2018/01/02 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にリュシーさんが現れました。
リュシー > (――――とりあえず、馬車に乗って出かける、というところで、色々察するべきだった。

昔馴染みの数人に気晴らしと誘われ、ついつい頷いてしまったけれど、
馬車にガタゴト揺られて、辿り着いた先がここである。
途中で降りてしまえば良かったか、とも思ったけれど、何もかも今更であろう。

昼でもほの暗い空気の澱むような通りの左右に、大小さまざまな店舗が並ぶ界隈。
檻に入れられ、あるいは店先に引き出されて見世物扱いされている商品は、
当然のごとく、奴隷、である。
かつての遊び友達だった連中は皆、あちこちの店を冷やかしたり、
すでに本気の売買交渉に入っていたりする者も居るようだが――――
己はと言えば、先刻、街に入ったところで盛大にごねて、
口封じとばかり買い与えられた温かいワインのゴブレットを両手で持ち、
ちびちびと口をつけながら、そんな彼らを他人の顔で眺めていた。

さすがにひとりで、歩いて帰れる距離ではないし、彼らの買い物が済んだあたりで、
馬車に乗せて貰わなければならないだろう、と、いささか憂鬱な溜め息を洩らし)

………相変わらず、変な趣味してるよな、あいつらも。

(折りしも、古馴染みのうちの一人が店先の奴隷にちょっかいを出し、
たいそうマニアックな玩具などを提案していたりするところ。
奴隷の顔は俯いていて見えないけれど、近づいてじっくり鑑賞する気には、
もちろん、なれる道理がなかった。)

リュシー > (一緒に憐れな奴隷を玩ぶ気にはもうなれないが、だからといって。
青臭い正義感を発揮して、古馴染みの男を諫めようとか、そこまでは考えない。
――――結局のところ、みずからの意志で止めるよりないのだ、とは、
日和見的な己の判断を、正当化するための詭弁かも知れないけれど。)

ねぇ、――― おーい。
ぼく、あっちに行ってるよ?

(いよいよ調教に熱の入りはじめた男の背中へ、いちおうはそう声をかけたが、
果たして、彼の耳に届いていたかどうか。

ともあれ、己は空になったゴブレットをもとの店に返すべく、
先刻は数人の有閑貴族に囲まれて辿ってきた通りを、ひとり、逆に辿りはじめる。
片手にゆらゆらとゴブレットを揺らし、ほんのり酒精の影響を滲ませた頬を、
凍てつく夜風になぶらせながら。
ひとの流れに逆らう方向であるせいか、歩みは遅々たるものだったが)

リュシー > (ワインの店にゴブレットを返したところで、ふと、小さなあくびがこぼれ落ちる。

酒精のせいか、それとも時間帯のせいか。
いずれにしても、この身体はとことん、夜更かしには向かないようだと思う。

向かいの店でみっともなく値引き交渉をしていた古馴染みの背中へ、
思いきり体当たりしてしがみつき、なかば強引に帰ろうと迫る。
柔らかな猫耳と尻尾を揺らす少女を前に、なお、ぐずぐずしている彼を、
華奢な踵の靴で蹴り飛ばすように、馬車を止めていた場所へ向かわせようと――――

小娘と成人男性の痴話喧嘩ととられ、衆目を集めるまでに、
さして時間はかからなかった、という。)

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からリュシーさんが去りました。