど、商人が説明しようと口を開きかけた其の刹那
背後から掛けられた声によって中断される。
僅か、肩越しに後ろを振り向いては、其処に立つ
この大陸の者では無い異装を纏う者を、其の胸元からゆっくりと見上げて。)

―――……失礼、客人が増えた様だね。
君が良ければ、私にも一度見せて貰えるかな? ……何、難癖を付ける訳では無い。

(安心したまえよ、と一言声を掛ければ、商人は己ともう一人とを交互に見た後
仕方ないな、とばかりに檻へと手を掛け、中に囚われた娘を引っ張り出そうとするのだろう。
背後の客人が見やすい様にと、少しばかり横へと移動する。
ミレー族の扱いが、必ずしもこの街で良いとは言えない故に
首輪にかけられた鎖を引く形で、急き立てられる様にして娘が引き摺り出されれば
漸く、隠れて居た其の顔を確かめる事が出来るのだろう、か。)

――――……成程、高い理由か。

(ひとつ、何か得心したように呟く。
果たして、引き摺り出された娘が、もう一人の客人の探し人かは、判らぬが。
少なくとも値が張る理由については、納得した様子を見せた。
――良く似ているのだ。 ミレー族と人間と言う種族の違いは在れど
大陸では一時、名が知れ渡った在る歌姫の顔立ちに、良く)。

光流 > 捜している少女でなければいい。
半ば倒れ込むように引き摺り出される細身の少女。

「…………チッ」

反吐が出るとでも言いたげに舌打ちする。
この通りを歩くことで無数の奴隷を見てはきたが、知った顔の少女が首輪を嵌められ、
まるでペットか何かの如く扱われる様には、さすがに本音が漏れる。

客が得心する一方、鬼には何故高い値をつけられているのか理解できなかった。
里から預かった金貨では間に合わない額だ。どうするべきか。

元々取引めいたことは苦手な直情型の鬼は、とりあえずことの成り行きを窺う。
怯えたミレー族の少女がこちらを見て――驚くように目を見開いた。
垣間見える救出への希望。だが、知人だと知られれば色々と厄介だ。
視線を逸らし、素知らぬふりを通す。

ルヴィエラ > ―――確かに、好きな者には需要が在るのだろうねぇ。

(――自分は飽く迄知って居るだけだが、其れを求める者は確かに居るだろう。
収集品、或いは傍に置きお飾りとして飼う、そんな趣味の富裕層ならばごまんといる。
疑問の一つが解決したことで、ふむ、と其れまでの好奇心が薄れては
そろそろ立ち去ろうかと、商人へ声を掛けようとしたのだ、が。

――聞こえた、舌打ちの音。 僅か、音の方へと傾けた視線の先
見降ろした異人の、何処か険しい表情を確かめたなら。
立ち去るのではなく、今一度、囚われたミレーの娘へと視線を向けて。)

――――……済まないが、少し待って居て貰えないかな?
何、少々相談事が在ってね、出来ればその間、其の娘を取り置いて貰いたいのだが。

(良いかな? と、不意に商人へと一言告げては、くるりと振り返る
店の建物、其の隙間に在る暗がりの方を一度見てから、隣の客人、其の傍を通り過ぎる刹那。
其の耳元にのみ聞こえる様に、声を響かせ、付いて来るように招くのだ。

――――取引をしないか、と)。

光流 > 他人事のように呟き、興味を失っていく客の様子に、鬼は内心安堵する。
何故ここまで値段が張っているかは知らないが、買う者がいなければ値段交渉ができる。
少女も同じ空気を感じたのか、表情を緩める。

だが立ち去ると予想した客に声を掛けられ、鬼の安堵は一転し、警戒した。
終始鬼は無言だったが、取引に不向きな性格は表情にも表れる。
彼らの反応に逐一戸惑う少女を安心させるよう、視線を送り、未だ何者なのかわからない客の背についていく。

市場独特の賑やかさから一線を画すような隙間へと入り、鬼は背を建物に預けた。

「何だ、取引ってのは」

用件が有るなら手っ取り早く言え。
そう言いたげな態度は、鬼が短絡的な性分だということを示している。